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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第153話 目的地を決めちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「いやぁ、朝食も美味しかったね~!」
「ナターリャ、あんなに美味しいパン初めて食べた!」
朝食の準備ができたとの連絡を受けてからしばらくして宿のレストランに行くと、ほどなくして料理が運ばれてきた。
トーストとスクランブルエッグとサラダ、そしてこんがり焼かれたウインナー数本というラインナップだ。
シンプルな朝食だったけど、その味は本物。
めちゃくちゃ美味しかった。
さすがは高級宿屋なだけはあるね。
ただ、一つだけ惜しむらくがあるとするなら……。
「やっぱり朝食の量が少ないことか……!」
ベルオウンにあったルカの宿屋もそうだったけど、やっぱりどこも朝食はそんなに大量に作ったりはしないんだね……!
まあ朝からそんなにドカ食いする人もいないだろうし、仕方ないか。
だけど、わたしの胃袋はまだ全然満足していない。
そもそもラグリージュに着くまでの二日間も皆と一緒だったからそこまでご飯を食べまくっていたわけじゃないのだ!
心の中で大きく叫び、くわっと目を見開く。
「コロネお姉ちゃん、今日はこれからどうするの?」
「うーん、そうだなぁ」
今わたしたちはドルートさんの宿の入口の前で立っていた。
目の前は大通りで、さっきからひっきりなしに多くの通行人がわたしの前を通りすぎている。
心なしか、昨日ラグリージュに来た時よりも人の往来が活発な気がするね。
なんでだろう? と疑問に思った瞬間、一つの答えが浮かんできた。
「あ、もしかして海……?」
わたしの視界の右側には大海原が広がっていて、ほんの数百メートルくらい先には港がある。
さすがは交易都市と言われるだけあって、先ほどから船の鳴る音や物資の運搬などが盛んに行われているのが見えるね。
この宿は良い景色が見えるように海の近くに建設されているから、港の様子がよく確認できた。
港の端の方には人工的に切り出されたビーチなんかも見える。
ビーチ面積は港全体の半分もないくらいだけど、多分実際に行ってみたら結構広いような気もするね。
「よし! それじゃあ、ひとまず海の方へ行ってみようか! 交易都市であるラグリージュの中心地を見学しに行こう!」
「わかった! ナターリャ、港は初めて見るから楽しみ!」
「わいもあんなぎょうさんの船は見たことないですわ!」
「ぷるん!」
どうやら、皆もわたしの提案に賛成みたいだ。
まあ意見に賛同してくれるのは嬉しいけど、一応確認はしておく。
「皆、別に今日は自由に行動してもいいんだよ? 無理にわたしに着いてこなくても大丈夫だからね?」
「ナターリャ、コロネお姉ちゃんと一緒にいたいから大丈夫!」
「そ、そう? わいちゃんとサラは?」
「わいもご主人にお供するで! 何んだかんだご主人の近くにおる方が面白いこと起こりそうな気がするんでな!」
「ぷるーん!」
わいちゃんとサラもわたしの足元で元気よく答えてくれた。
まあこの子たちは従魔だから主人であるわたしに着いてくるのが当然なのかもしれないけど……途中でわいちゃんとサラが興味を示した場所があったらそこに連れていってあげよう。
今回はせっかくのラグリージュ旅なのだ。
旅は皆が楽しまないと意味がないからね!
何はともあれ、今から向かう場所は決まった。
早速出発しようかと思ったところで、地面ではしゃいでいるサラとわいちゃんの姿が目に入る。
このまま歩いていくこともできるけど、従魔たちはわたしの体に乗って行った方が楽だよね。
わたしはまず近くにいたサラに話しかけた。
「サラ、よかったらわたしの服の中に潜り込んでもいいよ」
「ぷる? ぷるーん!」
サラは一瞬だけ不思議そうに揺れたけど、すぐにわたしの意図を察してするりとジャージ服の隙間にスライムボディを滑り込ませてきた。
ちなみに、ジャージ服とはいえわたしの新スキル『クローゼット』のおかげで異世界冒険者風のファッションになっている。
ここラグリージュに来てから見知らぬ通行人の人の視線を集めることがなくなったから、きっとこの衣服なら異世界にも適応できているだろう!
すると、突然ナターリャちゃんがしゃがみ、地面に立つわいちゃんの体を持ち上げた。
「じゃあ、わいちゃんはナターリャが抱っこしてあげるね!」
「ほ、ほんまでっか!? おおきに!」
わいちゃんはナターリャちゃんに抱っこされて嬉しそうに羽をぱたぱたとはばたかせた。
よし、これで各々準備は整ったね!
「それじゃあ行こうか。ラグリージュの海に!」
「うん! 出発だぁー!」
「綺麗な海楽しみやでぇ!」
「ぷるるーん!!」
わたしの掛け声に合わせた皆の大きな声は、すぐにラグリージュの喧騒に飲み込まれた。
ベルオウンだったら少し注目を集めてしまったかもしれないけど、ラグリージュはそれほどでもない。
それだけ盛んに活動をしているラグリージュという街の探索にドキドキしながら、わたしたちは港へ向かって歩きだしていった。
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