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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第127話 サラの行動に驚いちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む馬車の窓から暗くなった外の景色が見える。
エミリーの実家が〈グリーン商会〉を営んでいる商人だということが判明し、そのことで色々と話し合っているとかなり時間が経ってしまったいた。
なにせ、やっぱりドルートさんは巨大な商会のトップということだけあってとても物知りだったからね。
お昼休憩で一度馬車を停めて休んでいた時はドルートさんが持ってきていたサンドイッチなんかのランチをご馳走してくれた。
その後も馬の休憩がてら何回か馬車を停車させながらここまで来たけど、辺りはすっかり夜になっている。
ここまでの道中は盗賊をぶっ飛ばしたこと以外は、魔物が現れることもなくいたって平和だった。
もうちょっと魔物が襲ってきたりするかとも思っていたんだけどね。
思ったよりも平和な道のりに拍子抜けしていると、御者台からライツさんが顔を覗かせる。
「皆さん、もう暗くなってしまいましたので、本日はこの辺りで休みましょう」
「わかったよ。ありがとうライツさん」
わたしがライツさんにお礼を言うと、ドルートさんが一言こぼす。
「では、今日はここで寝泊まりするということですな」
たしかに、今日はこの辺りで休むということは、ここで一夜を過ごすということか。
てことは、みんな野宿するってこと?
いや、馬車が広いから馬車の中で寝られないこともなさそうなんだけど……やばいな。
ラグリージュまでは一日半くらいかかると言われていたけど、夜寝るときのことはすっぽり頭から抜け落ちていた。
これ、仮に馬車の中で寝るとしても、寝袋くらいいるよね。
さすがに布団や毛布もなしに固い床では寝れなさそうだし……。
「そう言えば、こういう時って皆どうするものなの? やっぱり寝袋とかで野宿するのかな?」
「安物の馬車であったり、乗り合い馬車などでは外でテントを張って野宿をする者もおりますな。しかし、これほどご立派な馬車であれば、外で寝る必要はないでしょう」
「ああ、やっぱりそういう感じだよね……。いやぁ、どうしよっかな。わたし寝袋とか持ってないんだよね」
これはしくじったね。
てか寝袋だけじゃなくて、その他のお泊まりグッズは何も持っていない。
まあ、お風呂とか歯磨きとか着替えとかはクリーンの魔法があるからどうにかなるかな。
あと、馬車で寝るっていっても少し窮屈そうな感じがするんだよね。
たしかにこの馬車は広いから体が平均よりもちょっぴり大きいわたしが寝そべっても十分に全員寝ることかできそうではあるけど、あんまり贅沢にスペースを使うことはできないだろう。
いわゆる雑魚寝状態になる。
そうなると、やっぱり少し窮屈感があるよね。
うーん、これはどうしたものか……。
「ぷるん!」
わたしがうんうんと悩んでいると、膝の上に乗っていたサラが不意にジャンプして飛び上がった。
そして、わたしの真後ろにあった馬車の窓にぺたっと貼りつき、じーっと外の景色を見ている。
「サラ? どうかしたの?」
「ぷるーん」
サラの行動を不思議に思ったわたしは、サラの後ろから窓を眺めてみる。
窓の外に広がるのは、月明かりにぼんやりと照らされた草原。
近くには鬱蒼と生い茂る森もある。
この森は……もしかしたら《魔の大森林》の一部なのかな?
もしあの森が《魔の大森林》だとしたら、夜中に魔物が出てくるかもしれないからしっかりとバリアを張らないといけないね。
窓から見える景色では若干あの森が気になるけど、特に変わったものはなかった。
だけど、サラはじーっと窓に貼りついて景色を眺めている。
「ぷるん!」
「えっ、サラどうしたの?」
「ぷるるーん!」
「ちょ、サラ!?」
サラは自信ありげに何かを訴えると、スライムボディを器用に使って窓のカギを開けた。
そして、そのままガチャリと窓を開き、サラは外に飛び出してしまった。
「サラちゃん、どうしたの?」
「わ、わかんない。ごめん、ちょっとサラを追いかけてくるよ! すぐ戻ってくるから、皆は自由にしてて!」
「コ、コロネ様!?」
ナターリャちゃんが困惑した様子で聞いてくるけど、わたしにもサラの意図が正確に読めないので何とも答えようがない。
だからとりあえずサラの後を追いかけようと、わたしも馬車を飛び出した。
馬車の扉を開いて外に出ると、夜風がふわっと吹き抜ける。
夜だからか、昼間とは違って風がちょっとひんやりしていた。
「サラー! どこ行ったのー!」
「ぷるーん!」
サラの名前を呼び掛けると、サラの声が聞こえてきた。
声量からして、そんなに遠くには行っていない。
返事が聞こえてた方角を見てみると、そこには森が広がっていた。
「サラー、何してるのー!」
わたしがサラがいる方へ走っていくと、サラは森の入口付近で一心不乱にぴょんぴょん飛び跳ねていた。
何をしてるのかと思って近づいてみると、どうやらサラは巨大化して森の木を吸収していた。
突然どうしたのかな?
わたしが不思議に思っていると、サラはしゅぅぅぅと元の手のひらサイズに戻った。
そしてそのまま、草原の一角に跳ねていった。
「ぷるるぅぅぅうううううん!!」
すると、サラは再び巨大化して、ぷるぷると震えだした。
その直後、草原に一つの巨大な建造物が現れる。
それを見たわたしは、あまりの驚きに叫びをあげた。
「こ、これは――――ログハウス!!?」
わたしの目の前に現れたのは木材で建築された立派なお家――ログハウスだった!
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