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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
〈ダルガス視点〉 『コロネ』という存在を認知する、悪徳ギルマス
しおりを挟むギルド職員に調べさせてから数十分が経過。
その結果、デモールが言っていたデブの女冒険者の名はコロネということが判明した。
顔が分からないのがネックだが、名前と所属ギルドが分かっただけでも御の字だ。
あとはレスターのギルド周辺を練り歩き、該当する特徴を持った奴を探し出せばいい。
主な特徴としては、女で、デブで、変わった赤いデザインの服を着ていること。
この三つが揃う人間など、コロネという冒険者しか該当しないだろう。
たまたま同じ特徴の別人と間違えることはない。
「街の門にコロネらしき冒険者が通ったという報告はない。となれば、まだ街の外にいるか……あるいはすでにベルオウンに帰還しているか」
俺は可能な限り迅速に街の門に監視の警備を送ったが、それでもやはり時間はかかっている。
ゴブリンロードを単独撃破するほどの熟練の冒険者ならば、もう街に帰ってきている可能性も否定できない。
だが、それでも問題はない。
コロネとやらがレスターの冒険者ギルドに所属していることは把握している。
たとえ街に帰ってきていようと、必ず冒険者ギルドには立ち寄るはずだ。
なにせ、ゴブリンロードが出現したとなればレスターもその情報をコロネから聞き出さなければならないからな。
だから俺はレスターの冒険者ギルド周辺を練り歩いてコロネらしき人間を探し続けているのだが、一向にそれらしき人物は見当たらない。
「……ん? アレは……」
俺の前から、四人の人間が歩いてくる。
格好からして冒険者だろう。
遠くからだが、あの冒険者は〈獅獣の剛斧〉ではあまり見ない顔ぶれだ。
〈獅獣の剛斧〉以外のギルドで活動しているのならば、コロネという冒険者について何か知っているかもしれない。
「お前たち――――コロネという冒険者を知っているか?」
俺はこいつらの目の前に立ちはだかって進行を阻んだ。
すると、一人の男が前に出てくる。
「コロネになんの用だ」
たしかコイツは、レスターの冒険者ギルドに所属している……デリックとかいう奴だったか。
近くで顔を見たら名前を思い出した。
前からコイツらのパーティは何かと俺に反抗的な態度を取っているし、何よりあのアルバートと懇意にしている冒険者パーティだからな。
だが、コイツがデリックなら所属ギルドはレスターの所で間違いない。
それにギルド職員に調べさせた限りでは、コロネとやらはデリックのパーティと一緒にいるという情報も入っている。
コイツからコロネの居場所を聞き出せればそれで解決だ。
俺はデリックの質問は無視して、早くコロネの居場所を吐くよう催促する。
と、今度はもう一人の女冒険者が歯向かってきた。
「なぜそんなことをお前に言わなければならない。コロネ殿に何の用なんだ」
コイツ……たしかレイラとかいう冒険者だったな。
話の分からん馬鹿共め!
俺は、お前の質問に答える必要はない、と切り捨てると、レイラは挑発的な声色で言い返してきた。
「そうか。ならば私もコロネ殿の居場所をお前に教える必要はないな。話が終わりなら、早くそこを退いてほしいのだが」
この女……さっきから生意気な……!
さっさとコロネの居場所を吐けば俺とてこんな無駄な時間を浪費せずに済むのだ!
しかも、先ほどから俺のことを『お前』などと呼びよって……!
アルバートの庇護がなければレスターの冒険者ギルドごとコイツらも潰してやる!!
……だが、今ここでコイツらに怒りを向けても意味はない。
むしろ、ますます口を閉ざすだけになるだろう。
だからここは務めて冷静に、この街トップの〈獅獣の剛斧〉のギルドマスターとして接することにしよう。
俺はコロネに感謝の意を示したい旨を伝えた。
そしてコイツらの意表を突くために、あえてゴブリンロードの存在も明言する。
ギルドに帰還してきた〈獅獣の剛斧〉の冒険者からの情報では、デリックとレイラの二人がコロネを追って《魔の大森林》に向かうという話を聞いたらしいからな。
それで《魔の大森林》までたどり着いたのであれば、ゴブリンロードの件は知っている可能性が高い。
案の定、反応があった。
レイラは頑張ってポーカーフェイスを貫いているが、一瞬、動揺したのを俺は見逃さない。
そうしていくらか会話を重ねたが、レイラはきっぱりと答えた。
「だが、生憎だ。私たちはコロネ殿の居場所は知らない」
この女……まだシラを切るつもりか。
何でも、デリックとレイラの二人で《魔の大森林》に向かったが、そこには誰もいなかったそうだ。
白々しい嘘を吐きよって!
俺はコロネという冒険者の最低限の特徴はすでに知っていることを明かす。
女であること、デブであること、そして奇妙な赤い服装をしていること。
それを話している内に、俺は一番端で目立たないように体を潜めている女に目がいった。
「……むっ? お前のその服……」
なぜならその女は、見たことがない赤い衣服を身にまとっていたからだ。
コイツの服……一応コロネという冒険者の情報に当てはまる。
しかしこの女の名前は知らない。
「お前、その服はなんだ」
「は、はい? わたし、ですか?」
「そうだ、さっさと答えろ。その服はなんだ。この街ではあまり見かけない服装だが?」
俺が問いただすと、女は落ち着かない様子でもごもごと答える。
「え、えーっと、これは……そう! 故郷の民族衣装? 的な……」
「民族衣装だと? どこの出身だ」
「えっとー、ヤマト国の近く? みたいな……。あ、でもかなり辺鄙な場所にある村なんで、地図とかには載ってないかもですねぇ~……」
「……そうか。ヤマト国は島国ゆえ、我が国では馴染みのない服装をしているのも頷けるが……。それで、お前は冒険者なのか」
「は、はぁい……まあ、冒険者っちゃ冒険者? みたいなぁ……」
どっちつかずの不自然な笑みを浮かべながら女は答えた。
コイツ……何か怪しいな。
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