248 / 265
交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第242話 お皿洗いを任せちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「「ごちそうさまでした!」」
アリアちゃんとイリアちゃんにわたし自慢のお弁当を試食してもらってから十分ほどが過ぎたところで、二人が同時に手を合わせながら言った。
対面に座る二人の前には、綺麗に完食された空っぽのお弁当箱が置かれていた。
わたしは見習い姉妹たちに、にこりと微笑む。
「お粗末様でした! お弁当の味はどうだったかな?」
「とっても美味しかったです! 見たことない料理も多くて、新鮮でした!」
「わ、私もすごく美味しかったです! 色々と勉強になることも多くて、とっても学びになる料理の数々でした! ただ、梅干しはちょっとビックリしちゃいましたけど……!」
アリアちゃんとイリアちゃんは口々にお弁当の感想を言ってくれる。
イリアちゃんの方はまだ梅干しショックから抜け出せていないようだけど、素直な感想が聞けて嬉しいよ。
「そう言えば、アリアちゃんの方は梅干しは大丈夫だった?」
「梅干し? ああ、あの酸っぱくてしょっぱい果実ですか? 最初はちょっとビックリしましたけど、慣れると結構美味しいんじゃないかな? って思います!」
「そ、そうなんだ。アリアちゃんは強い女の子なんだね」
「さ、さすがお姉ちゃんだよ!」
「えへへ、そうかなぁ。全然そんな大したことじゃないですよ」
否定の言葉を口にしながらも、アリアちゃんは照れ臭そうにくねくねと腰を動かした。
隠しきれない嬉しさが伝わってくるね。
「それじゃ、一旦お弁当箱とスプーンとかは回収しちゃうね」
そう言ってアリアちゃんとイリアちゃんのお弁当箱とスプーン、フォークを回収しようとすると、二人が同時に待ったをかけた。
「あっ、待ってください! コロネさんには料理を提供していただいたので、せめてお弁当箱くらいは私たちに洗わせてください!」
「そ、そうです! 貴重なお店の料理をいただいたのにも関わらず、そのうえ自分達が食べた食器まで任せるなんて料理人の端くれとしてできません!」
「えっ、そ、そう? うーん、まあそこまで言うなら、洗い物だけお願いしちゃおうかな?」
「はい! 任せてください!」
「こ、こう言うのも何ですけど、お皿洗いは日頃からずっとしてきたお仕事なので、とっても得意なんです!」
アリアちゃんとイリアちゃんは、ぐっと拳を握りながらやる気を見せてくれる。
そう言えば、二人は料理人の見習いなんだったね。
普段はラグリージュにある別のお店で働いているみたいだけど、まだ経験が足りないからかあまり包丁を握らせては貰えないとか言ってたっけ。
その代わりとして、お皿洗いや掃除、ウエイトレス業務などを中心に働いているらしく、お店の雑事の処理はかなり手慣れているようだ。
二人を雇ったのは一応料理を作るサポートをしてもらおうと思ったからだけど、お皿洗いとか配膳とかがスマートにできるならかなりありがたいね。
「それじゃあ、一旦厨房に案内するよ。そこに大きなシンクがあるから、そこでお皿洗いをお願いしようかな」
「はい! わかりました!」
「つ、ついに厨房に向かうんですね。ちょっと緊張してきました」
わたしは席から立ち上がり、二人を引き連れて厨房へと向かっていく。
すると、アリアちゃんとイリアちゃんだけでなくナターリャちゃんやエミリーなんかも一緒についてきた。
窮屈というほどでもないけど、決してめちゃくちゃ広いってわけでもない店内に、ぞろぞろと数人の女子と従魔を率いて歩いていく。
よく考えたら異様な光景に苦笑しながら、わたしは努めて気にせず歩みを進める。
あ、そうだ。
せっかく厨房に入るんだし、お皿洗いのついでにアリアちゃんとイリアちゃんに軽く料理の仕方とか教えてみてもいいかもしれないね。
もしトントン拍子に進んだら、今日早速お弁当一つを完成させられるところまで教えられたら最高だ。
165
お気に入りに追加
1,198
あなたにおすすめの小説

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…


聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる