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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第78話 冒険者友達と遭遇しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「コ、コロネか!?」
「コロネ殿!?」
わたしの姿を見て驚きを露にしている二人の冒険者に、笑顔で挨拶をする。
「やっ、二日ぶりだね。デリック、レイラ!」
そこにいたのは、わたしの数少ない冒険者仲間であるデリックとレイラだった。
デリックは自慢の大きな剣を構えながら、レイラは剣を腰に下げて杖を構えながらわたしを見る。
ようやく状況を呑み込んだデリックが、構えていた剣を下げた。
「い、いきなりの登場だったから驚いたぜ。コロネも魔物を狩りに?」
「この状況でそれ以外何がある。あまり馬鹿な質問をするなデリック」
「ははっ、それもそうか。てか、なんかコロネが絡むと俺への当たりがキツくなってない……?」
「コロネ殿に無駄な手間を取らせているからだ」
少しショックを受けているデリックに、レイラは当然といった顔で答える。
二人とも、なんだかんだ仲が良さそうでよかったよ。
「いやぁ、たまたま二人の姿が遠くに見えたからさ。せっかくだから挨拶でもしとこうかと思ってね」
「そうだったのか。だが、コロネが来てくれたなら百人力、いや千人力だろ!」
「ああ。現に今もゴーレムを蹴り飛ばしていたしな……」
レイラは若干ひきつった顔で粉々に吹き飛ばされたゴーレムに視線を流す。
わたしが蹴り飛ばしたゴーレムは数メートル先に転がっていて、もはやかつての原型は留めておらず、今は鉄屑の山のような感じになっている。
何となく流れで蹴り飛ばしちゃったけど、ゴーレムの肉体の素材も全て鉄でできてて良かったよ。
これが動物タイプの魔物だったら、モザイク必須の凄惨な現場になっていただろうからね……!
「それじゃあコロネ! 早速だが他の魔物を倒しに行こうぜ!」
デリックが爽やかな笑顔をわたしに投げ掛けてくるけど、わたしはそれに待ったをかける。
魔物を倒しに行くのは賛成だけど、この場で戦いを繰り広げる気はない。
「それなんだけどさ、さっきあの城壁に上って遠くの方まで確認したんだけど」
「なに!?」
「コロネ殿、城壁の上に行ったのか!?」
話の途中だったんだけど、二人が驚いた反応をする。
……もしかして、変なことでも言っちゃったのかな。
「え、うんそうだけど……何かまずかった?」
「……基本的に城壁は領主様の許可がないと立ち入ることが許されない」
「あそこには街の防衛魔法に関わる術式や魔道具なんかが設置されてるからな。簡単に言うなら、部外者立ち入り禁止、ってヤツだぞ」
え、ホントに?
あそこって勝手に上っちゃいけなかったの?
「そんな法律があるなんて知らなかったんだけど……わたし捕まったりするのかな?」
「通常であれば拘束された後に然るべき処罰を下されると思うが……コロネ殿であれば領主様もお許し下さるのではないだろうか」
「ああ。あの人、やけにコロネを気に入ってるからな」
それなら良かったかな……?
まあオリビアとも交友があるし、わたしが刑務所なんかにぶちこまれるとなったら助けてくれるかもしれない。
……そうならない未来を祈るばかりだ。
とりあえず、今はその問題は置いておこう。
「ま、まぁ、その件は置いといて、さっき城壁から周りを見たんだけど、今も《魔の大森林》から大量の魔物がこっちに向かってきてるよ」
「お、おいおいマジかよ……!」
「……やはり狂乱化が発症しているのは間違いないようだな。しかも、もしかすると私たちが想定しているよりももっと広範囲に影響が及んでいるのかもしれない」
二人は共に驚きを露にする。
レイラは何やら不穏な予測を立てているけど、それがあながち間違いでもないかもしれない。
ただ一つ言えるのは、この狂乱化の影響が想定内にしろ想定外にしろ、このままではジリ貧で押し崩される可能性が高いということだ。
「レイラの言うとおり、かなり広範囲に狂乱化現象が起きていて大量の魔物が襲ってくるならこの街の前で戦っててもいずれ押し負けるでしょ。だからわたしが《魔の大森林》の近くまでいって、大魔法でサクッと魔物たちを倒しに行こうと思ってるんだ!」
「コロネ殿の大魔法で……?」
「……そりゃまた、随分とぶっ飛んだ話だなぁ」
わたしのアイデアに、二人は信じられないものを聞いたような表情になる。
「まあ、わたしはそんな感じで動いていこうと思ってるよ。二人はこのままここで戦うつもりなの?」
「ああ、そのつもりだ」
「本当ならもう少し前の方で戦いたいとも思っているのだが、如何せん魔物の数が多い。私たちもコロネ殿についていければ良いのだが……恐らく足手まといになってしまうだろう」
レイラは自分の力不足を悔やむような顔でわたしから視線を外した。
別に二人くらいなら一緒についてきたとしても、わたしの大魔法にそこまで影響はないと思う。
ただ、大魔法に影響がないだけで二人に何か役割があるかと言えば何もない気がする。
わたしの大魔法の被害を受けないように、じっとしていてもらうだけだ。
それではあまりに二人の力を無駄にしすぎている気がするから、ここは二人にはこの場に残ってもらった方が良いかな。
「ありがとうレイラ。気持ちは嬉しいけど、今回はわたし一人で行ってくるよ。その間、二人はここで魔物の侵攻を食い止めていて!」
わたしの労いとも激励とも取れる言葉に、二人は一瞬だけ呆気に取られたような顔になった後、笑みを浮かべる。
「ああ! 俺たちに任せときなコロネ! 魔物どもには絶対にベルオウンの地は踏ませねぇぜ!」
「私たちには私たちにやれることを精一杯しよう! もし付近の魔物の討伐が片付いたら、コロネ殿の様子も確認しに行かせてもらう!」
デリックとレイラは、闘志に満ちた瞳でわたしに応えてくれた。
さすがはベルオウンでの先輩冒険者なだけはある。
今の自分にやれることをやるという、当たり前の信念がしっかりと根づいているね。
「二人ともありがとう! それじゃ、わたしが《魔の大森林》を叩いている間、ベルオウンは任せたよ! だから絶対に魔物にやられたりしないでね!!」
「当たり前だ! これでも俺たちはBランクの冒険者パーティだからな!」
「全て終わったらぜひとも盛大な打ち上げをしよう、コロネ殿!」
え、打ち上げ!?
打ち上げってことは、美味しいご飯とかジュースとかが振る舞われるってことだよね!?
これは俄然ヤる気出てきたぞっ!!
わたしはデリックとレイラに一旦別れを告げて、この後の打ち上げの食事に期待を膨らませながら、《魔の大森林》へとダッシュしていった。
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