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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第222話 疑っちゃう、ぽっちゃり
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ドルートさんがわたしの部屋にやって来た。
そして皆が思い思いにくつろいでいるリビングへと入り、適当に空いている場所へ促す。
わたしの言葉にお礼を言うと、ドルートさんはソファの端っこに腰を下ろした。
わたしもその対面に座る。
高級感あふれる布地のソファが柔らかく沈む感触に癒されながら、本題を切り出す。
「それで、ドルートさん。さっきの話はどういうこと?」
少し強張った面持ちで話すわたしの顔を見たドルートさんは、安心させるように優しい笑みを浮かべた。
「あはは、別に取って食おうというような思惑は一切ございませんのでご心配なさらず。少し小耳に挟んだくらいのもので、世間話がてらそのお話を伺いたくてですね」
「ええ~……? 本当に世間話だけしにわざわざわたしの部屋にまで来ないでしょ?」
「はっはっは、さすがはコロネさん。素晴らしい洞察力です。ただ、嘘をついているというわけではありませんよ。コロネさんのお話を伺いたいのは事実ですからね」
ドルートさんは愉快そうに笑うと、エミリーが遅れてお茶を持ってきた。
そのお茶を受け取り、ドルートさんは少し口に含む。
言い逃れできそうだったらどうにか誤魔化す方向で話を進めようかという考えもできるけど、どうやらそんな悪あがきが通用する相手ではないようだ。
ドルートさんは少し小耳に挟んだだけとか言ってたけど、そんなわけはないはず。
きっと、大体の情報はすでに掴んでいるんだろう。
十全に下調べを行った上で、ここまで足を運んできたと見える。
「……まあ、ドルートさんが言っていたことは本当だけど」
「それでは、海豊祭に向けてこのラグリージュでお店を出されるおつもりなのですね?」
「そうだね。ちょっと縁があったというか、成り行きというか、なんやかんやあってそういう感じになったよ」
「たしか、店舗の賃貸契約を交わしたのはあの〈グリーン商会〉だとか」
確定的なワードがドルートさんの口から出てきた。
わたしはそんなこと一言も言っていないのに、いきなり『〈グリーン商会〉』だなんて単語が出てくるわけないよね?
じゃあ、なぜそんな言葉が口を突いて出てきたかと言えば……
「やっぱり全部知ってるんじゃん!」
「商人は情報が命。噂が出回るのが早いですからな。といっても、私がこの情報を知り得たのは別口のルートなのですよ」
「……別口って?」
気になる表現をするドルートさんに、わたしはおうむ返しで聞き返す。
別口もなにも、わたしの情報を商人たちに調べて回ってたんじゃないの?
ぶっちゃけストーキングされてるみたいであまり良い気はしないんだけど。
そんなわたしの不満げな表情に気付いたのか気付いていないのか、ドルートさんは少し真剣な顔をしながら口を開いた。
「かねてより……いえ、特にここ数日にかけてより顕著だったのですが、〈グリーン商会〉の名前が商人たちの間で度々出てくるようになったのですよ」
「ふーん、そうなんだ。まあ、有名になってるならいいんじゃないの」
「いえ、それが違うのです。〈グリーン商会〉の名前は、主に悪い文脈で聞くことが多くなっていたのですよ」
不可解な発言に、わたしは眉をひそめる。
「……それってどういうこと?」
「そうですな。〈グリーン商会〉の会長の娘であるエミリーさんの前で口にするのは少々憚られるのですが、言うなれば商会の信用問題ですよ」
ただ、とドルートさんは区切って。
「その〈グリーン商会〉が新たに物件を貸し出したという情報を聞き付けましてね。今の〈グリーン商会〉から新規で物件を借りる者がいるのかと気になって調べてみたところ、なんとコロネさんに繋がったということなのですよ」
言いながら、ドルートさんは意味深な瞳でにこりと笑みを深めた。
そして皆が思い思いにくつろいでいるリビングへと入り、適当に空いている場所へ促す。
わたしの言葉にお礼を言うと、ドルートさんはソファの端っこに腰を下ろした。
わたしもその対面に座る。
高級感あふれる布地のソファが柔らかく沈む感触に癒されながら、本題を切り出す。
「それで、ドルートさん。さっきの話はどういうこと?」
少し強張った面持ちで話すわたしの顔を見たドルートさんは、安心させるように優しい笑みを浮かべた。
「あはは、別に取って食おうというような思惑は一切ございませんのでご心配なさらず。少し小耳に挟んだくらいのもので、世間話がてらそのお話を伺いたくてですね」
「ええ~……? 本当に世間話だけしにわざわざわたしの部屋にまで来ないでしょ?」
「はっはっは、さすがはコロネさん。素晴らしい洞察力です。ただ、嘘をついているというわけではありませんよ。コロネさんのお話を伺いたいのは事実ですからね」
ドルートさんは愉快そうに笑うと、エミリーが遅れてお茶を持ってきた。
そのお茶を受け取り、ドルートさんは少し口に含む。
言い逃れできそうだったらどうにか誤魔化す方向で話を進めようかという考えもできるけど、どうやらそんな悪あがきが通用する相手ではないようだ。
ドルートさんは少し小耳に挟んだだけとか言ってたけど、そんなわけはないはず。
きっと、大体の情報はすでに掴んでいるんだろう。
十全に下調べを行った上で、ここまで足を運んできたと見える。
「……まあ、ドルートさんが言っていたことは本当だけど」
「それでは、海豊祭に向けてこのラグリージュでお店を出されるおつもりなのですね?」
「そうだね。ちょっと縁があったというか、成り行きというか、なんやかんやあってそういう感じになったよ」
「たしか、店舗の賃貸契約を交わしたのはあの〈グリーン商会〉だとか」
確定的なワードがドルートさんの口から出てきた。
わたしはそんなこと一言も言っていないのに、いきなり『〈グリーン商会〉』だなんて単語が出てくるわけないよね?
じゃあ、なぜそんな言葉が口を突いて出てきたかと言えば……
「やっぱり全部知ってるんじゃん!」
「商人は情報が命。噂が出回るのが早いですからな。といっても、私がこの情報を知り得たのは別口のルートなのですよ」
「……別口って?」
気になる表現をするドルートさんに、わたしはおうむ返しで聞き返す。
別口もなにも、わたしの情報を商人たちに調べて回ってたんじゃないの?
ぶっちゃけストーキングされてるみたいであまり良い気はしないんだけど。
そんなわたしの不満げな表情に気付いたのか気付いていないのか、ドルートさんは少し真剣な顔をしながら口を開いた。
「かねてより……いえ、特にここ数日にかけてより顕著だったのですが、〈グリーン商会〉の名前が商人たちの間で度々出てくるようになったのですよ」
「ふーん、そうなんだ。まあ、有名になってるならいいんじゃないの」
「いえ、それが違うのです。〈グリーン商会〉の名前は、主に悪い文脈で聞くことが多くなっていたのですよ」
不可解な発言に、わたしは眉をひそめる。
「……それってどういうこと?」
「そうですな。〈グリーン商会〉の会長の娘であるエミリーさんの前で口にするのは少々憚られるのですが、言うなれば商会の信用問題ですよ」
ただ、とドルートさんは区切って。
「その〈グリーン商会〉が新たに物件を貸し出したという情報を聞き付けましてね。今の〈グリーン商会〉から新規で物件を借りる者がいるのかと気になって調べてみたところ、なんとコロネさんに繋がったということなのですよ」
言いながら、ドルートさんは意味深な瞳でにこりと笑みを深めた。
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