ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第228話  直感に従っちゃう、ぽっちゃり

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 分厚いリストをパラパラとめくって人材選びをしていたドルートさんに、わたしは待ったをかけた。
 一瞬だけ視界に映った料理人の顔写真が直感的に気になったのだ。
 ドルートさんはわたしの言葉と同時に手を止めてくれ、リストを手渡してくれた。

「えっと……コロネさんが仰られていたのはこちらのページですかな?」
「ありがとう! そうそう、多分この子だよ」

 受け取ったリストには見開き二ページの左上に顔写真が貼られていて、そこにはまだ少し幼さの残る顔つきの女の子の写真があった。
 鎖骨の辺りから上しか写真には収められていないけど、レストランのコックが身にまとっていそうな清潔感のある白い制服が覗いていた。
 髪は赤色の三つ編みヘアーで、優しそうな雰囲気と共に少し控えめな性格もうかがえる。
 そしてページをめくってみると、いま写真で見た女の子と非常によく似た顔つきの別の女の子の写真が貼られていた。
 着ている服や印象などはそっくりだが、唯一明確に違うポイントは髪色だろう。
 一人目の子は赤髪だったけど、二人目の子は青髪だ。
 でも髪型は同じような三つ編みヘアーとなっている。 

 わたしがこの二人のリストを興味深く眺めていると、横からドルートさんが補足してくれた。

「アリアとイリアですな。双子のコックとして活躍している珍しい者たちですが……まだ駆け出しで熟達した腕を持っているというわけではありませんが」
「ふーん、アリアちゃんとイリアちゃんって言うんだ」

 ドルートさんの言葉を聞きながらリストを眺めていると、色々と詳細な情報や経歴が記載されていた。
 たしかにそれらの情報をざっと確認してみると、あまり華々しい職歴や実績などは記されていない。
 むしろまだ年齢は十五歳で、わたしよりも年下だ。
 写真から幼そうだなとは思ったけど、わたしの一個下でしかないよ。
 それくらいの年齢ならまだ場数を踏めていないっていうのは仕方ないだろう。
 むしろ、その年でこういう人材リストに載るくらい料理と真摯に向き合ってひたむきに努力してきているということが素晴らしいと思う。
 わたしと同世代だけど、生憎そんな高尚な努力はあまりしてきた覚えがないからね。
 どちらかと言うと、わたしは自分の食べたいものを勝手に作って、その延長線上として両親が営んでいたお弁当屋さんのお手伝いをするようになったっていう感じだ。
 多分この子たちとは意識の差がありすぎるとおもうよ。

「それでコロネさん。なぜそのような者が気になったのですかな?」
「いや、おじさんや年上の人ばかりが載ってるリストでこんなに若い子がいるんだと思って目を引かれてね。ちなみにこのアリアちゃんとイリアちゃんって今はどこで働いてるとか分かるの?」
「その二人はまだ駆け出し料理人ですので、ラグリージュに構える私の店で見習いとして従事しているはずですが……どうされるおつもりで?」

 少し怪しむような、あるいは警戒するような顔つきでドルートさんがたずねてくる。
 まあ、気持ちは分かるよ。
 他にも並外れた経歴の持ち主が山ほどいるっていうのに、どうしてこんな何の実績もない見習い料理人を気にかけるのか、っていうことだよね。
 まあ、いくつか理由はあるんだけど……とりあえずドルートさんのその質問にわたしは率直な要望を伝えた。

「いやぁ、せっかくだからこの二人にわたしのお弁当屋さんを手伝って貰おうかなと思ってね!」
「えええっ!? こ、この二人をコロネさんのお店で働かせる従業員として選出するというのですかっ!?」

 わたしの突飛な答えに、ドルートさんは珍しく目を見開いて驚きをあらわにしていた。


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