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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第154話  思っていた想像が外れちゃう、ぽっちゃり

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 ナターリャちゃんと小一時間ほどラグリージュの港を探索した。
 さっきは住居やお店が建ち並んでいたけど、少しずつ街並みが変わりはじめる。
 道幅は徐々に開かれていき、物資を運搬する馬車の数が増えてきた。
 広大な海もすぐそばに横たわっていて、太陽の光をキラキラと乱反射させている。

 忙しなく働く人々を遠巻きに眺めながら港沿いを歩いていると、不意にナターリャちゃんが思い出したように顔を上げた。

「そう言えば、エミリーお姉ちゃん帰ってこなかったね」
「ああ、言われてみればそうだね。たしか朝には帰ってくるって言ってたけど、何かあったのかな?」
「うーん。まだお昼にはなってないから、もしかしたらナターリャたちが出発してから宿に帰ってきたのかもしれないけど……」
「入れ違いになったってことか。まあ、どちらにせよきっと大丈夫だよ。エミリーも久々の帰省だったから、思ったより実家にいることになったのかもしれないし!」

 たしかに真面目なエミリーが朝に帰ってこなかったのはちょっと気になるけど、案外うっかり寝坊したとかそんな理由かもだし、あんまり深く考えなくてもいいだろう。
 てか、考えても答えはわからないしね。
 今日の夜には宿に帰ってきてるはずだから、その時に詳しい話は聞いたらいいだろう。

「それにしても、ラグリージュの港ってちょっと思ってたのと違うなぁ。貨物船とかがかなり多いね」

 わたしは無意識に漁港のような感じを想像してたんだけど、ここは本当に貿易港のような雰囲気だ。
 コンテナも大量に積まれてるし、巨大なコンテナは魔法か何かで浮遊させて移動している。
 港と聞いて漁港をイメージするとは、ちょっと食べ物に引っ張られすぎたかもしれない。
 ラグリージュは王国最大の交易都市なんだから、そりゃあ食べ物だけじゃなくて他の物品も運ばれてくるよね。

「コロネお姉ちゃん、ちょっとがっかりしてる?」
「いや、これはこれで貴重な光景を見てるとは思うんだけどね。ベルオウンにはここまで巨大な港も船も見たことないし。ただ、やっぱり漁港みたいな感じだと近くでお魚の競りみたいなのが行われてて、そこであわよくば新鮮なお魚でも食べられるかなって期待してたんだけど」

 はっきり言って競りならそこらの漁師さんや仕入れに来た料理人にも負ける気はしない。
 なぜならわたしは狂乱化事件で大量の魔物を倒したし、ゴブリンロード討伐の報償金もある。
 アルバートさんみたいに超富裕層とまでは言えないけど、そこそこの小金持ちではあると思う。
 しかもそのお金の使い先が食べ物にしかないという偏りっぷりだ。
 日本だとマグロとかが一匹丸々で数百万の値で競り落とされたりするニュースをたまに見かけたけど、今のわたしならそのような大盤振る舞いもできなくはない。
 てか大トロとか中トロとか食べられるなら普通に数百万くらい出すよ。

「そっかぁ。それは残念だね。どこかにお魚さんを食べられるお店とかないのかな」
「どうだろうね。魚を捌いて新鮮な魚介を楽しめるような感じのお店って、こういう貿易港みたいな場所だとあんまりあるイメージないんだけど……」

 どっちかっていうとこの辺りは工業化っていう言葉の方が似合う。
 もちろんさっきから引っ切り無しに運び込まれてくる大きなコンテナの中には食料品がある物もあるんだろうけど、それはある程度保存が効くような食べ物だろう。
 新鮮な魚とか運んできたら途中で腐っちゃうし。
 まあ魔法とかを使えば腐敗を防げることもできそうだけど、そもそもこの辺りに食事処は気がしない。

 夢のお刺身ライフを絶たれたわたしはガックリしていると、ナターリャちゃんの腕に抱かれているわいちゃんがくんくんと鼻を鳴らした。

「ご主人! なんかええ匂いがするで!」
「……え?」

 わいちゃんに言われてわたしも嗅覚を研ぎ澄ましてみると、たしかにかすかな良い匂いが漂ってきた。
 今は緩い向かい風になっているから、この匂いの源はわたしたちの進行方向にあるのかな?
 少しワクワクしながら歩みを続けると、遠くからマイクを使って拡声した言葉が聞こえてきた。

『さあさあ皆さん、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ラグリージュ名物大食い大会の開催だよ! お金を払えば飛び入り参加も可能! 今年は前回王者を破る者は現れるのかぁー!?』

 わたしはピクリと耳を動かす。

 大食い大会、だって……!!?



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