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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第108話  打ち上げを楽しんじゃう、ぽっちゃり

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 あれから、アルバートさんの尋問もとい聞き取り調査が完了するまで小一時間ほど続いた後、ようやくわたしたちは解放された。
 それからしばらくはお腹を満たすためにギルドで余っていた料理を食べまくっていたんだけど、今は皆でギルドの大広間へ集まっていた。
 なぜ大広間にいるのかというと――

「いやぁ、こんな広い場所で打ち上げなんて初めてだよ! 何だかワクワクしちゃうね!」
「コロネお姉ちゃん、たくさんご飯食べたから楽しそう!」
「わいもこんな賑やかな場は初めてや!」
「ぷるーん!」

 今からいよいよゴブリンロード打倒を祝した打ち上げが始まろうとしているのだ!
 その打ち上げに参加しているのは、わたしとそのパーティメンバー、冒険者仲間のデリックとレイラに、貴族のオリビアとメイドのエミリー、そしてクレアさんを初めとする冒険者ギルド職員の面々という感じだ。
 全部で十数名ほどしかいないけど、皆いい感じに盛り上がっている。

 すると、小さなグラスを手にしたオリビアがわたしの方へ歩いてきた。

「ではコロネさん。打ち上げを始めるにあたり、一言お願いいたします」
「え、わたし?」
「もちろんです! 狂乱化現象を解決した立役者なんですから、打ち上げの主役はコロネさんですよ!」

 オリビアにも背中を押され、わたしはギルド内の目立つ場所に立たされる。
 すると、皆がわたしの所に集まってきた。

 いや、いきなり一言とか言われても何言ったらいいの!?
 わたしこんな場で皆の前に立って何か言ったことなんかないよ!?

 だけど、打ち上げの主役になんてものに抜擢されてしまったわたしは今さら断ることもできない。
 なので、何とか即興でそれっぽいセリフを考える。

「え、えーっと、みんな、今回はお疲れさま! 外は色々と騒がしいけど、わたしたちは一足先に打ち上げを楽しんじゃおう! それじゃあ、ゴブリンロード討伐を祝して――かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」

 わたしの掛け声と同時に、皆がそれぞれ手にしていたグラスで乾杯してグビグビと飲み始めた。
 わたしもギルドのドリンクにあった果実ジュースのグラスを手に取り、ゴクゴクと飲み干した。
 うん、甘くて美味しい!

「それにしても、わたしたちはこうして打ち上げを楽しんでるけど、街の外は大丈夫かな?」
「先ほどウチの騎士に聞きましたが、コロネさんがゴブリンロードを倒して以降、魔物は一体も現れていないそうですよ」
「そっか。やっぱり狂乱化の原因はゴブリンロードで間違いなかったみたいだね」

 オリビアと話していると、その会話を聞きつけたデリックとレイラが入ってきた。

「ちなみに、〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者たちはまだ《魔の大森林》の警戒任務に当たらされてるらしいぜ! 一応の警戒任務だとさ!」
「へぇ、そうなんだ!」

 窓から外を見てみれば、もう外は暗くなっている。
 こんな夜中まで仕事に駆り出されているとは、しんどそうだけど冒険者冥利につきるのかな?

 ま、なにはともあれ夜間の警戒任務は〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者に任せればいっか。
 すでに狂乱化現象が沈静化したであろうことを知っているわたしたちは、一足先に打ち上げパーティーで楽しむことしよう。

「それにしても、ゴブリンロードをわたしが倒したことダルガスはもう皆に言いふらしてるのかと思ったけど、そうでもないんだ?」
「私が先ほど軽く見に行った限りでは、コロネ殿の存在が冒険者の間に広まっているような感じはなかったな」

 わたしの疑問にレイラが答えてくれる。
 話を聞く限りだと今のところわたしの存在はバレていなさそうだ。

 ひとまずホッと安心していると、デリックが唐揚げをつまみながら思い出したように口を開く。

「そういや、アルバート様は打ち上げに参加しなかったんだな」 
「お父様は色々と調整するために仕事が山積みみたいで、打ち上げには参加する時間はないそうです。私もお手伝いをしようと思ったのですが、気にせずコロネたちとパーティーを楽しんでこい、と突き放されてしまいまして……」
「ははは、やっぱりオリビアはまだ子供だから、変に仕事ばっかりさせずに友達と遊ばせてくれたんじゃないかな」
「むぅ……私、子供じゃありません!」
「ナターリャ、オリビアお姉ちゃんと一緒にパーティーできて嬉しいよ!」

 子供扱いされてほっぺを膨らませるオリビアに、ナターリャちゃんが抱きついてなだめる。

 ちなみにここにはギルマスであるレスターさんもいない。
 もしかすると、アルバートさんと二人で夜のベルオウンを駆け回ってたりするのかもしれないね。
 まあ難しいことは大人の方々に任せておこう。

 わたしもテーブルに合ったフライドチキンをむしゃむしゃと食べていると、ナターリャちゃんの姿を見たデリックが反応した。

「そういや、ナターリャちゃんだったか? 俺たちの知り合いの冒険者がピンチになると必ずどこかから弓矢が飛んできて助かったって言ってたんだが、その弓を射ってたんだろ?」
「えっ、ナターリャのこと知ってるの?」
「ああ、相当な弓の腕前だってな」
「い、いや、ナターリャそんなにすごくないよぉ」

 ナターリャちゃんは照れくさそうに手を振った。
 どうやらナターリャちゃんもわたしがゴブリンロードと戦っている間に街の防衛の一助になってくれていたみたいだ。
 ナターリャちゃんは弓の腕がすごいから、そのスキルを活かして遠距離から魔物を狙撃してくれたんだろう。
 それで、魔物に襲われてピンチになっている冒険者を何人か助けたみたいだ。
 さすがナターリャちゃんだね!

「よく頑張ったね、ナターリャちゃん!」
「えへへ……ありがとう」

 わたしはナターリャちゃんの頭をなでて褒めると、照れくさそうにそうに、はにかんで笑った。
 そんなナターリャちゃんの表情も、とっても可愛いと思うのだった。



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