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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第213話  スタミナをつけて貰っちゃう、ぽっちゃり

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 お弁当を作り、皆に試食してもらっている中、わたしは余り物のおかずとご飯をパクパクと食べていた。
 たこさんウインナーやだし巻き玉子、野菜炒めなどをオードブル形式で乗せたわたし専用のお皿は大満足の品々だった。
 我ながら結構上手くできたんじゃないかと思う。
 現に、ナターリャちゃんとエミリーからもお弁当は好評だった。
 二人にはそれぞれシャケ弁とのり弁を試食してもらったんたんだけど、どちらも美味しいと絶賛してくれて今も表情を綻ばせながら食べてくれている。

 そんな中、テーブルの上にちょこんと座るわいちゃんがぱたぱたと羽を動かす。

「ご主人、何のお弁当を引くか見ててぇな!」
「お、次はわいちゃんだね!」

 今回のお弁当の試食は、各々が自分の好きなお弁当箱を選んでもらっている。
 ただ、それは中見が伏せられた状態でだ。
 今のところナターリャちゃんとエミリーでシャケ弁とのり弁は既出だから、残るは通常弁当とスタミナ弁当の二種類になる。
 果たしてわいちゃんはどちらのお弁当を引き当てたのか……!

 わいちゃんがゆっくりとお弁当箱を開けていくと、ふわりと甘辛さと香ばしさが漂ってきた。
 このパンチのある肉肉しい香りは――

「おおおっ!? わいのお弁当には肉がいっぱいや!
 これはたしか……スタミナ弁当っちゅうやつやったやろうか?」
「そうだね! まさかお肉たっぷりのスタミナ弁当をドラゴンであるわいちゃんが引くとは、さすがだね!」

 わいちゃんが開いたお弁当箱には、ほかほかの真っ白なごはんと、それを覆い尽くさんばかりのしょうが焼きや野菜炒め、唐揚げなどの肉料理がこれでもかと詰め込まれている。
 まさに高校生男子の胃袋を満たすようなカロリー満載のスタミナ弁当だ!
 わいちゃんは器用にフォークを握って、ででんと乗っている大きなしょうが焼きをひと刺しした。
 そのフォークを持ち上げると、でろーんと巨大なやや厚切りの豚肉が香ばしい匂いを充満させながらタレが滴り落ちた。
 この肉はオークの中でも特に希少な部位らしく、それゆえ味も抜群のはずだ!

「目の前で垂らしてるだけでめちゃくちゃ食欲を刺激する香りが漂ってきまっせ! ほんなら、いただきます!」

 わいちゃんは大きなオーク肉をぱくりとくちばしでついばみ、バクバクと口を動かして一口で平らげてしまった。
 小さくてもふもふしてるわいちゃんのフォルムからは想像しにくいけど、わいちゃんもしっかりドラゴンなんだね。
 肉食獣らしい豪快な食べっぷりだ。
 モグモグと咀嚼していると、わいちゃんの小さな羽がぱたぱたと動いた。

「な、なんやこれはぁあああああ!!? こ、こんな美味い肉、この世に存在してええのんか!?」
「ふふふ、そんなに喜んでくれたなら嬉しいよ」

 本来しょうが焼きは作る予定になかったんだけど、ラグリージュの市場で店を開いていたタレ専門店みたいなお店に行った時に、とあるタレがビビッときたんだよね。
 それがしょうがのタレだ。
 しょうがはヤマト国産のものだったからあまり数量もなく値段も高かったけど、わたしは迷わず全て大人買いした。
 あのタレは大金をはたいてでも手に入れろと内なるわたしの声が囁いてきたからね!
 そうしてそのタレをちょちょっと改良して作ったのが、このしょうが焼きなのだ。
 再現度としては、自分でもかなりの出来なのではないかと自負している。

「このオーク肉はご飯に合うし、他の野菜炒めや唐揚げもめちゃ美味やなぁ! ほんまこの弁当を当てて正解やったで!」
「スタミナ弁当は文字通りスタミナがつくような料理ばかり入れてるからね! わいちゃんもスタミナをつけてカッコいいドラゴンとしてバリバリ成長していってね!」
「はいな! ご主人の従魔として恥じぬよう、ドラゴン族の誇りにかけてわいはもっと強くなるで!!」

 わいちゃんは気高い宣言と同時にがつがつとお弁当を貪り始める。
 その様子をほほえましく見ていると、わいちゃんの左隣、わたしから見ると一番奥の場所にいるサラの姿が不意に見えた。
 サラはわたしたちの方を窺うようにぷるぷるとスライムボディを震わせている。
 どうやら、お弁当を食べていいか迷ってるみたいだ。

 わたしは小さく笑って、サラの名前を呼んで食べていいよの合図を送ってあげた。


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