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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第188話 お弁当を思い出しちゃう、ぽっちゃり
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話の流れでついうっかりわたしの実家のことをエミリーに話してしまった瞬間、予想外にオーバーな反応をされたせいで皆の注目を集めてしまった。
……これどうしようか。
いや、でも皆わたしよりも前を歩いていたし、もしかしたらエミリーが急に大きな声を出したから振り返っただけで、話の内容までは聞こえてなかった可能性も――
「コロネさん! ご両親がお店を経営されていたとは本当ですか!?」
――あるわけないですよね!
皆しっかり聞こえてたみたいです!
この中で一番先頭を歩いていたはずのバンスさんが猛スピードで駆け寄ってきた。
眼鏡の奥で光る瞳は好奇心旺盛な少年みたいだった。
この人、商売のことになると明らかに目の色が変わるよね。
根っからの商人っていうことなのかな。
わたしはバンスさんの迫力に押されながら答える。
「ああー……まあ、一応」
「失礼でなければ、どのような商売を営まれていたのかお聞きしても!?」
言葉は少し控えめな表現を使ってはいるけど、バンスさんの表情を見る限り適当にはぐらかしても追及されそうだ。
あんまり実家に関することとかを喋るのはどうかとも思うんだけど、逃がしてくれなさそうだから仕方ない。
わたしは言葉を選びながら、バンスさんの質問に返答した。
「いや、別に普通のお弁当屋さんだよ」
「ほう、オベントー、ですか。あまり聞き馴染みがない言葉なのですが、それは具体的にどのような商品なのですか?」
一瞬バンスさんは何を言ってるんだろう? と思ったけど、さっきエミリーとお弁当の話をした時も似たような反応だったのを思い出した。
そう言えばこの世界ってお弁当っていう概念があんまりないんだっけ。
ランチボックスはあるみたいだけど、お弁当となると若干ニュアンスが違う気がするもんね。
「まあ簡単に言うならランチボックスみたいなものだよ。ただ、中に入っている料理が違うだけで」
「料理……ということは飲食系のお店なのですね。どのような料理を入れていたのですか?」
「やっぱりご飯は欠かせないよね。後はおかずだけど、これはそのお弁当の種類によるかなぁ。ハンバーグとかトンカツみたいなガッツリ系のものもあるし、逆に鮭とかお野菜が多めのお弁当とかもあるし」
「ご飯ですか。あのヤマト国がよく輸出しているお米のことですよね。もしやコロネさんはヤマト国の出身名のですか?」
「いや、違うよ。違うけど、ヤマト国の食文化はかなりわたしが住んでいた故郷と近いと思う。あ、もしかしたらヤマト国にはお弁当っていう文化があるかも?」
なんか前にもわたしがヤマト国の出身ではないかと訊ねられたことがあったような気がするな。
まあわたしの出身はヤマト国ではないからそれは違うとはっきり言えるんだけど、国名からして色々と日本を彷彿とさせるから毎回否定する時に微妙に違和感があるんだよね。
「はいはい、わたしの話はこれくらいでいいでしょ? ほら、本題はこのお店の厨房なんだからさ。バンスさんが案内してくれるんでしょ?」
「おっと、そうでしたね。コロネさんのご両親も同じ商人であったと聞いて驚いて忘れていました。申し訳ない。さあ、こちらの通路を抜ければすぐに厨房に到着しますよ!」
バンスさんは一言謝罪をすると、気を取り直してわたしたちの先頭へと駆けていった。
ぶっちゃけもうちょっとくらい色々と深掘りされるかと思ったけど、予想よりもあっさりと引いてくれたね。
わたしとしてはこれ以上余計な情報を吐く心配がなくなるからいいんだけど。
……ふむ、それにしてもお弁当か。
こんな話をしたせいか、少しお弁当が恋しくなってくる。
昔はよく店で売れ残ったお弁当をわたしがバクバクと食べまくってたからね。
わたしのぽっちゃりは実家の売れ残りお弁当で作られていると言っても過言じゃないよ。
わたしはふつふつとお弁当の魅力を思い出しながら、皆と一緒にバンスさんの後を着いていった。
……これどうしようか。
いや、でも皆わたしよりも前を歩いていたし、もしかしたらエミリーが急に大きな声を出したから振り返っただけで、話の内容までは聞こえてなかった可能性も――
「コロネさん! ご両親がお店を経営されていたとは本当ですか!?」
――あるわけないですよね!
皆しっかり聞こえてたみたいです!
この中で一番先頭を歩いていたはずのバンスさんが猛スピードで駆け寄ってきた。
眼鏡の奥で光る瞳は好奇心旺盛な少年みたいだった。
この人、商売のことになると明らかに目の色が変わるよね。
根っからの商人っていうことなのかな。
わたしはバンスさんの迫力に押されながら答える。
「ああー……まあ、一応」
「失礼でなければ、どのような商売を営まれていたのかお聞きしても!?」
言葉は少し控えめな表現を使ってはいるけど、バンスさんの表情を見る限り適当にはぐらかしても追及されそうだ。
あんまり実家に関することとかを喋るのはどうかとも思うんだけど、逃がしてくれなさそうだから仕方ない。
わたしは言葉を選びながら、バンスさんの質問に返答した。
「いや、別に普通のお弁当屋さんだよ」
「ほう、オベントー、ですか。あまり聞き馴染みがない言葉なのですが、それは具体的にどのような商品なのですか?」
一瞬バンスさんは何を言ってるんだろう? と思ったけど、さっきエミリーとお弁当の話をした時も似たような反応だったのを思い出した。
そう言えばこの世界ってお弁当っていう概念があんまりないんだっけ。
ランチボックスはあるみたいだけど、お弁当となると若干ニュアンスが違う気がするもんね。
「まあ簡単に言うならランチボックスみたいなものだよ。ただ、中に入っている料理が違うだけで」
「料理……ということは飲食系のお店なのですね。どのような料理を入れていたのですか?」
「やっぱりご飯は欠かせないよね。後はおかずだけど、これはそのお弁当の種類によるかなぁ。ハンバーグとかトンカツみたいなガッツリ系のものもあるし、逆に鮭とかお野菜が多めのお弁当とかもあるし」
「ご飯ですか。あのヤマト国がよく輸出しているお米のことですよね。もしやコロネさんはヤマト国の出身名のですか?」
「いや、違うよ。違うけど、ヤマト国の食文化はかなりわたしが住んでいた故郷と近いと思う。あ、もしかしたらヤマト国にはお弁当っていう文化があるかも?」
なんか前にもわたしがヤマト国の出身ではないかと訊ねられたことがあったような気がするな。
まあわたしの出身はヤマト国ではないからそれは違うとはっきり言えるんだけど、国名からして色々と日本を彷彿とさせるから毎回否定する時に微妙に違和感があるんだよね。
「はいはい、わたしの話はこれくらいでいいでしょ? ほら、本題はこのお店の厨房なんだからさ。バンスさんが案内してくれるんでしょ?」
「おっと、そうでしたね。コロネさんのご両親も同じ商人であったと聞いて驚いて忘れていました。申し訳ない。さあ、こちらの通路を抜ければすぐに厨房に到着しますよ!」
バンスさんは一言謝罪をすると、気を取り直してわたしたちの先頭へと駆けていった。
ぶっちゃけもうちょっとくらい色々と深掘りされるかと思ったけど、予想よりもあっさりと引いてくれたね。
わたしとしてはこれ以上余計な情報を吐く心配がなくなるからいいんだけど。
……ふむ、それにしてもお弁当か。
こんな話をしたせいか、少しお弁当が恋しくなってくる。
昔はよく店で売れ残ったお弁当をわたしがバクバクと食べまくってたからね。
わたしのぽっちゃりは実家の売れ残りお弁当で作られていると言っても過言じゃないよ。
わたしはふつふつとお弁当の魅力を思い出しながら、皆と一緒にバンスさんの後を着いていった。
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