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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第130話 プロの営業トークを体験しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むログハウスまで向かい、玄関前の階段を上がって、扉に手をかける。
とはいえ、扉はすでに半開きの状態だった。
さっきフランちゃんとナターリャちゃんがテンション高めにログハウス内に突撃していったから、ちゃんと扉を閉め切れていなかったのだろう。
現に、ログハウスの内部からは二人のはしゃいでいる声が小さく聞こえてくる。
わたしは二人がログハウスでぴょんぴょんと跳び跳ねている姿を想像しながら、扉に手をかけ、スゥーっと開いた。
そしてログハウスの中に入ると、いきなり広大な木造リビングが飛び込んできた。
「うっわぁぁ~~! すっごい広い!!」
目の前に広がる木造空間に驚嘆する。
外から見ているよりも、かなり奥行きがあって広い!
向かって右手には、アイランドキッチンや大きなテーブル、椅子なども備え付けられていた。
サラはログハウスという家だけじゃなく、一部の家具まで木材で作ってくれていたようだ。
さすがはサラだね!!
「こ、これは本当に広いですねぇ! 私、こんなログハウスにお泊まりするの初めてですぅ!」
「すっごい家やな、ここ! 床なんかに使われてる材木もキレイに加工されてて、ホンマに新築のログハウスみたいや!」
皆もログハウスの広さと豪華さに驚いているみたいだ。
わたしもこんなログハウスに入るのは初めてだから、テンションが上がる気持ちはめちゃくちゃわかる。
ただ、しいて足りない部分をあげるとするなら――
「でも、ちょっとだけ暗いね。まあ、材木だけで作ったからランプとかがないのは仕方ないか」
「ぷるぅん……」
「ああいや、別に責めているわけじゃないよ! 勘違いさせちゃってごめんね! こんなに素敵なお家を作ってくれただけで、めっちゃくちゃ嬉しいからさ!!」
「……ぷるん!」
サラは元気を取り戻して応えてくれた。
危ない危ない。
サラに文句を言っていると誤解されるところだったよ。
わたしがサラに弁明をしていると、隣で聞いていたドルートさんが名乗りをあげた。
「ふむ、それではコロネさん。私が持ってきている家具やインテリアを設置されてはどうでしょうか?」
「え? ドルートさんはそんなものを持ってるの?」
「我が〈アイゼンハワー商会〉は日用品や家具、インテリアなども取り扱っておりましてね。そういったジャンルの魔道具なども幅広く仕入れております。しかし実際に商品を試してみなければ良し悪しも分かりません。それゆえ、私でも自ら道具の使用感を確かめるため、一部の物品を持ち歩いているのです。ランプなどの生活必需品は色々な種類のものをアイテム袋に保管しております」
ドルートさんは懐からごそごそとアイテム袋を取り出した。
「コロネさんが仰られたようにランプなどの明かりが無く、照明を月明かりに頼ってしまっているため若干室内が暗くなってしまっています。しかしそれだけではなく、見たところアイランドキッチンには火を起こしたり、水を出したりするキッチン用品の魔道具もないようです。これではせっかく料理がしやすい環境であっても、その腕を振るうことができません」
「た、たしかに言われてみればそうだね」
日本だとキッチンにガスと水道が完備されているのは当たり前だから無意識にスルーしていたよ。
異世界ではガスや水道が完全に通っているところはほとんどないから、代わりに魔力を通して使用する魔道具が普及しているんだね。
ドルートさんはアイテム袋を手にしながら、リビングにあるテーブルに移動した。
多分このアイテム袋の中からランプや魔道具を出してくれるんだろうけど、わたしは少し申し訳なくなる。
「でも、ランプを貰うなんてちょっと悪いよ。この家の広さ的に、一個や二個でこと足りるとは思えないし」
「いえ、私たちも寝泊まりさせていただくのですから、これくらいはさせてください。今アイテム袋から手頃なランプを探しますので、少々お待ちを…………と、ありました。まずはこちらなどいかがでしょうか?」
ドルートさんは手持ちのアイテム袋に手を突っ込んでゴソゴソと目当ての物品を探すと、中から一つのランプを取り出した。
それは見るからに電球のような形をしていて、ピカーとオレンジ色の淡い光を放っている。
「似たような商品として、このような卓上ランプもございます」
ドルートさんは続けて一つのランプをテーブルに置いた。
そのランプは台形のかさのようなものがついていて、ほんやりと淡い光を放っている。
そこそこの大きさだから光が漏れる範囲は広いけど、さすがにリビングの暗さをまかなえるほどとは思えない。
「でも、この大きさだと玄関とか、それぞれの部屋の中とかでしか使えないかな。リビングのキッチンやテーブルの真ん中に卓上ランプを置いたら少しは明るくなるかもしれないけど……なんか雰囲気的に違うような気もするし」
「ふふふ、その言葉を待っておりました。ご安心くださいコロネさん。ちゃんとリビングや広間で使用できるランプもございます。少し大きいのですが……おお、あっあ。こちらの商品などいかがでしょうか?」
「えっ、ランプだけなのにまだあるの? てか、リビングで使えるくらい大きなランプなんて持ち歩いてても使う機会ないでしょ!?」
「それは分かりませんよコロネさん。現に、あまり使う機会がない大型ランプも今はこうしてコロネさんのお役に立とうとしておりますからな。ささっ、次はこちらのランプなのですが――――」
ドルートさんは意気揚々とアイテム袋から商品を取り出し、使用法や利点などをつらつらと詳しく説明してくれる。
それはまるで熟練のセールスマンを彷彿とさせる話術で、みんなドルートさんのセールストークに釘付けになってしまった。
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