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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第231話 起こされちゃう、ぽっちゃり
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「……ぇ……さま」
心地よいふかふかの感触に包まれながら、不意にわたしの体が揺れた。
ううん……なんだろう。
せっかく気持ち良い感覚に包まれているんだからそれを邪魔しないでよ。
「おき……ぁい、コ……ぇ様……」
さらにわたしの体がゆさゆさと揺らされる。
度重なる外部からの刺激によって、朧気だったわたしの意識が少しずつ明確に輪郭を帯び始めた。
停止していた脳が活動を開始し、奥深くに潜っていた意識が急速に引っ張りあげられる。
「――起きてください、コロネ様!」
「――はっ!」
一際大きな衝撃を食らい、わたしはパチッと目を覚ました。
そしてすぐにガバッと体を起こす。
わたしの下半身には毛布がかけられている。
お尻から伝わるふかふかの感触はベッドだ。
横の窓から暖かい陽射しが顔を照らしてきて眩しい。
「……んん、もう朝?」
「おはようございます。ようやく起きられましたか、コロネ様」
「んっと……エミリー?」
「はい! コロネ様方に仕える従順メイド、エミリーです!」
わたしのベッドの横に立つエミリーは、メイド服に身を包みえっへんと胸を反らした。
それに呼応するように、たわわな胸が上下に揺れる。
その様子を目を覚ましたばかりのボケた頭で認識しながら、いまいち状況が掴めないわたしは困惑した。
「えーと、どうしてエミリーがここにいるの? ここってわたしの部屋だよね?」
ここはラグリージュでも有数の高級ホテル、その最上階。
いわゆるスイートルームというやつだ。
そのため室内の面積もあり得ないほど広く、部屋数もわたしたちがそれぞれ一部屋ずつ自室として使っても十分にゆとりがあるレベルである。
さすがこの部屋を取ってくれたドルートさんだなと思いつつ、それゆえにわたしは一人でベッドに潜っていたはずなんだけど、目を覚ませば隣に立っているのはエミリー。
それにさっきから何だか外部から体を揺らされていたような……わたしの意識の覚醒を促されていたような感覚がある。
これって絶対エミリーがわたしを無理やり起こしたよね?
一体どうしてそんなことを……。
今日はあんまり早起きするつもりはなかったんだけど。
わたしは寝ぼけ眼をこすりながら脳内でぐちっていると、エミリーがぼふっとベッドに両手をついてわたしに顔を接近させてきた。
「どうしたもこうしたもありませんよ! コロネ様に至急、お伝えしなければならないことがあるのです!」
「ど、どうしたのさ。そんなに興奮して」
「数時間前に、ドルート様がこちらにいらっしゃいました。どうやらコロネ様にお話があったようですが、今は寝ていらっしゃるとお伝えするとこの手紙を託されたのです。もしよろしければコロネ様を起こしに参りますが、と提案したのですが、ドルート様ははコロネ様が起きてからお話してくだされば良いと仰られ、そのまま立ち去られました」
「あ、そうなの? わたしが寝ている間にドルートさんが来てたんだ。それで、渡された手紙って?」
「こちらになります」
エミリーは懐から一枚の紙を取り出すと、それを手渡してくる。
その手紙は一枚の紙切れだった。
封書で閉じられたような形式ばったものではなく、家族の書き置きのようなイメージに近い。
平均的な折り紙サイズの紙の中央には短文が三行ほど書き記されていた。
その内容を読んでいき――わたしは驚きに声をあげる。
「ええっ!? あのコック志望の二人、もう面接が決定したの!?」
昨日ドルートさんが料理人のリストを持ってきてくれ、その中からわたしが選んだ双子の見習いコックだ。
ドルートさんはたしか今日その二人にわたしの元で働いてみる意思はあるかどうか確認しに行くとか言ってたけど、どうやらその返事がOKであるらしい。
むしろ早速今日からにでも働かせて欲しいというくらい熱意と意欲が最高潮に達しているらしく、とりあえず先にわたしの店に向かわせているようだ。
店主であるわたしが店に入るまでは決して勝手なことはせず、暇なら付近の掃除でもするようにと命じているそうな。
手紙には、わたしの都合がつくなら一度二人から話を聞いてみてあげてくれという内容で締め括られていた。
そして、ここでエミリーがわたしを起こしてくれた理由も察する。
「もしかして、わたしがいつまでたっても起きないから、わざわざ起こしに来てくれたの……?」
「そうですよぅ! もうお昼前だっていうのに、コロネ様が一向に起きる気配がないんですもん! このままだといつまで寝られるのか分からないので、今起こしに来たというわけなのです!」
「そ、そっか。それはありがとう。見習いの二人が待っているなら、わたしも早く行かないとね!」
「はい! すぐに支度しましょう!」
そうして、わたしは寝起き早々バタバタと身支度を整えながら、エミリーと共に足早にお弁当屋さんの店舗へと向かうのだった。
心地よいふかふかの感触に包まれながら、不意にわたしの体が揺れた。
ううん……なんだろう。
せっかく気持ち良い感覚に包まれているんだからそれを邪魔しないでよ。
「おき……ぁい、コ……ぇ様……」
さらにわたしの体がゆさゆさと揺らされる。
度重なる外部からの刺激によって、朧気だったわたしの意識が少しずつ明確に輪郭を帯び始めた。
停止していた脳が活動を開始し、奥深くに潜っていた意識が急速に引っ張りあげられる。
「――起きてください、コロネ様!」
「――はっ!」
一際大きな衝撃を食らい、わたしはパチッと目を覚ました。
そしてすぐにガバッと体を起こす。
わたしの下半身には毛布がかけられている。
お尻から伝わるふかふかの感触はベッドだ。
横の窓から暖かい陽射しが顔を照らしてきて眩しい。
「……んん、もう朝?」
「おはようございます。ようやく起きられましたか、コロネ様」
「んっと……エミリー?」
「はい! コロネ様方に仕える従順メイド、エミリーです!」
わたしのベッドの横に立つエミリーは、メイド服に身を包みえっへんと胸を反らした。
それに呼応するように、たわわな胸が上下に揺れる。
その様子を目を覚ましたばかりのボケた頭で認識しながら、いまいち状況が掴めないわたしは困惑した。
「えーと、どうしてエミリーがここにいるの? ここってわたしの部屋だよね?」
ここはラグリージュでも有数の高級ホテル、その最上階。
いわゆるスイートルームというやつだ。
そのため室内の面積もあり得ないほど広く、部屋数もわたしたちがそれぞれ一部屋ずつ自室として使っても十分にゆとりがあるレベルである。
さすがこの部屋を取ってくれたドルートさんだなと思いつつ、それゆえにわたしは一人でベッドに潜っていたはずなんだけど、目を覚ませば隣に立っているのはエミリー。
それにさっきから何だか外部から体を揺らされていたような……わたしの意識の覚醒を促されていたような感覚がある。
これって絶対エミリーがわたしを無理やり起こしたよね?
一体どうしてそんなことを……。
今日はあんまり早起きするつもりはなかったんだけど。
わたしは寝ぼけ眼をこすりながら脳内でぐちっていると、エミリーがぼふっとベッドに両手をついてわたしに顔を接近させてきた。
「どうしたもこうしたもありませんよ! コロネ様に至急、お伝えしなければならないことがあるのです!」
「ど、どうしたのさ。そんなに興奮して」
「数時間前に、ドルート様がこちらにいらっしゃいました。どうやらコロネ様にお話があったようですが、今は寝ていらっしゃるとお伝えするとこの手紙を託されたのです。もしよろしければコロネ様を起こしに参りますが、と提案したのですが、ドルート様ははコロネ様が起きてからお話してくだされば良いと仰られ、そのまま立ち去られました」
「あ、そうなの? わたしが寝ている間にドルートさんが来てたんだ。それで、渡された手紙って?」
「こちらになります」
エミリーは懐から一枚の紙を取り出すと、それを手渡してくる。
その手紙は一枚の紙切れだった。
封書で閉じられたような形式ばったものではなく、家族の書き置きのようなイメージに近い。
平均的な折り紙サイズの紙の中央には短文が三行ほど書き記されていた。
その内容を読んでいき――わたしは驚きに声をあげる。
「ええっ!? あのコック志望の二人、もう面接が決定したの!?」
昨日ドルートさんが料理人のリストを持ってきてくれ、その中からわたしが選んだ双子の見習いコックだ。
ドルートさんはたしか今日その二人にわたしの元で働いてみる意思はあるかどうか確認しに行くとか言ってたけど、どうやらその返事がOKであるらしい。
むしろ早速今日からにでも働かせて欲しいというくらい熱意と意欲が最高潮に達しているらしく、とりあえず先にわたしの店に向かわせているようだ。
店主であるわたしが店に入るまでは決して勝手なことはせず、暇なら付近の掃除でもするようにと命じているそうな。
手紙には、わたしの都合がつくなら一度二人から話を聞いてみてあげてくれという内容で締め括られていた。
そして、ここでエミリーがわたしを起こしてくれた理由も察する。
「もしかして、わたしがいつまでたっても起きないから、わざわざ起こしに来てくれたの……?」
「そうですよぅ! もうお昼前だっていうのに、コロネ様が一向に起きる気配がないんですもん! このままだといつまで寝られるのか分からないので、今起こしに来たというわけなのです!」
「そ、そっか。それはありがとう。見習いの二人が待っているなら、わたしも早く行かないとね!」
「はい! すぐに支度しましょう!」
そうして、わたしは寝起き早々バタバタと身支度を整えながら、エミリーと共に足早にお弁当屋さんの店舗へと向かうのだった。
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