ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

文字の大きさ
上 下
176 / 265
交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第170話  予期せぬ人物と遭遇しちゃう、ぽっちゃり

しおりを挟む

 ラグリージュの市場をぶらぶらと見回っていたわたしは、ふと見知った女性がベンチに座っているのを発見した。
 向こうもわたしの視線に気付いたようで、驚いた表情をしている。

「えっ、も、もしかして……コ、コロネ様!?」
「エミリーじゃん!? どうしたのこんなところで!?」

 わたしも驚きながら声をあげる。
 まさかこんなところでエミリーと出会うとは思ってもみなかった。
 わたしが突然立ち止まってビックリした声を出したため、隣を歩いていたナターリャちゃんたちも歩みを止める。

「え? エミリーお姉ちゃん?」
「うん。ほら、あそこに」

 わたしがベンチの方に指をさすと、ナターリャちゃんは視線を移動させてぱあっと笑顔になった。

「ほんとだ! エミリーお姉ちゃんがいる!」
「こんなところで奇遇でんなぁ」
「ぷるーん!」

 わたしたちは小走りでエミリーがいるベンチまで駆け寄った。
 エミリーも慌てて立ち上がり、わたしたちに頭を下げる。

「み、皆さんもご一緒だったんですね!」
「あれ、エミリーその格好……」

 ベンチまでやってきたわたしは、エミリーの雰囲気が違うのを感じた。
 理由は簡単。
 エミリーの服がいつものメイド服じゃない。
 控えめな色のワンピースを着ていて、手には小さなバッグもある。

「エミリーお姉ちゃんの服可愛いー!」
「えっ、あ、ありがとうございます」
「似合ってるよエミリー。いつもと雰囲気が違っていいね」
「コ、コロネ様もありがとうございます!」

 エミリーは褒められてどう反応したらいいのかわからないといった様子でしどろもどろにお礼を言った。
 何気に初めて見るエミリーの私服姿を新鮮に思いながら、わたしは話を切り出す。

「そう言えば今朝は宿に帰ってこなかったけど、どうかしたの?」
「あっ! その件に関しましては宿の朝食の提供までに本当に申し訳ございません!」
「いやいや、別に気にしなくていいよ! わたしたちが朝食を食べた時間も早かったし。ただ、あのエミリーが朝食前に戻ってきてないから、どうかしたのかと思って」
「……はい。じ、実は……」

 エミリーは少し間を置いてから、話し始めた。

「昨日私の実家に帰ったのですが、そこで私宛に手紙を書いた理由を教えてもらって」
「手紙? ああ、そう言えばエミリー宛に手紙がきてたんだったね。たしか、話したいことがあるからできるだけ早く帰ってこい、とかそんな内容だったっけ?」

 そもそもわたしたちがラグリージュに来ることになったのは、突如ベルオウンにあるわたしのお屋敷にエミリー宛の手紙がきたからだった。
 差出人はエミリーのお父さん。
 わざわざ手紙を寄越してまで帰郷を促して話さなければならない内容なんてなんだろうと思ってたけど、エミリーの表情から察するにあんまり良い話じゃなかったのかな?

 わたしの質問に、エミリーはこくりと頷いた。

「そうです。コロネ様が仰られている通り、私は実家に帰ってから手紙の内容を訊ねました。……その前に、私の実家はラグリージュで商会を運営していることはご存知でしょうか?」
「えーと、たしか〈グリーン商会〉ってやつだったっけ? ドルートさんの〈アイゼンハワー商会〉と昔付き合いがあったとか言ってたよね」
「はい。ドルート様の商会とは今でも懇意にさせていただいております。私の両親が運営している〈グリーン商会〉は主に木材の加工品を販売して売上をあげているのですが、そこで問題が生じたらしく……」
「問題って?」

 エミリーは一瞬言い淀んだあと、意を決するように切り出した。

「〈グリーン商会〉で提供している木材の加工品の一部が、供給されなくなってしまったのです」
「なにか理由があるの?」
「はい。それが、その加工品で使用する木材というのが、《魔の大森林》に生える樹木でして。その供給が、先の狂乱化現象の影響で完全に停止してしまったのです……!」
「ええっ!? そうなの!?」 

《魔の大森林》は狂乱化現象の後始末でてんてこまいだから、多分木材に限らずほとんどの物資の供給はストップしてそうだ。

「ちなみに、その樹木が届かないとどうなるの?」

 わたしのその質問に、エミリーはぐわっと迫真の表情で叫んだ。

「もしこのまま木材が届かなければ……我が〈グリーン商会〉は――――倒産します!!」


しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!

家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……? 多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

処理中です...