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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第64話  メイドさんに仕えられちゃう、ぽっちゃり

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 エミリーという美少女メイドが、巨乳属性も併せ持っていたという衝撃に打ちのめされてしまったわたし。
 美少女×メイド×巨乳だなんて、なんとけしからん属性を掛け合わせているんだこの子は……!
 全く、わたしが女性だったから良かったものの、もし男だったら軽く卒倒していてもおかしくないくらいの破壊力をエミリーは持っているよ……!

「えーと、あなたはオリビアお嬢様のお付きの方々でしょうか?」

 わたしにエミリーが問いかけてくる。
 そう言えばまだわたしの自己紹介が済んでいなかったね。

「ああ、わたしはコロネだよ。一応、冒険者だね。オリビアのお付きってわけじゃないけど、まあ友達、かな?」
「コロネさんは私のお友達です!」

 オリビアがほっぺを膨らませながら訂正する。
 友達と公言しても良いのか微妙だったから少し曖昧な表現を使ったんだけど、オリビアはご立腹みたいだ。
 まあ、オリビアがわたしのことを友達と思ってくれているのは素直に嬉しいね。

「それで、この子たちはパーティメンバーなんだ。ナターリャちゃんと、わたしの従魔のサラとわいちゃんだよ」
「ナターリャだよ!」
「ぷるん!」
「わいちゃんや! よろしゅうなエミリーはん!」

 ナターリャちゃんを皮切りに、足元にいるサラとわいちゃんも挨拶をする。

 これでわたしたちの自己紹介は済んだかな、なんて思っていると、エミリーがわなわなと震えだした。
 え、急にどうしたんだろう。
 なにかおかしなところはあったかな?

 わたしがエミリーの反応に戸惑っていると、エミリーはバババ! と素早い動作でわたしの手を取り、胸の前で包み込むように握った。

「コ、コロネ様!? あなたがコロネ様なのですか!?」
「そうだけど、わたしのこと知ってるの?」
「はい! というのも私、本日付でウォルトカノン家での給仕の職を解かれた身でして……。代わりに、今日からこちらのお屋敷でコロネ様という方のお世話をするようアルバート様から言い伝えられました!」

 え、なにそれ。
 聞いてないんだけど。

 エミリーはオリビアのお屋敷でメイドとして働いていたみたいだけど、今日からこのお屋敷でメイド業務をするようアルバートさんに異動を命じられたってこと?
 そんなことアルバートさん一言も言ってなかったよね。
 さっきわたしの宿にまで押し掛けてきたんだから、一言教えてくれても良かったのに。
 ああ、でもそれじゃあオリビアのお礼の品がこのお屋敷だってことがわたしにバレてしまってその場で断られる可能性があったから黙っていたのかな。
 ……なんか、是が非でもこのお屋敷にわたしを住まわせたいっていうアルバートさんとオリビアの確固たる意志が垣間見得てくるようだね……。

 いや、待てよ?
 この際アルバートさんがエミリーのことを秘密にしていたってのはもういいけど、わたしの持ち家となったこのお屋敷でエミリーが働くということは――

「つ、つまり、わたしにメイドさんがつくってこと!?」

 この美少女巨乳メイドの主人がわたし!?
 エミリーの口ぶりからすると、わたしのお世話をするよう命じられてこのお屋敷に異動になったって言ってたから、そういうことだよね!?

 わたしが確認すると、エミリーはやる気に満ちた瞳でわたしの手を強く握る。

「はいっ! 私はまだまだ未熟なメイドですが、コロネ様が快適にこのお屋敷で過ごせるよう、精一杯働かせていただきます!」
「う、うん。よろしくね!」

 エミリーは目に炎を灯し、なぜかとてもやる気を出している。
 さっきオリビアのお屋敷の職を解かれた話をしていた時は少し悲しそうだったけど、こっちのお屋敷でメイド職ができるから頑張ろうとしてくれてるのかな。
 メイド側から見たら、正真正銘の貴族に仕える方が格上みたいな風潮があるのかもしれない。
 わたしはただのぽっちゃりの冒険者だからね。

 それでもエミリーはメイドとしてやる気を出してくれているし、わたしもエミリーにお世話されるのは嫌じゃない。
 だけど、ここでエミリーが働くとなると、一つ確かめておかないといけないことがある。

「あのさ、わたしのお屋敷で働いてくれるのは嬉しいんだけど、エミリーのお給料とかってわたしが出すの?」
「いえ、全てお父様が支払ってくれております。あくまでもエミリーはこちらのお屋敷で業務を行うだけであって、ウォルトカノン家との雇用契約が切られた訳ではありませんから」
「なるほど。それじゃあ単純にアルバートさんが雇っているメイドさんの一人をわたしのお屋敷に派遣してくれているって感じなんだね」
「はい。そのような認識で問題ありません」

 オリビアの説明を聞いて納得がいく。
 別にわたしがエミリーのお給料を払うのは全然問題ないんだけど、こういうお金のことはきっちり確かめておいた方がいいからね。
 後から変に揉めてもいやだし。

「エミリーお姉ちゃん、これからこのお屋敷で働くの?」

 ナターリャちゃんが、エミリーのメイド服の裾をくいくいしながら聞いてくる。
 エミリーはわたしから離れると、背が低いナターリャちゃんに合わせて屈んで応える。

「はい! コロネ様だけでなく、パーティメンバーであるナターリャ様や従魔様にも精一杯お仕えさせていただきます!」
「やったー! それじゃあ、エミリーお姉ちゃんと毎日このお屋敷で会えるの!?」
「いや、ナターリャちゃん。さすがに毎日は――」

 毎日エミリーと会えると期待しているナターリャちゃんに、わたしが否定しようとすると、エミリーが力強く答えた。

「いえ! 私は毎日こちらのお屋敷で働かせていただきたいと思っております! 一応、アルバート様はコロネ様の許可をいただけるなら住み込みで働いても構わないと仰られておりましたので! も、もちろん、このお屋敷で私が生活することをコロネ様がお許しいただけるならですが……」
「ん~、まあ空き部屋は大量にあるし、エミリーの部屋を用意するのは簡単だから全然いいんだけど……」
「わあああ! 本当ですかコロネ様! ありがとうございます!!」
「でも、エミリーはそれで大丈夫なの? 住み込みで働くからって、さすがに毎日メイド業をこなすのは大変だよ」
「問題ございません! 私のような者にお仕事を下さっているアルバート様とコロネ様の期待を裏切るわけにはいきませんから!!」

 いや、だからその謎のやる気は一体どこから来てるの!?
 だけど、エミリーが住み込みで働けるようになってナターリャちゃんはとても喜んでいる。

「エミリーお姉ちゃんもこのお屋敷に住むの? それって、ナターリャたちと一緒に暮らすってことだよね!?」
「はい! 不束者ではございますが、皆様と生活を共にさせていただきます!」
「わーい! これからエミリーお姉ちゃんともずっと一緒にいられるんだ~!」
「そ、そんなに私を求めていただけるなんて……ありがとうございます! サラ様とわいちゃん様もよろしくお願いいたします!」
「ぷるーん!」
「こちらこそよろしゅうやで、エミリーはん!」

 こうして、わたしのお屋敷に一緒に暮らすメンバーが一人増えた。
 しかもその子は美少女メイドさん。

 いきなりのことで驚いたけど……これはこれで賑やかになって楽しそうだからいっか!
 だけど、エミリーは働きすぎには注意してね。
 間違っても過労で倒れたりとかしないでよ。

 やる気あふれるエミリーの体を心配しつつも、これから訪れるであろう楽しい生活を思い描き、皆と一緒にエミリーの住み込みを歓迎した。


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