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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第124話 ドルートさん一家を案内しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むちょっとした好奇心から、馬車の強化のために魔力を注いでみたわたし。
どんな感じになるのかも思っていたら、いきなり馬車が強烈に発光しだした。
わたしが馬車の扉から手を離して魔力供給をストップしたことで光は収まったけど、新たに現れた馬車はさっきまでとは雰囲気が変わっていた。
ずっしりと重厚感があり、もはや馬車の材質から強化されているのではないかと思ってしまうほどだ。
わたしの思いつきによる行動が、一台の馬車をこうも変貌させてしまうなんて……。
突然なにをしてるんだ! って怒られるかと思ったけど、ドルートさんは感激したように馬車に見入っていた。
「あ、あのー、これはわざとじゃ――」
「こ、これは何と素晴らしい……!」
ドルートさんは目を見開きながら馬車に近づき、車輪や土台の骨格をスゥーっと手でなぞる。
手触りで材質を確かめると、今度は車輪にぐっと顔を近づけ、至近距離で凝視した。
その姿は、まるで売りに出された馬車を鑑定する職人のようだ。
そう言えば、ドルートさんは〈アイゼンハワー商会〉という商会を経営している商人だから、こういう物品の鑑定なんかは手慣れているのかもしれない。
それにしても、シュバババ! と高速で馬車を確認していくドルートさんに、わたしは置いてけぼりを食らってしまっている。
「あのぉ、ドルートさん? やっぱり馬車がどっか変だったのかな……」
「ハッ、これは失礼しました。これほどの逸品を見たのは久しぶりでしてね! いやはや、商人としての血が騒いでしまいましたよ!」
「逸品? この馬車、そんなに進化したの?」
「それはもう! この馬車がまとうバリアは魔力式の馬車の中でも間違いなく最高クラスですよ!!」
ドルートさんは興奮した様子で答える。
なんか、いきなりテンション上がり過ぎじゃない?
奥さんであるリベッカさんや娘のフランちゃんの方を見てみると、また始まったか……、みたいな残念な表情でドルートさんを見ていた。
「そ、そっか。喜んでもらえたなら何より? なのかな」
「ええ、それはもう! この馬車は供給した魔力効率を高めるためにミスリル素材が融合されておりましてね。恐らく、そのミスリルがコロネさんの魔力に過剰反応し、これほど立派な馬車へと進化したのでしょう! 先ほどの眩い光も同じ原因かと」
なるほど、この馬車はミスリル素材でできているのか。
ミスリルといえば異世界モノの定番素材だけど、わたしはまだこの世界で見たことがないな。
でも、これがミスリル製の馬車なんだったら、やっぱりミスリル鉱石みたいなのがあるってことだ。
どこかで見る機会があればどんなもんかちょっと気になるね。
わたしがミスリルに対して想像を膨らませていると、ドルートさんは立派な馬車を見上げながら口を開いた。
「しかし、これならば万に一つも盗賊たちが逃亡できる可能性はないでしょう。仮にここまでのバリアを破壊できる魔法があったとしたら、バリアの前に自らの身が持ちませんから。もっとも、これほど頑丈な馬車になるならば私たちが乗りたいくらいでしたがね」
ドルートさんはコンコンと馬車を叩きながら、快活に笑う。
予想外の強化を遂げてしまったけれど、たしかにこれだけ頑丈なバリアが張られていれば中からも外からも互いに干渉することはできないだろう。
これなら安心して盗賊たちをしょっぴいていけるね!
これにて盗賊問題は解決だ!
ドルートさんが、御者の男の人に向き直る。
「では、馬車は頼んだぞ」
「はい! コロネさんの馬車の後を追う形で走らせていただきます!」
ドルートさんに指示された御者さんはテキパキと出発の準備を整え、御者台に座った。
わたしが魔力で強化したばかりの馬車だからか、心なしか御者さんも自信ありげに見える。
「それじゃあ、ドルートさんたちはわたしが乗ってる馬車に案内するよ。あ、馬車にはわたしの友達が乗ってるんだけど、いいかな?」
「全くもって問題ございません。お邪魔をさせていただくのは私達ですからね。しかし、コロネさんのご友人とあれば色々とお話などさせていただきたいものですが」
「私もお気になさらず。コロネさん方の邪魔にならないようにいたします」
「フランもいい子にしてるよー!」
一応わたしの友達が馬車に乗っていることを伝えたけど、ドルートさん一家は好意的に受け入れてくれているみたいだ。
そうしてわたしは自分の馬車が停めてある場所までドルートさんたちを引き連れて、高原を上っていった。
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