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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第165話  海鮮丼を味わい尽くしちゃう、ぼっちゃり

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 海鮮丼を食べ進める。
 あまりの美味しさにガツガツもりもりと食べまくっていると、いつの間にか丼の中が空っぽになってしまった。
 黒い丼の器の中は魚の脂と付着した醤油でてらてらと光り、ところどころ米粒が散らばっているのが見える。

 無事に一杯目を完食したけど、まだまだわたしは満足していない。
 久しぶりのお刺身に体がもっと寄越せと欲しているのだ!

「すみませーん! 海鮮丼のおかわりくださーい!!」

 わたしが手をあげておかわりを要求すると、運搬係の人たちが慌ただしく動きはじめた。
 それと同時、司会の男の人が目敏めざとくわたしへ指をさす。

『おおっーと、ここでコロネさんが最初のおかわりだぁあああ! まだジャイアント・ボブは一杯目を食べているようだが、このままリードして――』

 司会の人が話している途中で、バンッ! と何かを叩きつけるような音が隣から響いた。
 目を向けてみると、ジャイアント・ボブが丼を手にした状態でニタリと笑っている。

「おい、俺もおかわりを頼むぜ!!」

 ジャイアント・ボブは豪快な口調でわたしと同じおかわりを要求した。

 さっきの叩きつけるような音は、ジャイアント・ボブが完食した丼をテーブルに置いた音だったのか。
 いや、にしてもどんなパワーで丼置いてんのさ。
 器が傷んじゃうでしょ。

「一歩リードしたと思ったか? そんな食いっぷりじゃ、俺を追い越すことは不可能だぜ!」
「いや別にリードしたとか思ってたわけじゃないけど」
「ガッハッハ、そうかそうか! やっぱりおもしれぇ嬢ちゃんだな!」

 いや、なにが!?
 別に今の返答に面白味のあるポイントなんかないでしょ。
 全く、このジャイアント・ボブには一体わたしはどう見えているんだろうか。

 だけど同時に、そう言えばここは決勝戦の舞台だったなと思い出す。
 海鮮丼という予想外の料理と、久しぶりに食べるお刺身が美味しすぎて大舞台にいることをすっかり忘れてたよ。
 こんな美食の前では、周囲に聴衆がいるなんて些末なことに過ぎないからね。

 まあ薄々わかってはいたけど、ジャイアント・ボブはかなりわたしと張り合いたいみたいだ。
 チラリと見てみると、ジャイアント・ボブがサングラス越しにバチバチと火花を散らしてくるのが見える。
 そんなに挑発的な態度をされると、わたしのハートにも闘志が燃え上がってくるってものだ。

 わたしが密かに闘志を燃やしていると、運搬係の人たちが数人こちらへやって来た。
 そしてわたしとジャイアント・ボブのテーブルにバラけ、それぞれにおかわりの海鮮丼をゴトンと置いた。

『さあさあ、ただいまジャイアント・ボブとコロネさんの両テーブルに追加の超ビッグ海鮮丼が提供されました! 仕切り直しの二杯目、この一杯を通して現在の均衡は崩れるのか!? 互いに譲らない互角の勝負! 制限時間はまだ半分にも到達しておりませんが、全く目を離すことができません!!』

 今度は箸ではなく、レンゲを持って海鮮丼をこぼれないように崩していった。
 この海鮮丼は山盛りの形になっていて、外側は様々な魚介類のお造りなんかでコーティングされているけど、中央部にはこれまたほかほかのご飯がパンパンに詰まっているのだ。
 一杯目は丼の構造がわからなかったのと目の前のお刺身に我慢できなかったのとが合わさってお箸で一つ一つ外側のお造りを食べていったけど、今回は戦略を変更する。

 綺麗に盛り付けられた海鮮丼を崩すのは少し申し訳なく思うけど、それも気にせずまずは丼中央のご飯の塊の部分までレンゲで掘削していく。
 ご飯が見えてきたら、まずはご飯を豪快に一口!
 そしてすかさず、外側にぶっ刺さっているエビ天をサクッと頬張った。

「んんん~~!! エビ天とご飯の相性最高~~! こんなのいくらでも食べられちゃうよ!!」

 エビ天とご飯のマリアージュを楽しみながら、マグロのお造りやぷりぷりのホタテなんかもどんどん口に放り込んでいく。
 まさにこの海鮮丼を真っ正面から味わい尽くすような食べ方!

 わたしは食に没頭する新たな食べ方をマスターし、さらに海鮮丼を頬張るペースを上げていった。





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