ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第88話  初めての武器を手にしちゃう、ぽっちゃり

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 ゴブリンロードの大剣が頭上から振り下ろされると同時、バリア魔法を展開する。
 大剣がわたしのバリアに直撃した瞬間、衝撃が爆音となって鳴り響く。

「うおっ!? む、ぐぐぐ、これは……!」

 大剣とバリアが接触している箇所から、ベキベキベキベキ……! と嫌な音が鳴る。
 結構な魔力を込めたから、かなり強靭なバリアになっているはずだけど……このままだと突き破られるんじゃないかと思うくらい大剣の威力が凄まじい。

 耐久戦になるとまずそうなので、もう一度距離を取って仕切り直しにしたい。
 だけど、ゴブリンロードの様子を見るにそう簡単に引き離してはくれなさそうなんだよね……。
 ゴブリンロードの凶悪な眼と胸部の巨大な深紅の魔石が禍々しくギラついている。
 まさに殺る気マンマンだ。
 ここから離脱しようと思ったら、どうにかしてゴブリンロードの隙をつかなくてはならない。

 うーん……やったことはないけど、これくらいならできるかな?
 わたしは頭の中でイメージした通りに魔力を練り上げ、ゴブリンロードがよく見えるように手を突き上げた。

「こういう時は目眩ましだ! 光魔法――フラッシュ!!」

 固く目をつむった瞬間、わたしの手から強烈な光が放たれた。
 その光を直視したゴブリンロードは、叫びをあげる。

「ヌゥ!? グ、グァァアアアアア!!」

 お、大剣の威力が弱まった!
 逃げるなら今のうちだ!

 予想通りゴブリンロードの隙をつくことに成功したわたしは、素早く後ろに飛んで十分な距離を取る。
 数十メートルほど離れてゴブリンロードの様子をうかがいながら、心を落ち着けるように息を吐く。

 今のうちに強力な魔法でも撃ち込んでやろうかと思ったけど、さすがにゴブリンロードもそこまで馬鹿じゃないのか、自身の周囲にバリアを展開していた。
 ただ、目を押さえて悶えているからフラッシュの効果は十分にあったみたいだ。
 まあ、ゴブリンロードほど知能があれば次からはフラッシュも警戒されるだろうから、奇襲として使えるのは今回だけだろうけどね。

「くそぅ……わたしにも何か武器があればなぁ」

 大剣を自在に振り回してくるゴブリンロードの戦いぶりを見て、思わず愚痴がこぼれた。
 わたしのメインは魔法だけど、何かしらの武器があればもう少し違う戦い方ができるかもしれない。
 とはいえ、わたしは武器なんて持ってないから、無い物ねだりなんだけどね。

 すると、わたしのジャージのお腹のあたりがもぞもぞとうごめき始めた。

「ぷるん!」

 お腹のジャージをめくって、サラがぽよんとスライムボディを覗かせる。

「あれ、どうしたのサラ? 今ちょっと立て込んでるんだけど――」
「ぷるるん!」

 サラは覗かせたスライムボディからにゅる~っと水色の手(?)を伸ばすと、わたしの目の前に差し出してきた。
 なんだろうと思っていると、サラの手がぽわぽわと光り始め――中から一本の剣が出現した。

「え……これって剣!? どうしてサラが剣なんて持ってるの!?」
「ぷるーん!」

 無い物ねだりだと諦めていた武器が出現し、わたしは驚いてしまう。
 でも、サラは剣なんて持ってたっけ?
 わたしは武器とか買ったことないから、わたしが預けてたようなものじゃないと思うんだけど……。

 謎の剣なので、鑑定で確かめてみよう。

 ―――――――――――――――――――
 名称:ゴブリンの剣。

 武器。
 ―――――――――――――――――――

 これはゴブリンの剣、なのか。
 でも、いつの間にサラはゴブリンの剣なんて入手していたんだろう?

「……あ、そうか! もしかしてこれ、ゴブリンロードと出会う前にわたしが草原で倒したゴブリンたちが持っていた武器!?」

 ゴブリンロードと遭遇する直前、この《魔の大森林》のエリアへと向かうために道中で魔物の群れを倒した。
 そう言えば、その魔物の群れはなぜかやたらゴブリンの割合が多かったんだよね。
 その時は偶然かなと思っていたけど、今はその原因が理解できる。
 きっとあの最初の魔物の群れは、ゴブリンロードによって狂乱化させられた魔物たちだったんだろう。
 だからあれたけの大群で襲ってきたわけだ。
 それだけ大量にいた魔物だから、もちろんゴブリンの数も百や二百では利かないくらいいた。
 この剣は、その時に倒したゴブリンが持っていた武器なんじゃないかな。

「ぷるるーん!」

 どうやらわたしの予想は大当たりだったようだ。
 サラは嬉しそうにぷるぷる震えながら声をあげる。

 あの魔物の群れを倒した後、残った魔物の死体回収はサラに頼んだからね。
 この剣は、そこで入手したものなんだろう。

「まさか本当に剣があるなんて驚きだけど……うん。まあ、何というか、いかにもゴブリンが使ってそうな剣だね」

 剣を掲げてよく観察してみるとわかる……というか、普通に遠目から見てもわかるけど、この剣の性能は大したことないね。

 見るからに下っ端のゴブリンが使ってそうな安っぽそうな剣だ。
 武器の目利きに関しては素人だけど、素人目に見てもこの剣がランクの低い武器であることは察することができるよ。
 だって、ゴブリンロードが持ってるようなカッチョいい大剣とはクオリティーが違いすぎるもん。

「でもないよりはマシか。まともに戦ったら簡単にこっちの剣がへし折れるだろうけど、魔力を満たせば剣の耐久力も上がるでしょ」
「ぷるるっ!」
「ありがとうサラ! これならもう少し楽な戦いができるかも!」

 わたしは何となく剣を構えて、ゴブリンロードに向き直る。
 ちょうどゴブリンロードもフラッシュの目眩ましから視力が回復し始めたのか、頭を降りながらおぼつかない様子で周囲を見回している。

「普通の十六歳の女子が立ち向かっていくような相手じゃないけど……臆さず行くよ!」

 わたしは剣を持ちながら身体強化の魔法をフル稼働し、ゴブリンロードに向かって疾駆した。
 


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