ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

文字の大きさ
上 下
113 / 265
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

〈ダルガス視点〉 謎の冒険者に激怒する、悪徳ギルマス

しおりを挟む

 俺は急いでギルマスの執務室に向かい、荒々しく扉を開いた。

「デモール! いるか!!」
「どうした? そんなに血相を変えて」

 デモールはソファでくつろぎながら、読んでいた本から目を離さずに答える。
 傲岸不遜な態度だが、今はそんなことはどうでもいい。
 何よりもまず、確かめなければならないことがある。

「ゴブリンロードが倒されたというのは本当か!?」
「ああ、それか。うん、本当なんじゃない? さっき、ゴブリンロードの魔石に仕込んでいた俺の魔力の繋がりが途絶えたからね。恐らく、魔石が破壊されたんだろう」

 ゴブリンロードが倒されたのは本当だと……!?

 驚愕の事実を平然と答えるデモールに、さらに怒りを募らせる。
 俺は鬱憤を晴らすようにドンッ! と壁を殴った。

「クソッ! どうなっているのだ! あのゴブリンロードがこうも易々と打ち倒されるなど……!」
「ハハハ、随分と慌ててるじゃないか。さっきまでの余裕はどうした?」

 小馬鹿にしたように笑うデモールに詰め寄って怒りをぶちまける。

「ゴブリンロードが倒されたのだぞ! しかもたった一人の冒険者にだ!! ……まさかお前、俺を騙して偽のゴブリンロードを復活させたのではあるまいな!!」
「そんなことはしないさ。悪魔は人間の嘘が好物だが、契約者に嘘はつかない。俺がお前の生命力を代償として復活させたのは、間違いなくかつて《魔の大森林》を支配していたゴブリンロードだ」
「ならばなぜゴブリンロードは倒されたのだ! たかが一介の冒険者が戦って倒せる相手ではない! まして一人でなど、俺でも不可能だぞ!!」
「そう言われてもなぁ。倒されちゃったもんは仕方ないし。まあ一旦落ち着いて、お茶でも飲んだら?」
「そんな場合ではないわ! ゴブリンロードがいなければ俺の計画が台無しになる! ゴブリンロードを復活させたのはお前なんだから、お前がどうにかしろ!!」
「いやいや、勘弁してくれよ。ちゃんと君との契約は遵守したじゃないか。今回は予期せぬイレギュラーが起こったけど、俺の行動に不備はなかったよ」

 本に目を通しながらつらつらと語るデモールに、俺の怒りがさらに高まる。
 だが一方で、デモールが言っていることも理解はできていた。
 恐らくデモールが言う通り、これは本当にイレギュラーが発生しているのだろう。
 こんな短時間でゴブリンロードが倒されるなどとは誰も思わない。
 それこそ、俺のようにデモールと契約してゴブリンロードを復活させ、いつでも好きなタイミングで殺せるような不正でもしなければ、正面から戦ってかなう相手ではないのだ!

 あっけらかんとした様子のデモールは依然として腹立たしいが、このままコイツに当たっていても何も進展はない。
 そう思いこれ以上の怒りを抑えていると、デモールが不意に読んでいた本を閉じた。
 そして、これまた先ほどと同じトーンで答えた。

「だが、ゴブリンロードを倒した人間は特定した」

 その言葉に、俺は目を見開く。

「なにっ!? そんなことができるのか!?」
「ああ。ゴブリンロードの魔石には、念のため監視用に俺の魔力をある程度混ぜていたからな。魔石と俺の視界をリンクさせることができるのさ」
「そんなこともできたのか……いや、それよりも誰なのだ! ゴブリンロードを倒した奴は!」
「冒険者……かは知らないが、女だな。それもかなり太っている」
「太った女だと!? ふざけているのか!」
「いいや、大真面目さ。太った女だが、かなり強い。ゴブリンロードの破壊光線を直で受けても平然とバリア魔法で防いでいる。ハハハ、あの破壊光線は小さな町なら一撃で破壊し尽くすくらい強力なはずなんだがなぁ」
「笑い事ではないわ! そんなデブ女にゴブリンロードが倒されたというのか!」

 あり得ない!
 そんな女冒険者がいるものか!

 冷静に考えてみたが、デブ女の冒険者など俺は知らない。
 そもそも冒険者にデブな奴はいない。
 余分な脂肪がついていればそれだけ動きが遅くなり、自分が不利になってしまう。
 唯一考えられるとしたら盾役の冒険者か。
 盾役は魔物の攻撃を最前線で受け続けるため筋骨隆々の冒険者は少なくない。
 だが、デモールの話ではデブ女はゴブリンロードの破壊光線をバリア魔法で防いだと言っていた。
 基本的にバリア魔法は盾役の冒険者では使うことはできず、魔法職の冒険者ですら扱える者は多くない。
 ……一体、なにが起こっているのだ!

「他にその女の特徴はないのか!」
「特徴か……そうだな。赤い服を身にまとっている。この街じゃあまり見たことがないデザインの服だ」
「見たことがないデザインの赤い服……他所の街から来た冒険者か? いや、あるいは他国からやって来た可能性もあるか」

 考えてみるが、やはりそんな冒険者に心当たりがない。
 ゴブリンロードを倒せるほどの実力を有しているなら、《魔の大森林》の魔物はほぼ全て単独で撃破できるはずだ。
 クエスト依頼にも困らないだろう。
 しかし、それほど突出した活躍をしている冒険者であれば、例えライバルであるレスターの冒険者ギルド所属であろうと必ず俺の耳に入ってくる。
 そうして、俺はこれまでにも目ぼしい冒険者は全員〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉に勧誘して引き抜いてきたのだ。

 となれば、その女冒険者は最近ベルオウンにやって来た人間か?
 ベルオウンでのクエスト達成がほとんどないと仮定するなら、そう考えるしかない。
 だが、それほど実力がある冒険者がベルオウンにやって来たという情報などどこにもなかったはず……。

 ……いや、待て。
 そう言えば、この前ギルドの酒場でウチの冒険者パーティが何か愚痴っていた。
 レスターが運営しているギルドに冷やかしに行ったら、謎のデブ女にやられたとか何とか……。

「ま、まさか――!?」
「どうかしたかい?」
「こ、こうしてはおれん! 早急に奴の居場所を突き止めねば!」

 俺は執務室を飛び出し、廊下を走る。
 すると、ちょうど奥の廊下から書類の束を持ちながらこちらへ歩いてくるギルド職員が現れた。
 ちょうどいい、コイツに頼むか。

「おい! そこのお前!」
「はい? 何でしょうか」
「最近ベルオウンにやって来たデブの女冒険者を知っているか!?」
「……? いえ、知りませんが」
「そいつについて早急に調べろ。レスターのギルドで活動している可能性がある。名前が分かったら、すぐに俺に報告してこい!」
「は、はあ」
「それと、今から街の門へ警備を回せ! その門を赤い服を来たデブの女が通ったら〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉まで連れてこい! 分かったな!!」
「し、承知いたしました!」

 ギルド職員は数多の書類を抱えながら、小走りで去っていく。
 その後ろ姿を見送りながら、俺は盛大な舌打ちをした。

「クソが……! よくも俺の狂乱化計画を台無しにしてくれよって! どこのどいつかは知らんが、絶対に許さんぞデブ女ァ!」

 ゴブリンロードを復活させるための対価として、俺は自らの生命力の一部を差し出しているのだ!
 それだけ本気で考案した計画を簡単に潰しおって……!
 この借りは必ず返してもらう!
 必ず名前と居場所を突き止めて〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉に移籍させ、利用し尽くしてやるぞ!!




しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

処理中です...