ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第164話  マグロに悶絶しちゃう、ぽっちゃり

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 決勝戦で提供されたのは、海の幸豊かなラグリージュを象徴する超ビッグ海鮮丼。
 フライパンくらいの幅がある大きな丼には、ありとあらゆる刺身や海産物が山盛りに詰め込まれている。

 わたしはその中からひときわ大きなサーモンピンクの切り身を箸で持ち上げる。
 キラキラと陽光を反射させる切り身は、新鮮そのものだ。
 ふわりと美味しそうな香りが漂ってくる。

「いただきます!! あ~むっ!」

 ぱくり、と豪快に頬張った。

 瞬間、ぷりっぷりのお刺身が口内に広がる。
 ほどよい歯応えもあり、甘い脂もしたたってきてめちゃくちゃ美味しい!
 刺身醤油も超マッチしていて、全体の味わいを引き締めて旨味をより増幅させる。

 これこれ、これこそまさにお刺身!!
 ベルオウンには生魚を捌いて食べる文化はなかったから、久しぶりのお刺身に体が喜んでいるのがわかる!

「んん~~! 美味しい~~! やっぱりお刺身は最高だね!!」

 ごくん、と飲み込み、最後までお刺身の味を堪能する。
 はあ……たまらない。
 日本に近い食文化を有しているヤマト国なるものが存在していたからもしかしたらとは思っていたけど、まさかこんなに早く狙いどおりのお刺身を食べることができるなんて……!

 でもいま食べたお刺身ってなんの魚なんだろう? 
 食べた感じはかなりマグロに近かったね。
 見た目や食感からして、中トロみたいな感じなのかな?
 だけど、そもそもこの異世界にマグロとかいるのだろうか。
 ううむ、考え始めると気になるな。
 どうにか真相を知る方法は……はっ、そうだ!
 一つの妙案をひらめいたわたしは、いま食べたお刺身と同じものを再び箸でつかんだ。

「こういう時こそこのスキルの出番じゃない! 最近使ってなかったけど久しぶりに――鑑定!」

 周りに不審に思われないようにこっそりと鑑定を発動すると、箸にはさまれた美味しそうなお刺身の横にウインドウが表示される。

 ―――――――――――――――――――
 名称:デッドリーマグロの中トロ

 赤身と脂が絶妙なバランスで構成されている珠玉の部位。爽やかな甘味と存在感のある脂の乗りが特徴で、お刺身はもちろん、軽く表面を炙って食べても非常に美味
 ―――――――――――――――――――

 おお、これはやっぱり中トロだったんだね!
 赤身と脂の調和を見てそうじゃないかと思ってたけど、わたしの目に狂いはなかったみたいだ。
 それにしてもデッドリーマグロなんていう名前のマグロは聞いたことがないな。
 これは異世界の固有種だろうか。
 デッドリーなんて、名前からして物々しさが漂っているけど、その味は本物だった。
 マジで一貫千円とかするお寿司のネタとして乗ってる超高級マグロにも引けを取らないくらいの美味しさだ。
 ちなみにどうして一貫千円のマグロ寿司で例えたかと言うと、それがわたしが人生の内に食べた中で一番美味しく、かつ一番高級なマグロだったからだ。
 わたしは食べることは大好きだけど、料理人としてはアマチュア程度。
 だからお刺身の細かい味の違いなんかは詳細にはわからないかもしれないけど、これだけは言うことができる。
 このデッドリーマグロの中トロ、ぶっ飛ぶくらい旨い!

 わたしがマグロの美味しさに改めて浸っていると、司会の人がおもむろに動き出した。

『通常、海鮮丼に使用される魚介類の数々はラグリージュの商業ギルドから卸していただいております。しかし! 今回は特別に漁業組合の方々の協力を得て、獲れたてほやほやの魚介類をこの場で捌いて提供しております! 先ほど決勝戦の舞台を飾ってくれた立役者である漁業組合の方の一人がお越しくださいましたので、少しお話を聞いてみましょう! ジョージさん、此度の大会はいかがですか?』

 司会の人が隣にいたおじさんにマイクをわたす。
 おじさんは浅黒く日焼けしていて、頭にねじりハチマキを巻いていた。
 いかにも田舎に住む昔ながらの漁師っていう雰囲気を感じる。

『このラグリージュの海辺で開催されているってこともあって、毎年見てるよ。今回は女性の方が最後まで残っていて、例年とは違った戦いになりそうでワクワクしてるべ』
『そうですね! 今回は飛び入り参加していただいたコロネさんがまさかあのジャイアント・ボブと一騎討ちになるという波乱の展開となりました! そんな二人の勝敗を決するのはジョージさんが漁獲された魚たちを使った海鮮丼なのですが、なにか思い入れなどはございますか?』
『うーん、やっぱりデッドリーマグロを獲ることができたことか。あのマグロは滅多に姿を現さないのに加えて、その名の通りヒレが鋭利な刃のようになってるから、捕まえるのはかなり骨が折れるんだよ。そんな高級食材であるデッドリーマグロをふんだんに使った海鮮丼だから、大食いの最中とは思うけども、同時に味わって食べてもらえると俺としても嬉しいかぎりですわ』

 司会と漁師の人の話を聞いて、わたしは海鮮丼を食べながら納得した。
 やっぱりデッドリーマグロは名前の通り穏やかな生物じゃないみたいだね。
 そんな食材をこんなにたくさん食べることができるなんて、まさに大食い大会さまさまだ。
 一応参加費として金貨五枚は払ったけど、もう余裕でそれ以上のご飯を食べさせてもらっている気がするね。
 まあ、だからといってここで食べるのを止めるなんてことをする気はないけど。

 てか、むしろ今のうちにお刺身を食べまくっておかなきゃ損だもんね!
 そう結論づけたわたしは、幸せに満ちながら海鮮丼をかきこむペースを上げていった。



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