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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第163話 海の幸に身震いしちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むまさかのジャイアント・ボブとの一騎討ちになってしまった決勝戦。
わたしは内心沸き上がるワクワク感に身を任せて、対面で料理を作る人たちを眺めていた。
第二回戦までに座っていたテーブルよりもいま座っているテーブルの方が料理班と近いから、ご飯のいい匂いもよりダイレクトに漂ってくる。
白米はかなりの量を準備しているみたいだけど、一体なにが出てくるんだろう。
楽しみに待っていると、MCが再びマイクを取って大仰な身振りで口を開いた。
『皆さん大変長らくお待たせいたしました! 今大会もいよいよ佳境の最終盤! 激闘の予感をひしひしと感じる決勝戦でお二方に食していただく料理は――――こちらです!!』
MCが喋っている最中に、運搬係の人が初戦と同じく大きなトレイに巨大なドーム状の銀のフタで覆った料理を運んできた。
そしてわたしたちの目の前に置かれたその銀のフタを、MCの言葉に合わせて取り外した。
その瞬間、ぶわっと醤油の香りが漂ってくる。
『国内最大の交易都市であるラグリージュは、海産物も極めて豊富! その海の幸をふんだんに凝縮したラグリージュを象徴する丼飯……超ビッグ海鮮丼です!!』
銀のフタを開いて現れたのは、サーモンピンクの巨大な切り身!
丼の端っこの方には白い刺身や赤みがかった刺身もある!
山のように積み上がる切り身のてっぺんには卵黄がどんっと乗っていて、上から刻みネギがまぶされていた!
そして丼の上から全体的に醤油が二周ほどかけられているよ!!
「うおおおおおおおおおお!! 海鮮丼だぁああああああああああ!!」
てっきりまたなにかの油ものとかかな~と思っていたわたしは、予想外の料理に叫びをあげる。
ここにきてまさかの海鮮丼とは!!
ラグリージュは海が広がっているから海産物は豊富だって情報は聞いていたから、もしこういう海鮮系の料理があるなら絶対に食べにいこうと思っていた。
ただ、日本食みたいな生魚をお刺身にして食べる文化がこの世界にあるかは心配だったけど、どうやら杞憂だったみたいだ。
丼に顔を近づける。
醤油とお刺身のめちゃいい香り。
わたしはじゅるりとよだれを拭った。
「ハッ、最後は海鮮丼か。見たところ、ラグリージュの特産品がふんだんに使われてる。決勝戦に相応しい料理だ。いい勝負を期待してるぜ、嬢ちゃん」
「そっちこそ、簡単にダウンしたりしないでよ?」
「ハッ、この俺様を誰だと思っていやがる! 優勝するのはこの俺だ!」
「わたしが初黒星をつけてあげるよ」
ジャイアント・ボブとバチバチに言い合っていると、MCが勝負に使用される料理の説明に入る。
『こちらの超ビッグ海鮮丼、超ビッグと銘打っているだけあって、丼全体の重量は実に三キロオーバー! 地元の漁師の方々の魂の結晶とも言えるでしょう!』
MCは司会席に置かれた大きな砂時計のくびれの部分をつかんだ。
第二回戦で使用された砂時計よりも一回り大きい。
今は砂が全て下のガラスに落ちきっている状態だ。
それを、ぐるんと回転させる。
『制限時間は四十分間! 果たしてこの二人はいくつの丼を積み重ねることになるのか!? 正真正銘、ラストの大勝負――大食い大会決勝戦、開始です!!』
ドンッと砂時計を司会席に置いた。
その瞬間、開始を告げるゴングが鳴り響く。
テーブルにはスプーンやフォークなど色々な食器が置かれているけど、わたしはいの一番に箸を手にとった。
その箸で、サーモンピンクの切り身を持ち上げる。
太陽の光に反射してキラキラと輝く切り身は、まさに新鮮さの証!
醤油もほどよくかかっているから、このまま食べることができるね!
「それじゃあ、いただきます!!」
わたしは期待に胸を膨らませて両手を合わせ、大きな切り身を勢いよく頬張った。
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