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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第232話  ご対面しちゃう、ぽっちゃり

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 エミリーに起こされ、急いで支度を整えてわたしのお弁当屋さんの店舗へと向かった。
 わたしの肩にはぷるぷると揺れるサラが乗っている。
 走っているわけじゃないけど、エミリーと共にちょっと早足で移動しているくらいだ。
 そもそも今はもうお昼前くらいの時間になっている。
 王国の貿易窓口として機能しているラグリージュは大勢の人が往来しており、昼前となれば人通りもかなり多い。
 さすがにそんなところを大っぴらにダッシュするわけにもいかないからね。

 わたしは隣を歩くエミリーに、ふと疑問に思ったことを尋ねてみる。

「ねぇ、エミリー。ナターリャちゃんたちはどこに行ったの?」
「ナターリャ様とわいちゃん様は一足早くお店の方へ向かわれました。何でも、新しくやって来る見習いの方がどういう人なのか気になるから、ということらしいです」
「あ、そうなんだ。ナターリャちゃんはアクティブで好奇心旺盛だなぁ」
「コロネ様がもう少し早く起きてくださっていたら皆で一緒に向かうことができたんですけどねっ! それ以前に、午前中にいらっしゃったドルート様への対応も私一人で行うこともなかったんですよっ!」
「あはは、それはごめんって。いやー、昨日は色んなことがあって予想外の事態になっちゃったから、思ったより疲れが溜まっていたのかもしれないね」
「まあ、疲れをしっかりと取られたのなら良かったですけど」

 エミリーはほっぺを膨らませて可愛らしく怒りながらも、最後は許してくれた。
 優しいエミリーに感謝しつつ、わたしはお店への道のりを進んでいく。
 そう言えば海豊祭の開催が明後日に控えているからか、ラグリージュの街も全体的に活気づいているような気がするね。
 至るところに開いている出店なんかも大勢のお客さんが集っていて盛況そうだ。
 わたしのお弁当屋さんもあれくらい多くのお客さんが来てくれるのか……今日は気合いを入れて仕込みを頑張らないとね!

「そう言えば、今朝ドルートさんが来たんだよね? たしかアリアちゃんとイリアちゃんがわたしのスカウトを受けいてれくれるっていうのを伝えてくれたんだっけ」
「はい、そのように伺っております」
「その時に二人の情報とか何か言ってた?」
「えっと、アリア様とイリア様のことでしょうか? 今朝私がドルート様からコロネ様への伝言を受け取った際は、特にこれといったことはお聞きしませんでした。ただ、お二人がコロネ様の申し出を受けた、とだけ」
「そっかぁ。もしかしたら何か聞いてるかと思ったんだけど、どんな子たちなのかは会ってのお楽しみかな」

 とはいえ、大まかな情報は昨日のリストで確認しているんだけどね。
 証明写真みたいな感じだったけど、一応二人の可愛らしい顔も知ってるし。
 だけど、実際どんな人なのかはやっぱり直接会ってみないとわからないからね。
 それに今回はわたしが雇用主という立場で二人と会うことになるから、そういう意味ではちょっぴり緊張するよ。

「あ、コロネ様! あそこの角を曲がれば昨日の店舗に着きますよ!」

 エミリーが前を指差して教えてくれた。
 おや、いつの間にかかなり目的地まで近づいていたらしい。
 エミリーが指差す角まで約十メートルほど。
 うう、あそこを曲がればすぐにお弁当屋さんが見えてくる。
 ついにアリアちゃんとイリアちゃんの二人とご対面することになるのか。

 意を決して、角を右に曲がった。
 色々な装いの人の往来の向こうに、わたしのお弁当屋さんが見える。
 ドキドキしながらそこに向かっていくと、何やら店前で動いている人たちがいた。
 それは、赤色と青色の髪をした見慣れない……いや、昨日の写真がフラッシュバックする二人の女の子だった。
 その内の一人、青髪の子が歩いてくるわたしの存在に気付いた。

「っ! お、お姉ちゃん! あ、あの人って――」
「どうしたのイリア……って、ま、まさかあの人は――!」

 二人の視線を一気に浴びるわたしは、ぎこちない笑みを浮かべながら手を振った。

「あー、えっと、こんにちは。わたしはコロネっていうんだけど、もしかしてあなたたちは……」

 わたしが話しかけると、二人はビシッと姿勢を正した。

「今回は私たちをご指名いただきありがとうございます! 私は姉のアリアです!」
「あ、あの、私は妹のイリア、です……!」

 自己紹介をして、二人は同時に詰め寄ってくる。

「「本日は何卒よろしくお願いいたします!!」」

 さすが双子の姉妹というだけあって、息ぴったりの動作で深々と頭を下げた。


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