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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第73話  魔物を倒しに駆けつけちゃう、ぽっちゃり

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「それなら、わたしが行ってくるよ。パッと様子を見て、解決できそうだったら魔物も倒してくるし」

 わたしが軽い感じで言うと、皆の視線を一身に集めてしまった。
 あれ、そんなに変なこと言ったかな?
 今も街の外では冒険者が戦っているらしいし、それならわたしが行ってもおかしくないと思うんだけど。

 皆が固まってわたしに釘付けになっていたけど、スッとオリビアがわたしの手を握ってきた。

「ありがとうございます……! いつもコロネさんにばかり頼んでしまって申し訳ありませんが……どうかベルオウンを救うため、力をお貸しいただけないでしょうか……!!」
「オ、オリビアお嬢様!?」
「お、おい嬢ちゃん! それは本気で言ってるのか!?」

 わたしの出陣を後押しするオリビアの発言に、エミリーとおじさんが驚く。
 二人には、オリビアの代わりにわたしが答えておこう。

「もちろんだよ。わたし一応こう見えても冒険者だから、魔物とも戦えるし。心配はいらないよ」

 わたしはただのぽっちゃりではないからね。
 魔物とも戦えるタイプのグレードアップされたぽっちゃりなのだ。

「それじゃ、わたしとサラは街の外の様子を見てくるけど……ナターリャちゃんとわいちゃんはどうする? 危険そうだし、オリビアたちと待っててもいいよ」

 さっきの騎士の話だと、今回相手にするのは普通の魔物ではないみたいだからね。
 狂乱化とかいう、暴走状態になった魔物が相手だ。
 わたしも狂乱化がどんなものなのかイメージできないから、危険度がいまいちわからないんだけど、いつものような戦闘ができる保証はないのは確かだ。

 だから二人の身を案じての確認だったんだけど、二人とも首を横に振った。

「ううん! ナターリャだって冒険者だもん! 街の人が魔物で困ってるなら、そのお手伝いをしたい!」
「わいもや! 誇り高きドラゴン族の端くれとして、魔物相手にビビってられんで!!」

 二人は真っ直ぐにわたしを見つめてくる。
 どうやら、覚悟は決まっているみたいだ。
 ……本当はオリビアたちと街に残ってくれた方がいいかなぁ、とか思ってたんだけど、そんなことを言うのは無粋だね。

「わかったよ! ナターリャちゃんもわいちゃんも、力を貸して!」
「うん! ナターリャ頑張って暴走した魔物と戦うよ!」
「お任せあれや、ご主人!」
「ぷるーん!」

 わたしの元に、パーティメンバーが集まってくる。
 そこに、オリビアが

「コロネさん、ナターリャちゃん、サラちゃん、わいちゃん――どうか、お気をつけて……! 必ず無事に帰ってきてください! その間、私達は住民の避難誘導に取り掛かります!」
「うん! 街の中は任せたよオリビア!」

 街の外で魔物を倒すだけことだけが問題ではない。
 中にいる住民たちがパニックを起こしたら、二次災害に発展しかねないからね。
 そっちはオリビアに任せるとしよう。

「それじゃ皆! 街の門へ急ぐよ!」
「うん!」
「ぷるん!」
「了解や!」

 オリビアの激励を受けながら、わたしたちは街の門へと走り出した。



 〇  〇  〇



 この地区がベルオウンの端のエリアだからということもあってか、街の門へは比較的すぐ到着することができた。
 あとはそのまま門から外へ出ればオッケーだと思ってたんだけど……イレギュラーが発生している。
 なんと、街の門は多数の冒険者や騎士、そして住民などが多数入り混じってかなり混んでいるのだ! 

「うーん、あの中に飛び込んでも外に出るまでちょっと時間がかかっちゃいそうだなぁ」
「コロネお姉ちゃん、どうするの?」

 ナターリャちゃんが困った顔でたずねてくる。

 無理やり割り込むのも気が引けるけど……あの感じは多少強引なくらい押し入らないとすぐに門の外まで出られない気がする。
 それに今も街の外から門をくぐって避難してきている駆け出し冒険者や商人たちもいるから、その人たちとぶつかってしまいそうだ。

 どうしたものかと考えていると、ふとわたしの脳裏に一つのアイデアが思い浮かぶ。
 わたしたちはあくまで街の外に出たいだけだから、別に街の門をくぐる必要はないのだ。
 それならば――

「そっか! 陸がダメなら空を使えばいいじゃない!」
「そら?」

 ナターリャちゃんはわたしの発言の意図がよくわかっていないみたいだ。
 まあ、今回に限っては逆に意味がわからない方が良いかもしれない。
 なのでわたしは、足元にいる従魔たちに指示を出した。

「サラとわいちゃんは、わたしにしがみついていて! 動くから振り落とされないようにね!」
「ぷるん!」
「り、了解や!」

 サラはわたしの赤ジャージの中にするりと潜り込み、わいちゃんは小さな手でわたしの足の裾をガシッとつかむ。
 従魔たちの準備も完了したので、わたしはナターリャちゃんに向き直った。

「じゃ、ちょっと我慢してねナターリャちゃん」
「え、え、どうして笑顔でナターリャに近づいてくるの? コロネお姉ちゃ――ひゃあ!?」

 わたしは困惑するナターリャちゃんを無視してお姫様抱っこをする。
 ぐるん! と体が回転したナターリャちゃんは驚いて変な声をあげた。

「さあ、これで準備万端だ。わたしの体が空中に浮かぶイメージで……魔法発動! スカイフライ!」

 スカイフライの魔法を発動すると、わたしたちの周囲に薄く魔力が光る。
 次の瞬間、ぶわっとわたしの足が地面から離れた。
 うん。
 何となく空中に浮かぶ感覚はつかめたかな。

「よーし、このまま城壁を超えるよ! ちょっと高いから、怖かったら目をつぶっててね!」

 皆に忠告をして、わたしは一気にぐーん! と垂直に飛び上がる。
 一気に五メートル、十メートル、十五メートルと上昇していくわたしに、腕の中でお姫様抱っこをされているナターリャちゃんは叫びをあげる。

「う、うう、浮いてるよぉ! コロネお姉ちゃぁああああああああん!!」
「もうちょっとだから我慢しててね!」

 どんどん小さくなっていく街の人たちを見下ろしながら、わたしは半泣きになっているナターリャちゃんを抱えて城壁を飛び越えていった。



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