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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第204話  お米を炊いちゃう、ぽっちゃり

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 サラの協力も取り付け、いよいよ本格的にお弁当作りを開始する。
 他の皆はキッチンの真ん中あたりにあるテーブルに座ってもらっていた。
 椅子はなかったけど、サラが体内にストックしていた残りの木材を使用して即席の椅子を作ってくれたのだ。
 本当に便利なスキルをたくさんもっている最高の従魔だ。
 そして今からは、わたしの料理のためにその力を存分に振るってもらおう!

「よーし、それじゃあまずはお弁当の要であるご飯から炊いておこうかな。……あ、そう言えばここって炊飯器とかある……!?」

 ここに来て一番大事なことを失念していた。
 お弁当を作るにはお米は必要不可欠!
 そのお米を炊くためには炊飯器のようなものが入り用になる。
 この世界に家電製品としての炊飯器はないだろうから、何かしらの魔道具で代替する形になるんだろうけど、多分わたしはそういったものを持っていない。
 今からもう一回魔道具を売ってそうな市場に出向こうかと考えていたところで、エミリーがすっと立ち上がった。

「コロネ様。炊飯器の魔道具でしたら、たしかこの辺りにあったと思いますよ……あっ、これではないでしょうか?」
「え、ほんとに!?」
  
 エミリーの言葉にわたしは飛びついた。
 急いでエミリーのいるところに向かうと、そこはキッチンの角に位置する場所だった。
 棚……というよりもワゴンの方が形状が近いだろうか。
 そのワゴンの中には色々な魔道具や小物などが収納されていて、そこからエミリーが黒いボックス状のアイテムを取り出した。
 どんっ、とテーブルに置かれたそれは、わたしがイメージしていた炊飯器そのもの。
 ボタンを押すと、パカッと上部が開き、中には炊飯釜のようなものが格納されていた。

「おおおお! これだよこれ! まさしくこれが炊飯器だよ!」
「良かったです! これでお弁当作りもはかどりますね!」
「ありがとうエミリー!! めちゃくちゃ助かったよ!!」

 わたしはエミリーにハグをして全身で感謝と喜びを表現する。
 エミリーは顔を赤くしながらあわあわと固まっていた。
 それから、わたしは再び炊飯器と向かい合う。
 ででん! と蓋を開けて内部の黒い炊飯釜をこれでもかと見せつける炊飯器を見て、ニヤリと笑った。
 そして、わたしはアイテムボックスを発動してお米を出そうと試みる……が。

「……ん? なんか違和感が……ああっ、そうだった! このまま炊飯器の中に入れられないや!」

 わたしは慌てて炊飯器に出そうとしていたお米を取り出すのをストップし、代わりにテーブルの下に向けてアイテムボックスを発動させた。
 一拍置いて、わたしの手のひらからお目当ての物品が姿を現し、ドォン……! と床を揺らした。
 地震のような突然の揺れに、皆も驚いている。

「な、なんですか!?」
「どうしたの、コロネお姉ちゃん!?」
「どーん! って家が揺れたで!?」
「ぷるん!!」

 ビックリして立ち上がる皆に、申し訳なさそうに弁明した。

「ご、ごめん! ちょっとお米を出そうと思ったんだけど、そう言えばわたし米粒の状態でアイテムボックスに収納してないのを思い出して……」

 わたしの足元には、巨大な米俵が一つ転がっていた。
 この場の全員の視線が米俵に集中する。

「そ、それは、米俵ですか……?」
「あー、ナターリャ覚えてるよ! その米俵、この前ベルオウンの屋台でおじさんから買ってたやつだよね!」
「お、そうだよナターリャちゃん! 覚えててくれたんだ!」
「うん! あの時食べたご飯はとっても美味しかったから!」

 ナターリャちゃんはえへへ、と笑う。
 そう、この米俵は何を隠そうベルオウンに商売に来ていた出店のおじさんから直買いしたものだ。
 最初はラグリージュに移動してから売るつもりだったらしいけど、その前にわたしが全ての在庫を買い占めた形になる。
 おじさんはまさかそんな申し出があるとは思わなかったようで、とても驚いていたけど結果的に儲かるから、ということでわたしに譲ってくれた。

「お米は大量にアイテムボックスの中に入れてあったのは覚えてたんだけど、全部こういう米俵なんだよね。だからまずはここからお米を取り出さないと」

 わたしは小さく風魔法を発動させて、米俵のはしっこの部分をちょんっと切った。
 小さな切り口の中には、さらさらとした綺麗な白米が詰まっている。
 さらに続けて風魔法の応用で米俵の内部からお米を風に乗せて浮かせ、そのまま炊飯器の釜の中へと投入していく。
 まるで米俵の切り口から炊飯器の釜まで、アーチ状のお米の川が流れているようだ。

 そうしてお米を十合分くらい炊飯器に入れて、お水も加えて、蓋をガコンと閉じた。
 炊飯器の中央部にはめ込まれている大きな魔石に触れ、魔力を流す。
 すると炊飯器全体が赤く輝きはじめ、魔力が充填された。

「あとはこのボタンを押して、っと! はい、これで完璧!」

 ピッ、と炊飯開始のボタンを押した。
 その瞬間、ゴオォォォォと炊飯器の魔道具が稼働していく。
 これでご飯は大丈夫だね!

 さてさて、お次は肝心のおかず作りに移っていこう!


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