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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第66話 エミリーから重要情報を入手しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む散らかっていた部屋もサラのおかげでキレイに片付いて一息ついていると、わたしのお腹がぐぅ~~と鳴った。
「なんかお腹すいてきたんだけど、いま何時?」
「えっと、今はちょうどお昼くらいですね」
エミリーが懐中時計を取り出し、時刻を確認してくれる。
ちょうどお昼か。
それならお腹がすいてくるのも当然だよね。
そもそも今日は朝からオリビアに起こされたおかげで朝食は宿屋で提供された料理だけだった。
あれくらいの量では全然足りないので、実質今日のわたしは何も食べていないのと同じようなものだ。
「コロネさん、どこかで食事にいたしますか?」
「そうだね……あっ!」
オリビアの提案を聞いて、わたしは一昨日のルカの宿屋で食べた夕食を思い出した。
今も忘れられないくらい美味しかったドラコンステーキ。
できればまた食べてみたいけど、今回の本命はそっちじゃない。
そう、このドラコンステーキのお供としてあの日だけ提供されたご飯――白米だ!
純日本人のわたしとしては、やはりお米には何物にも変えがたい魅力がある。
なんせ美味しいからね。ご飯って。
ルカの話だと、たしかお米を買ったのはヤマト国っていう国から来た商人だとか言ってたっけ。
「ねぇ、オリビア。ベルオウンの街にヤマト国の商人が営んでる店とかある?」
「ヤマト国の商人ですか? そうですね、恐らく彼らが経営している店舗はないと思います。ですが、最近ベルオウンの街にヤマト国の商人が数日間ほど出店を開く予定だと耳にしたことがあります」
「出店かぁ! だけど、昨日わたしが冒険者ギルド付近の出店を調査した時は見つからなかったんだけどなぁ」
「申し訳ありません。私も正確にどのエリアに出店を出店しているのかまでは把握しておりませんので……」
「いやいやそれは仕方ないよ。気にしないで」
まあわたしが調査した出店っていうのも、あくまで冒険者ギルド付近のものに限られるからね。
ベルオウンは地味に広そうだから、まだまだわたしが訪れていない場所がある。
多分そのどこかに屋台を出しているんだろうけど……オリビアも知らないとなると探すのは難しいかもしれないね。
ルカもどこでヤマト国の商人からお米を買い付けたのかは知らないって言ってたし……こうなるとルカの宿屋で食材の仕入れを行っている従業員の人から直接聞いた方が早いか。
今は結構お腹が減ってるし、近場で美味しそうなお店があったらそこで食事をとることにしようかな。
そのような方向で考えを固めていると、エミリーが控えめに手をあげた。
「あのぉ、ヤマト国の方が出している出店でしたら、私知ってますよ?」
「……ええ!?」
思わぬところからの情報提供に、わたしは叫んでしまう。
「エ、エミリー、それ本当!?」
「はい。三日ほど前からこの辺りに出店を出されていますね。ただ、大通り沿いではないので、あまりお客さんはいないようですけど」
「そ、そうなんだ。ちなみに、どんなメニューがあるかとか知ってる?」
「す、すみません。私も偶然近くを通ったときに遠目から見ただけですので……。あ、ですが、少し変わった形状の屋台でした! 五人くらいだったら人が座れるような椅子があって……それとひらひらした旗? みたいなのを屋台の屋根にくっつけていて、そこに『ヤマト米』って書かれていたと思います!」
「ヤ、ヤマト米!? お米じゃんそれ!!」
つ、ついにお米の在り処を特定した!?
これでまたあの美味しいお米を味わうことができるのか!!
や、やばい!
今から興奮が押さえられない!
ようやくヤマト国の屋台を特定したことに喜びを感じつつも、エミリーが言った変わった形状の屋台という表現は気になるね。
何人か人が座れるような椅子があって、屋根にくっついたひらひらした旗……。
もしかしてその屋台、昔ながらのおでん屋さんの屋台みたいな感じなのでは?
屋根にくっついた旗っていうのは、暖簾のことを言ってるんじゃないかな。
中世ヨーロッパ風の文化で生きてるエミリーにはおでん屋の屋台は馴染みがないから、そのような特徴的な表現になってしまったのかもしれない。
しかし何はともあれ、そんな些末なことは実際に行ってみればわかる話。
わたしはガシッと力強くエミリーの肩をつかむ。
「エミリー! そのヤマト米の屋台まで案内してくれない!?」
「は、はい! それは構わないのですが、そうなるとお屋敷のお掃除などが遅れて……」
「お掃除なんて後でいいよ! 今はとにかくご飯を食べないと! 腹が減っては戦ができぬって言うでしょ!」
「そ、そうなんですかぁ!?」
エミリーは驚いたように目を丸くしている。
美味しいご飯に比べたらお屋敷の掃除なんて二の次でいいに決まってるよね。
何ならヤマト米の屋台を教えてくれたお礼として今日は何もしなくていいくらいだよ。
わたしが喜び勇んでいると、ナターリャちゃんが素直な瞳で問いかけてきた。
「コロネお姉ちゃん、ヤマトまい? ってなんなの?」
「ああ、ナターリャちゃんは知らないんだっけ。ヤマト国っていう国で作られてる、とっても美味しいご飯なんだよ!」
「そうなんだ! ナターリャも食べてみたい!」
そう言えば、ルカの宿でご飯とドラコンステーキを食べた時はまだナターリャちゃんと出会っていなかったんだったね。
それならお米を知らないのも無理はない。
なにせこの辺りの主食はパンだから、お米が出回るのはあんまりないみたいだし。
「よぉし! そうと決まれば早速みんなでヤマト米の屋台に出発だぁー!!」
これからお米を食べられることにテンションMAXになりながら、高らかに叫んだ。
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