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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第104話  話の前に食べまくっちゃう、ぽっちゃり

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 クレアさんは部屋の扉まで案内してくれると、自分は入室せずに足早にどこかへ行ってしまった。
 一応わたしたちから離れる前に、先にお部屋の中へ入っておいてください、とだけ言ってくれたけど、何か別の仕事でもあったのかな?

 そんなことを思いながら、皆と一緒に部屋へ入ると――――

「――くっ、あっはははははははははっ!」
「……人が部屋に入ってきて早々、失礼じゃない?」

 わたしと目があったアルバートさんが、いきなり豪快に笑いだした。
 まあ、その理由はわかっている。
 どうせわたしの似合わないスリム体型のことだろう。
 だけど、今まで色んな人たちに激痩せしたわたしの姿を驚かれてきたものの、何やかんやこうも真っ直ぐに笑われたのは初めてだ。
 これが悪意があるような笑いだったらワンパン案件なんだけど、アルバートさんにはそんな嫌なものは感じないのでリアクションに困る。

 ひとしきり笑ったアルバートさんは、わたしを宥めるように手を向けた。

「ははは、すまんすまん。いや、悪気はないんだ。レスターの遣いの者がコロネのことを少し話していたんだが、まさかここまで様変わりしているとは予想外でな。くくくっ」
「悪かったね。似合わない体型チェンジを遂げちゃって」
「いやいや、今の姿も良いじゃないか。これを機に、ごく普通の体型になってみたらどうだ?」
「うーん、どうなんだろうね……」

 たしかにこれを機にスリムボディに生まれ変わってみてもいいかもしれないけど、多分わたしはこの体型を維持できないような気がする。
 だって、わたしの日頃のペースでご飯食べてたら、絶対この体型は維持できないだろう。
 それにわたしのチートスキルはぽっちゃりあってのものだから、やっぱりわたしに痩せるという選択肢はないね!

 そう決意を固めていると、皆それぞれ空いている席に座っていった。
 わたしもアルバートさんの正面の椅子に腰を下ろす。

「ふっ、まあいい。それで、今回の狂乱化騒動でコロネが見たものなんだが」
「ちょっと待った。その前に、出す物出してもらおうか?」

 わたしは指でちょいちょいっとテーブルをさした。
 アルバートさんは一瞬だけいぶかるような顔をしたけど、わたしの意図を察したのか小さく笑う。

「……そうだった。レスターから伝言があったんだったか。コロネから報告を受ける際は、ギルドの料理を提供するように、と」
「わたしは腹ペコの状態でここにいるんだからね! 何か食べるものがないと話をするにも気力が沸いてこないよ! だから、なるはやで持ってきて!」

 ご飯を食べるまでテコでも話はしないというオーラを見せつけていると、アルバートさんは後ろに立つエミリーを呼んだ。

「はぁ、仕方ない。エミリー」
「は、はい!」
「すまないが、誰かギルドの者に料理を作るよう言ってきてくれ――」
「いーえ! その必要はありませんよ~!」

 扉がガチャ! と開けられ、外からクレアさんが入ってきた。
 だけど、クレアさんの後ろに何かがある。
 何だろうと思っていると、ふわっといい香りが漂ってきた。
 クレアさんは、大きな配膳カートのようなワゴンを押して部屋に入れてきた。

「ギルマスからコロネさんのことは聞いていたので、事前にたくさんの料理を準備しておきました~!」
「おおおお~!! さすがクレアさん!」

 配膳カートは三段構造になっていて、上段にはフライドチキン、中段には一ポンドくらいあるステーキ、下段には串に刺さった唐揚げがそれぞれ乗せられていた
 料理の種類こそちょっと少ないけど、それを品数でカバーしている。
 どの段もそれぞれ十皿以上はあるし!

「どうぞ、コロネさん! 思う存分、ギルドの料理を召し上がってください!」
「やったー! 待ってましたぁ!!」

 わたしの目の前にフライドチキンやステーキ、唐揚げ串などを次々と置いていってくれるクレアさん。
 これぞ、まさに待ち望んでいた肉料理!!
 胃袋が早く食わせろと暴れだす!!

「こ、これがギルドの料理!! それじゃあ早速、いただきます!!」

 わたしはすかさずフライドチキンをつかみ、豪快にガブリと頬張った。
 じゅわっと溢れ出る肉汁と、カリカリの衣、そして肉の歯ごたえ!
 わたしはカッと目を見開く。

「んんんん~~~!! 美味んまぁぁああああああああ!! 空きっ腹にフライドチキンは効きまくりだよぉ~~~!!!」

 ガツガツとフライドチキンを貪っているとすぐに食べ終えてしまったため、すぐに次のフライドチキンに手を伸ばす。
 だけど、テーブルに置かれている料理はフライドチキンだけではない。

「もぐもぐ、ごくん! ぷはぁ~、フライドチキン最高! こっちのステーキと唐揚げも食べないと!」

 プライドチキンを片手に持ちながらわたしはフォークを握り、熱々のステーキにかぶりついた。
 んんんん! 
 このステーキも美味しい!!
 これは急いで食べまくらねば!

 そうしてあっという間に手にしていたフライドチキンとステーキ一皿を食べたわたしは、唐揚げ串に手を伸ばし、一気に二個の唐揚げを頬張った。
 こっちの唐揚げも美味しいね!
 昔よくコンビニで買って食べていた唐揚げの味に似ている。
 このジャンキーさが最高に食欲をそそるのだ!

「こ、これは……すごいな……」
「コロネさんって、こんなに大食いだったんですね……」

 バクバクと一心不乱に料理を食べまくるわたしに、アルバートさんとクレアさんは呆気に取られたような表情で眺めていた。

 ああ、そう言えばアルバートさんってわたしの食事シーン見るの初めてだっけ?
 わたしの食べっぷりを知っているパーティメンバーや、オリビア、エミリー、デリック、レイラを見てみると、生暖かい視線や微笑みを向けてきてくれていた。
 皆はわたしの食事シーンを知っているから、わたしが食べ物で暴走するのも知っているもんね。

 やっぱり持つべきものは食に理解のある友達だね!
 アルバートさんとクレアさんも、早くわたしの食事シーンに慣れてほしい。
 え、わたしがもう少し上品に食事をしろって?
 胃袋が緊急事態じゃない時はそういう配慮もできるかもしれないけど、お腹が空いている時はムリムリ!
 アルバートさんというこの街の領主で貴族様の前だったとしても、わたしは臆さずいつも通りの爆食を披露するよ!

 そうこうしている内にテーブルに並べられた料理を全て完食してしまっていた。
 あの量……軽く十人前は超えていたと思うんだけど、やっぱ空腹時のわたしには腹一分にも満たないね。

 というわけで、わたしは隣に立っていたクレアさんに空っぽのお皿を突き出した。

「クレアさん、追加の料理おかわり!!」



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