ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第236話  一発で分からせちゃう、ぽっちゃり

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 やや錯乱気味のアリアちゃんとイリアちゃんは姉妹でハイタッチしながら喜び勇んでいる。
 わたしはテーブルを挟んで正面から二人のハイテンションな様子を眺めていると、隣に座るナターリャちゃんも嬉しそうに頬を緩ませた。

「アリアちゃんもイリアちゃんも、二人ともとっても嬉しそうだね! さすがコロネお姉ちゃん!」
「いやぁ、別にわたしは何かしたつもりはないんだけどね。むしろ、何も知らなさすぎて大丈夫かなって不安になってきてるくらいだし」
「そんなことはありませんよ! コロネさんは私たち姉妹の命の恩人です!!」
「お、お姉ちゃん。命の恩人はちょっと意味が違うんじゃないかな……?」

 喜色満面で身を乗り出してくるアリアちゃんに対し、一足早く冷静さを取り戻しつつある妹のイリアちゃんがツッコミを入れる。
 わたしは苦笑を浮かべつつ、真摯に二人に答えた。

「だけど、二人とも喜んでくれたなら良かったよ。わたしも従業員に指名した甲斐があるってもんだね」
「あ、あの、改めてなんですけど、私たちの合否は……」
「え? そんなの最初から合格に決まってるじゃん! 短い間になりそうだけど、これからよろしくね!」
「~~~~っっ!! はいっ! よろしくお願いします!!」
「よ、よよ、よろしくお願い、しますっ!」

 姉妹は腰を九十度に曲げる勢いで頭を下げた。
 かなり熱が入っているみたいで、アリアちゃんはごうごうと激しい赤い炎が、イリアちゃんは静かながらも芯のある青い炎がそれぞれの瞳に投影されている。
 もはやそのオーラは料理人というよりも、格闘漫画なんかの闘魂と呼ぶに相応しい熱い男気を感じられるね。
 年頃の女の子なのにそこまで熱意をもって真剣に何かに取り組めるっていうのはすごいなと思う。
 わたしも料理は結構好きだったけど、アリアちゃんとイリアちゃんみたいに人生かけて本気になるほどじゃなかったし、まして料理人の道に進もうなんて微塵も考えたことがなかった。
 あくまでもわたしは自分が食べたいものを作れるようにするために料理スキルを身につけたからね。
 まあ、その料理スキルを使って暇な時は両親のお弁当屋さんの手伝いなんかもしてたけど、それはちょっとした気分転換というか、おまけに過ぎない。

 料理に打ち込む二人を見ていると、自然と昔のことを思い出してしまうね。
 わたしは見習い料理人の姉妹を少し羨ましく思いながら、気を取り直して話を進める。

「それじゃあ早速なんだけど、厨房に入って料理の仕込みでも手伝ってもらおうかと思うんだけど、大丈夫そう? 準備とかあるなら待つけど」
「いえ! 問題ないです!」
「い、いつでもお手伝い、します!」

 二人同時に返事をし、力強くぐっと拳を握った。
 その回答に、わたしは頼もしさを覚える。

「オッケー! あ、一応聞いておきたいんだけど、二人とも基本的な料理スキルは習得してる感じかな? 例えば食材の切り方とか何となく料理を作る流れとか。もし分からなかったらそこから教えていこうかと思うんだけど」
「大丈夫です! ……って言っても私たちはどっちも見習いなんで、プロのシェフレベルには程遠いんですけど、さすがにずぶの素人っていうわけではありません!」
「お、お家でも家族へのご飯は私たちが作ったりもするので、最低限の料理スキルは身についている、と思います……!」
「そっかそっか! それなら大丈夫そうだね!」

 家で家族に料理を振る舞えるくらいなら、十分に戦力になるだろう。
 かくいうわたしも、感覚としてはそれくらいのレベルだしね。
 基礎的な部分から教育する必要はなさそうだ。
 ていうか、多分この二人の方がわたしより全般的な料理スキルは上のような気もするけど……逆にわたしが教えを乞う立場になったりしないだろうか。
 そのことをちょっぴり不安に思っていると、今度はアリアちゃんが手を上げた。

「あの、逆に私たちからの質問なんですけど、コロネさんのお店は何系の料理をメインでお出しになられるんでしょうか?」
「ん? あー、そういうところもドルートさんは伝えてなかったんだっけ?」
「は、はい。ただ、ドルート様はとても美味しい『オベントー』というものを作られている、とだけ……」

 ドルートさんは必要最低限のことしか伝えずに二人をここのお店まで派遣させたようだからね。
 具体的にわたしが何のお店を営んでいるのかもよく分かっていないようだ。
 ただ、『オベントー』という単語だけ脳内にある、という感じかな。

 わたしはお弁当がどんなものか説明しようとしたところで――――ピカーンと閃きが起こった。
 お弁当がどんなものなのか口頭で説明することもできるけど、百聞は一見に如かずという言葉もあるくらいだ。
 ここは一発で分かるよう、実際にお弁当を見せておいた方がいいだろう。
 いや、それこそ二人に試食がてら味見してもらってもいいかもしれない!
 それならアリアちゃんもイリアちゃんもこれから自分達が作る料理がどんなものなのか自らの舌で以て理解することができるから、一石二鳥だ!

「それじゃあ、まずは二人にわたしの商品を食べて貰おうか! とってもとっても美味しい、『お弁当』という料理を!」

 わたしは意気揚々とアイテムボックスを発動させ、中から木でできた二つのお弁当箱をテーブルの真ん中に置いた。



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