ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第187話  お店の裏側まで見せられちゃう、ぽっちゃり

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 バンスさんの案内の元、貸し店舗である木造建築の建物の中に入っていく。
 玄関の扉を開くと、カウンターらしき造りが目に飛び込んできた。
 全体的な雰囲気としては思ったよりも明るめで、いま流行りの古民家カフェみたいなイメージがある。
 木造建築であるため隅から隅まで木に包まれているような空間で、日本人としては安心感のようなものも感じられるね。

「いかがでしょうかコロネさん! 少し入っただけでもいいお店であるとは思いませんか!」
「そうだね。何となく落ち着くっていうか、古き善き空間って感じがするよ」
「そうでしょうそうでしょう! ラグリージュでも完全な木造建築というのはまだ少ないですからね。最近は少しずつそういった民家なども増えてきてはいるのですが、やはりまだまだメジャーなのはレンガ造りの建造物でして。ですから木材を扱う我が〈グリーン商会〉としては、今回の海豊祭かいほうさいを機にウチの店舗から人気店を輩出し、一人でも多くの方に木の素晴らしさを伝えられればと思っているのです」

 バンスさんはぐっと拳を握って自らの想いを語る。

 たしかに言われてみれば、ベルオウンでも木造建築のものを見た記憶はないね。
 強いていうなら市場で店を開くときの屋根や骨組みなんかは木の柱を使っていたような気はするけど、精々その程度だ。
 ここまで本格的な古民家っぽい造りの家や店舗は初めて見た気もする。
 ベルオウンこそ《魔の大森林》が近くにあるんだから木材なんて取り放題だと思うんだけど、あまり木造建築は普及してなさそうだった。
 まあここは異世界だから中世ヨーロッパ風のベルオウンの街並みには特に疑問は抱かなかったけどね。

「そう言えば、ついこの前までここを借りていた商人ってどんな商売をするつもりだったの?」
「詳しくは聞いておりませんが、料理系だったと思いますよ。地元の名産料理を振る舞うと仰られていたかと」
「そうなんだ。カウンター席っぽい造りにもなってるし、店内で料理を振る舞うつもりだったのかな?」
「そこまでは分かりませんが、一応こちらは二パターン使えるよう設計しております。このまま通常通りカウンター席としてお客様に商品を提供するのもいいですし、そういった形態の事業でなければ広いレジ台としても使えます」
「あー、なるほど! たしかにレジとしても使えそうだね」

 現に冒険者ギルドとかだと受付のお姉さんはカウンターみたいな横一直線のテーブルに何人か立っているし、薄利多売の商売をするならお会計周りで混雑しないようレジ係を増やして対応する、なんてこともできるわけだ。
 なるほどなるほど。
 バンスさんは借り手が見つからない借家がもったいないから貸し店舗として改装したと言っていたけど、色々と考えられているみたいだ。
 さすがは商会を束ねている人。
 言うまでもなく商才はあるみたいだね。

「そう言えばコロネさんはポテトという料理を作られる予定でしたね。では次はその辺りを見てみましょう。あちらが厨房になります」

 バンスさんに案内され、店の奥に進んでいく。
 カウンターテーブルに沿ってどんどんと奥に行くと、目立たない色の木の扉があった
 そこを開けると、中は少しバックヤードっぽさが感じられる。
 綺麗な表側とは違い、少し作業場じみた裏側感があるね。
 とはいえ、別に不衛生であったりボロボロであったりするわけではなく、最低限の環境は整えられている。
 まあこのお店は料理をするような人も使う想定だから、裏側が汚かったりしたら契約してくれる人もいないだろうしね。

「わあ、お店の裏側ってこうなってるんだぁ!」
「ふふふ。ナターリャ様はこういった場所に来られるのは初めてですか?」
「うん! エルフの里にもお店はあったけど、裏側には行かせてもらえなかったから。だからこういう所は新鮮な感じがする! ね、わいちゃん、サラちゃん!」
「わいはそもそも人間の街に来たのがつい最近のことやからなぁ。新鮮な気持ちっちゅうよりかは、こんな風になっとんのやなぁ、っていう勉強の方が大きいかもしらんわ!」
「ぷるーん!」

 ナターリャちゃんを始め、サラやわいちゃんも興味津々といった様子でキョロキョロと辺りを見回しながら店の中を練り歩いていく。
 あの子たちはきっと、こんなお店でもプチ探検気分を味わってるんだろうね。

「皆さん楽しそうで良かったですね、コロネ様」
「だね。あんなに楽しそうにしてくれるなら、渋々ながら内見に来た甲斐もあるってもんだよ」
「あれ、コロネ様はあまり新鮮な気分にはなられないのですか?」
「あー……そうだね。あんまり言ったことないかもしれないけど、実はわたしの実家がお店やってて――」
「ええっ!? コロネ様のご両親はお店を経営されていらしたんですか!?」
「ちょ、エミリー声が大きいよ!」

 すぐにエミリーの口を塞いだけど、あまりに遅すぎる対応だった。
 わたしの前を先行していたナターリャちゃんたち、そしてバンスさんがキラリと眼鏡を光らせるのが見えた。


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