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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第85話 災害級の魔法でねじ伏せちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む迫り来る大量の魔物たち。
その軍勢は依然としてゴブリンの割合が多いけど、空から普通に目で捉えられるくらいには別種族の魔物も相当数混じっている。
「ゴブリンロードが放った二回目の黒い波動が関係しているんだろうね。一回目はゴブリンだけだったけど、二回目の魔法は他の種の魔物まで統率する効果があるのかな」
二回目の黒い波動は一回目の赤黒い波動よりも凶悪性が増しているような感じがした。
あれは他種族の魔物も狂乱化を発動させて自らの支配下に置くような類いの魔法だったんじゃないかと推察している。
「だけど、そうなるとわたしももっと広範囲に攻撃できるより強力な魔法を撃たないといけないね。これじゃいつまでたっても戦いが終わらないよ」
ゴブリンロードがあの黒い波動をあと何回発動できるかわからないけど、このまま戦いが長引くのはあまりよろしくない。
最悪の場合、わたし一人で《魔の大森林》に生息する魔物を全て狩り尽くすまで終わらない、なんて事態になる可能性も否定できないのだ。
さすがにこの広大な《魔の大森林》に生息している全ての魔物を狩り尽くすとなると、その前にわたしの魔力が枯渇してしまいそうだし。
「だから一旦、このフィールドを綺麗きするよ。スパークリングボムでちまちま倒してたんじゃキリがないからね」
スパークリングボムも十分に範囲攻撃魔法として使い道はあるんだけど、今回はさすがに魔物の数が多すぎるから少し非効率な魔法になってしまっている。
だからわたしはもっと広範囲に、この草原と、《魔の大森林》すらも攻撃範囲に加えられるような超大規模な魔法を構築する。
「……うーん、想像してみたけど、どうにも電撃や雷だけだとそこまで広範囲を捉えられるだけの魔法攻撃がイメージつかないなぁ」
となると、何か他の属性と組み合わせた方がいいかな。
二属性の複合魔法とかだったら強い魔法がイメージできそうだ。
「電撃系と相性が良さそうな属性って何があるだろう? 単純に攻撃量を重ね合わせるなら炎属性? でも、電撃なら水と合わせて感電させるみたいなこともできそうだね。あと考えられるとしたら……風とか?」
ふと思いついた風魔法。
これは使えるかも?
「風と電撃……例えば、雷がゴロゴロ鳴りまくってる暴風雨とかなら、かなり広範囲に魔法を展開できそうじゃない!?」
アイデアが閃いた!
台風や暴風雨の時みたいな、天候を疑似再現するくらいの大魔法を使えばいいのでは!?
いい魔法を思い付いたので、早速イメージを固めて魔力を投じ、魔法を構築してみる。
まずは雷をイメージし、それを暴風で吹き飛ばす動作を付け加える。
すると、だんだんと晴れていた空がこの一角だけ曇り始める。
そして、ゴロゴロと稲光が怪しく雲の中で走り始めた。
電撃と風を掛け合わせ、さらにそれを強化するイメージを施すべく天候にまで干渉した大魔法。
空の上でとぐろを巻くようにおどろおどろしく広がっていく曇天と、その中にはち切れんばかりの電撃エネルギーを充満させていく。
そして、わたしは新魔法の名前を叫んだ。
「これでゴブリン含めその他の魔物たちも一掃してあげるよ! 食らえ――――ライトニングストーム!!!」
わたしが大量の魔力を投じて発動したライトニングストームは、その瞬間、視界にいる魔物の軍勢全てを巻き込んで暴風と落雷の限りを尽くした。
ドゴォォォォン――! と、落雷の衝撃と轟音が体に重く響く。
しかもその落雷は立て続けにあらゆる場所で発生しており、さらに暴風の影響でバランスがとれなくなった魔物が次々と吹き飛ばされていく。
その光景は、まさに世界が滅亡するシーンさながら。
わたしがいるこのエリアだけ、とんでもない大災害が発生してしまっているよ。
そのまま一分くらいライトニングストームを発動し続けていると、魔物たちの叫び声などが聞こえなくなってきた。
「もうそろそろかな。それじゃあ、魔法解除っと」
ライトニングストームへの魔力供給をストップすると、空を覆っていた曇天が徐々に晴れていき、雲の隙間から太陽の光が射し込み始める。
そしてすぐに空は晴天に戻り、今までの薄暗い大嵐が嘘のように草原を明るく照らし出した。
「うっわ、これはすごいね……」
草原には、至るところにゴブリンやその他の魔物たちが大量に倒れていた。
下は草原が広がっていたはずだけど、視界に飛び込んでくる情報は緑色の草よりも魔物の体の方が圧倒的な割合を占めている。
これはもはや、大魔法の範疇に収まらないかもね。
言うなれば、極大魔法だ。
凄まじく強力な魔法だけど、その代償として魔力消費がえげつない……!
身体強化で肉体はパワーアップしているはずなのに、気づけば無意識に息があがっていた。
「はぁ、ふぅ~……でも、これでほいほいと魔物の群れは呼べないでしょ! 何たってこの草原だけじゃなく、付近の《魔の大森林》も対象にライトニングストームを展開したからね!」
そう簡単にゴブリンロードが追加の軍勢を呼び寄せられないよう、結構念入りに魔物の掃討を行った。
その範囲はこの草原だけではなく、《魔の大森林》の内部にまで及んでいる。
ここからは木が邪魔で見えないけど、恐らく《魔の大森林》の中にも相当な数の魔物を倒したはずだ。
今さらだけど、躊躇なく森の中にも雷を落としまくったのに山火事とか起きてないんだね。
やっぱり《魔の大森林》の樹木は特別だから簡単に火が燃え移ったりしないのかな?
原因はよくわからないけど、とりあえず無用な山火事が起こらなくて良かったと安心する。
付近にゴブリンロード以外の魔物がいないことを確認してから、わたしはスカイフライを解除してゆっくりと地面に降りていく。
「無事着陸、っと。さぁて、これで邪魔者はいなくなったよ。覚悟はできたかゴブリンロード!」
ビシッと指をさしながら対峙するゴブリンロードに告げると、相手は不敵な笑みを浮かべた。
「ククク……」
「……何を笑ってんのかな」
怪訝な反応を返すわたしに、ゴブリンロードは不気味に口角をつりあげた。
「ウマク……マリョク、ケズレタ……!」
「っ!?」
ゴブリンロードの言葉に、わたしは思わず息を呑んだ。
コ、コイツ……まさか、わたしの魔力を削るためにゴブリンや魔物の群れを突撃させたの!?
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