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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第63話  異音の正体を突きとめちゃう、ぽっちゃり

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 二階へと続く大きな階段を上ってきたわたしたちは、周囲を警戒しつつそろりそろりと廊下を歩く。
 まだ外は全然明るいから太陽の光が窓から射し込んでくるけど、気分は夜の学校に忍び込むような感じだ。
 皆も押し黙ってわたしの後ろをついてきている。

「多分、音が聞こえてきたのはこの辺りだよね?」
「そうですね。近くにある部屋を一つずつ調べていきますか?」
「そうだなぁ……ん? あれは……」

 わたしは目の前の部屋の扉に目がいった。
 なぜならこの扉は完全に閉まりきっておらず、少しだけ半開きのような状態になっているからだ。
 一応その隣の扉も確認してみるけど、こちらはしっかりと閉まっている。

「この扉、不自然に開いてるね」
「ほ、ほんとだ……!」
「ではやはり、何者かがこの部屋の中に……!?」

 自分で言っておきながら、まあ泥棒なんていないよなー、なんて思っていたけど、まさか本当にいるのか!?
 だけど、この半開きの扉は見過ごすことはできない。
 中を確認しないとね。

「皆、わたしの後ろにいてね。一応、すぐ逃げれる用意だけしておいて」

 わたしは小さな声で皆に指示を出す。
 皆もこくりこくりと頷いてくれたのを見て、わたしは取っ手に手をかけ、扉を開いた。
 ギィィ……、なんて不気味な音が鳴るかと思ったけど、そんな音は一切なくスムーズに開けることができた。

 わたしは正面にバリアを展開して、部屋に入る。
 すると、目の前には荒々しい光景が広がっていた。

「うわっ、すっごい物が散乱してるよ! 床にたくさん散らばってるのは……本?」

 目に飛び込んでくるのは、豪快に倒れたいくつもの本棚と、床一面に散らばった大量の本。
 飛散した大量の本の一部は山のように盛り上がっていて、小さなピラミッドのようになっていた。
 さっきの轟音は、この本棚が倒れた時に発されたものだったんだね。

 謎の異音の正体を察していると、わたしの後ろからオリビアがひょっこりと顔を出す。

「どうやら、ここは書斎だったようですね。かつての使用人たちがそれぞれ持ちよった本などが多く残っていたのでしょう」
「それにしても、これはかなりの量だよね。てかこれ、後で片付けないとじゃん……」

 うわぁ、めんどくさぁ……!
 床に広がる大量の本たち。
 パッと見でも、その数は百や二百じゃ聞かないんじゃない?
 倒れた本棚をもとに戻して、そこにこの散らばった数百冊の本を収納していくとかダルすぎるよね。
 ……もういっそのこと、この本棚も本も処分しちゃおうかな?

 後片付けのダルさに辟易していたその瞬間――本の山がゴソリと動いた。

「誰っ!?」

 わたしは瞬時に警戒する。
 いま、たしかに本の山が動いたはず。
 すると、しばらく本の山がゴソゴソと動き続けた後、ポンッと謎の人物が顔を出した。

「けほっ、けほっ、うぅぅ~ホコリっぽいですぅ~……。まさかお掃除してる最中に本棚が倒れてくるなんてぇ~……」

 本の山から現れたのは――一人ひとりの女の子だった。
 頭の上には、ページが開かれた本が乗っかっている。

 わたしは予想外の人物にポカンと固まってしまう。
 すると、その女の子がわたしに気がついた。

「あれぇ、どなたですか? あ、もしかしてアルバート様が派遣してくださった応援の方でしょうか? えへへ、これは恥ずかしいところをお見せしてしまいましたねぇ~」
「……いや、ちがいますけど」
「えぇ!? 私のお手伝いをしに来てくれたんじゃないんですかぁ!?」

 女の子はとてもびっくりした様子で声をあげる。
 この子は誰なんだろう?
 雰囲気的に屋敷に泥棒って感じはしないけど……。
 てか、さっきアルバート様とか言ってなかった?
 アルバートと言って思いつくのはオリビアのお父さんがアルバートさんっていう人だけど……まさかね?

「あなたは……エミリーですか?」
「へ? あ、あれ、オリビアお嬢様!? ど、どうしてこんな所にぃ!?」

 オリビアの関係者だったー!

 じゃあやっぱりアルバート様ってのはオリビアのお父さんのアルバートさんのことだったのか!
 まあよくよく考えたら、名前に様付けして呼んでる時点でお察しだったよ。

「えっと、この子はオリビアの知り合いなの?」
「は、はい。私の屋敷で働いている者です」

 オリビアが紹介してくれているのを悟った女の子は、シュバババと本の山から抜け出してわたしたちにお辞儀をする。

「こ、これは失礼いたしましたぁ! 私はウォルトカノン家で働かせていただいている、メイドのエミリーと申しますぅ!」
「メ、メイドさんだー!!」

 本にまみれていて気づかなかったけど、エミリーと名乗る女の子はメイド服を着ていた。
 白と黒の典型的なメイド服だけど、フリフリ感はやや抑えめで機能性を重視したような作りになっている。

「こ、これが異世界メイド……! 元いた世界を含めても、何気に生のメイドさんを見たのは初めてだよ!」

 メイド服を身にまとった可愛らしい女の子たちの姿は見たことはあるけど、それらは全て画面越しだった。
 もちろん日本にもメイド喫茶とかに行けばリアルでメイドさんに出会えるけど、あいにくわたしは入ったことないからね。

「あ、あのぅ、どうかしましたかぁ?」

 エミリーがおどおどしながらオレンジ色の髪をなびかせながらわたしの顔を覗き込んでくる。
 おっと、あまりに異世界メイドが可愛らしくて衝撃を受けすぎたようだ。
 ちょっと冷静にならないといけないね。

「ああ、ごめん。何でもないよ。ちょっと本物のメイドさんに感動しちゃって――」

 言いながらエミリーの顔を見ると、わたしは視界の下の部分に目がいった。
 美少女であるエミリーが中腰の姿勢になったことで強調される、彼女のさらなる魅力要素。
 心配そうにおどおどとわたしを覗き込むたびに、たわわな二つの果実がぽいんぽいんと揺れていた。

 こ、この子、異世界メイド巨乳っ子だぁー!!!


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