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その他
イマジナリーフレンド
しおりを挟む小さな頃から友達がいた。
物心つく頃にはいつも側にいて、一緒に遊んでいた。
「お名前教えて」と私が聞くと「まだつけて貰ってない」とその子は言った。
「可哀想だから、じゃあ、私がつけてあげるね」
私は一生懸命考えた。聡太と名付けると少年は喜んだ。
でも、聡太は他の人には見えない友達。私にしかみえてないみたいだった。そのことを母に相談すると。
「それはイマジナリーフレンドって言って、空想のお友達なのよ」と母が教えてくれた。
大人になっても友達は消えなかった。
他の人には見えない私だけの友達。学校に行くときも遊びに行くときもいつも一緒。
彼はテストの時に私の知らない回答を教えてくれたりした。
好きな人が出来た。
その頃から聡太とは反りが合わなくなってきた。
「そんな男とは別れた方がいい」と彼は言った。
彼は嫉妬しているのだ。
私達は口喧嘩をするようになった。周りからは私が急に怒り出したようにみえたらしいが、私は感情が抑えられなかった。
妊娠した。お腹には彼氏の子供がいる。
そのことを彼氏に告げに家に向かう。雨が降り始めた。
合鍵で玄関の扉をあけると傘をたたんだ。
玄関に赤い靴がある。女性の靴だ…。そんなわけがない…。
確かめようと彼の部屋に入った。
彼のベッドの中には女性がいて、2人は裸で抱き合っていた。
世界が歪んだ。
涙で何もかもが滲んでみえる。
持っていた鞄を投げつけると表に駆け出した。鬱憤を晴らすように走って走った。
雨が降るしきる中立ち尽くす。涙が止まらなかった。
捨てられた。私はもてあそばれていたのだ。
聡太は私の側にたっていた。手を伸ばし私を慰めようと声をかけようとする。
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」
私は彼を拒絶する。もう彼の言葉は私の耳には届かない。
ドンッと背中を突き飛ばされる。その衝撃で勢いよく前に転がる。痛みを感じる間もなく、猛スピードの車が通りすぎる。「ガッシャーン!!」
車はガードレールに勢いよくぶつかる。車は大破し、ガソリンが溢れる。溢れたガソリンに引火した車は爆発した!
「ボーン!!」
押されなければ車にひかれて死んでいた。でも何に突き飛ばされたのだろう。私にはもう聡太が見えなくなっていた。
私は燃え盛る炎をただ呆然と見つめた。
「オギャァ」と赤ん坊が生まれた。女の子だ
その子は何処となく彼に似ていた。この子は私一人で育てようと心に決めた。
それから数年たち、娘も大きくなる。幼稚園に通うようになった。
娘にもイマジナリーフレンドが出来たらしい。
家に帰ると娘は見えない友達と積み木をして遊んでいた。
「ねえ、お名前なんて言うの?」
「聡太くん?いい名前ね」と娘は1人で話している。
え…。
その名前を聞いて洗い物をする手が止まる。
彼は今もそこにいるのだろうか?私にはもう見えない。
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