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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第234話  面接を始めちゃう、ぽっちゃり

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 すでにお弁当屋さんに到着していて、わたしが来るまで店先の掃除をしてくれていたアリアちゃんとイリアちゃんを店内へ案内した。
 鍵を開けて木製の扉を開けると、昨日と変わらない状態の店内の内装が目に入る。
 特に散らかっていることもなく片付いている……というより、単純に物が少ないからといった方が正しそうだ。
 一応、十人から十五人くらいなら店内でお客さんが食事を行えそうなくらいの広さはある。
 カウンターや、いくつかテーブル席もあるしね。
 ただ、まだこの店舗を借りたのが昨日の今日ということもあって、飾りつけなどはほとんどしていない木造建築のため、実に質素な雰囲気が漂う店内となっていた。
 まあお弁当は和の料理でもあるし、これくらい古風な感じでもいいかもしれないけどね。
 決して古くさいわけじゃないよ?

「わぁ~……ここが、コロネさんのお店なんですね」
「す、すごいです」

 お店の中に入ってきて早々、アリアちゃんとイリアちゃんの両名はキョロキョロと辺りを見回しながら入ってきた。
 初めての店内に興味津々みたいだ。
 わたしはとりあえず話でも聞こうかと思って、お客さん用のテーブル席へ二人を案内する。

「それじゃあまずは軽くお話でもしようか。適当に座ってくれていいよ」
「ありがとうございます!」
「あ、ああ、ありがとうございます……!」

 アリアちゃんは堂々と元気よくわたしの正面の椅子に座り、イリアちゃんは少しおどおどしながらお姉ちゃんの隣の椅子に座った。
 これで、テーブルを挟んでわたしと見習い姉妹が対面で向かい合う形となる。

「それなら、ナターリャはコロネお姉ちゃんの隣にさる~!」
「あ、ずるいでナターリャはん! それならわいは反対側のご主人の隣や!」
「ぷるるーん!」
「あはは……皆様とてもお元気ですね。私はメイドですので、コロネ様の後ろで控えております」
「ほ、本当にみんな自由だね……。まあ、それがいいんだけどさ。エミリーも気にせず楽にしてくれていいんだけど……その様子だとそこのポジションの方がいいのかな?」
「はい。メイドはいついかなる時も主人の元に控えているものですので。私はここで立っている方が落ち着きます」

 エミリーは頭を下げてわたしの斜め後ろを陣取った。
 これによって、対面していたアリアちゃんイリアちゃんの二人に加えて、わたしの両隣に身を寄せてくるナターリャちゃんと、従魔同士じゃれあっているサラとわいちゃん、そして後ろにメイド服のエミリーという構図になる。
 もう明らかに面接するって感じじゃないよね、これ。
 まあ、わたしとしてもそんなに堅苦しい面接をするつもりではなかったんだけどさ。

 わたしは気を取り直して、こほんと咳払いをした。

「ちょっと予想外に賑やかな面子で開始することになっちゃってごめんね。それじゃあ早速だけど面接……って言ってもほんとに軽ーくお話するくらいの感覚で話してくれたら嬉しいな」
「分かりました!」
「は、はい! よろしくお願いします……!」

 二人の対照的な返事を受けて、わたしはまず一番気になっていたことを切り出した。

「今日はわざわざわたしのお店まで来てくれて、その上お掃除までしてくれてありがとう! それにしても、二人はどうしてわたしの所で働こうと思ってくれたの?」

 わたしがアリアちゃんとイリアちゃんを雇い入れたい料理人として指名したのはつい昨日の出来事。
 しかも夜だ。
 今の時間になってようやく半日が過ぎたかというくらいである。
 それだけの短時間ですでにわたしよりも早くお店に到着していたということは、二人ともドルートさんからこの募集を聞かされた瞬間に即答していたとしか思えない。
 そんなに考える時間はなかっただろうからね。

 わたしのシンプルな疑問に対し、アリアちゃんとイリアちゃんは同時に身を乗り出した。

「そんなの当たり前ですよ! 今朝ドルート様からこのお話を伺った瞬間、一も二もなく即答しました!」
「わ、私たちのような見習いの料理人に他店舗への派遣の指名が入ることなんてほとんどあり得ないことですから……!」
「今まで私たちは一つの店舗でしか働いていなかったので、そこのお店のルールしか知りませんでした。だけど、今回こちらのコロネさんのお店で働かせてもらえるなら、色々な経験ができそうです! ウエイトレスとか、お皿洗いとかレジ会計とか、雑用は慣れてるので任せてください!」
「お、お掃除もたくさんしてきたので得意、です!」

 ……ん?
 なんか二人の言葉に違和感を覚える。
 今の口振りだと、まるでわたしのお店で雑用仕事しかしないみたいじゃない?

 わたしは念のため、二人にしてもらう業務を軽く説明しておく。

「えっと、そういう雑用をしてくれるのも嬉しいんだけど、今回は厨房に入って料理を手伝ってもらおうかと思ってたんだ。そういうのっていけそうかな?」

 わたしの言葉に、アリアちゃんとイリアちゃんは不自然に固まる。
 あれ、わたし変なこと言ったかな?
 少し不安になっていると、数秒ほど硬直していた姉妹が同時に立ち上がった。

「「も、もしかして私たちにお料理をさせていただけるんですかっ!!!?」」

 姉妹らしい息ぴったりの叫びが、木造の店舗を震撼させたのだった。





______________________________________________________________________________
いつも本作をお楽しみいただきありがとうございます!!

本日まで毎日更新を続けていた本作ですが、ストックが切れてきてしまったので毎日更新は明日・明後日の投稿分で一旦終了となります…!
明後日以降の更新につきましては、毎週日曜日の20:10に新規エピソードを投稿させていただくという形の、週一更新に変更させていただきます!

これまで毎日本作をお読みいただいていた読者様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご承知おきいただけますと幸いです!

どうぞ今後もぽっちゃり女子 コロネちゃんの冒険をお楽しみいただければ嬉しいです!!



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