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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第158話 応援にやる気を出しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「ふぅ~、ホットドッグ美味しかったぁ~! ごちそうさまでした!」
わたしはホットドッグ三皿をペロリと平らげ、水を一口飲んで一服する。
目の前には巨大なお皿が三つ積み重なっていた。
一皿に少なくとも二十個はホットドッグが入っていたはずだから、これで最低でも六十個のホットドッグを完食したことになる。
ギガスパイスホットドッグというだけあって一つ一つがかなりボリューミーだったけど、美味しすぎてあっという間に食べきっちゃったよ。
他の参加者を見るとまだ完食できていない人もいるから、これでわたしの初戦勝ち上がりは確定した。
他の参加者の決着がつくまでホットドッグの余韻に浸っていようと幸福感を噛み締めていると、隣の男が笑いだした。
「もう完食しちまうとは、どうやら口だけじゃなかったみたいだな。今のところ食いきったのは俺たち二人だけだ」
「……そう。あなたもこれくらいじゃまだまだ余裕みたいだね」
「ハッ、たかがホットドッグ数十個食ったくらいじゃ俺の腹の虫は治まらねぇよ! こんなもん朝飯前だ! ま、中には早速苦戦してる奴もいるみたいだがな」
ジャイアント・ボブはおもむろに左側に並ぶフードファイターたちを眺める。
たしかに出遅れている人も何人かいるみたいだ。
ただ……さっきから感じてたことながら問題が一つ。
わたしはテーブルの一番右の席に座っているんだけど、すぐ左隣がジャイアント・ボブという巨漢なせいでほとんど向こうの参加者の姿が見えないんだよね。
まあわたしがのけ反ったりすれば確認はできるんだけど、この男の体が邪魔で仕方ない。
『おおっと、まだ開始からあまり時間は経っていないが早速完食した人間がいるようだー! 一人はやはりこの男、前回王者のジャイアント・ボブ! そしてもう一人は何と意外な人物、先ほど飛び入りで出場を決めた一般参加者のコロネさんだー! ジャイアント・ボブと張り合うほどの食べっぶり! 彼女は今大会のダークホースとなり得るのかぁあああああ!!』
MCの力強い実況に周囲を取り巻くギャラリーもわっと沸き立つ。
今さらだけど、こうも不特定多数の人たちから注目を集めると何だか変な感じがするね。
まあそんなものは美味しいご飯の前では霞んでしまうくらいのストレスに過ぎないから別に問題はないけど。
MCの煽りやギャラリーの声援を聞きながら他の参加者が食べ終わるのを待っていると、ギャラリーの一角から馴染みのある可愛い声が聞こえてきた。
「コロネお姉ちゃんすごーい!!」
「さすがはご主人やー!」
「ぷるるーん!!」
声の主の場所を探すと、ここから十メートルほど離れたギャラリーの最前線で大きく手を振っている幼いエルフを発見した。
「あっ、ナターリャちゃん! サラとわいちゃんも! 応援してくれてたんだ!」
「もちろんだよー! ナターリャたち、ずっとコロネお姉ちゃんを応援するよ!」
「ご主人なら絶対優勝できまっせ!」
「ぷるーん!」
ナターリャちゃんの小さな腕の中に抱かれたわいちゃんと、その頭に乗ったサラもアピールするように体を動かしている。
ナターリャちゃんたちに応援されちゃあ、情けない姿を見せるわけにはいかないね!
わたしも声援に応えるように手を振り返していると、またも横の巨漢が絡んできた。
「どうした、嬢ちゃんの友達か?」
「まあね。わたしのパーティメンバーだよ」
「パーティだと? それじゃなんだ、嬢ちゃんは冒険者でもやってるってのか?」
「一応ね。冒険者っていってもまだ駆け出しだけど」
嘘ではない。
冒険者登録をしたのはつい一週間前くらいのことだ。
ただその短期間の間に狂乱化現象とかいう災害に見舞われて魔物千体以上とゴブリンロードを討伐したけど、そこまで教えてあげる義理はない。
そもそもそういった功績からわたしの存在が特定されそうだったから、一時的な避難場所としてこのラグリージュに観光に来たっていうのに、その避難先でわたしの素性をバラしてしまったら意味がない。
必要最低限の情報しか言わなかったわたしだけど、ジャイアント・ボブは楽しそうにニカリと歯を見せる。
「嬢ちゃんみたいな若い女は後衛の魔法職が多いが、冒険者をやる以上体力勝負なのは同じだ! 通りで中々悪くない恰幅してると思ったぜ!」
「…………そりゃどうも」
うん、やっぱりわたしのことを見誤ってるな。
後衛のサポートもできるけど、基本的にわたしは最前衛で乗り込んで敵をぶっ飛ばしてるって言ったらどんな反応するんだろう。
まあでも、これは良い兆候でもある。
わたしの顔も名前も知って、さらに冒険者という肩書きまでバレたのに騒がれる気配がないからね。
ベルオウンではすでにわたしの噂は出回ってるみたいだけど、さすがにラグリージュまで広くは行き届いていないみたい。
ドルートさんだけはわたしのことを良く知ってたけど、あの人は特殊すぎるから例外だ。
このラグリージュという街ではわたしはいち一般人に過ぎないということを確認できたところで、初戦の終了を告げるゴングが鳴った。
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