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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第61話  富裕層のスケールを目の当たりにしちゃう、ぽっちゃり

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 大きな門を押し開け、屋敷の庭に入る。
 門から屋敷の入り口までは舗装された道が敷かれていたので、そこを大所帯で歩いていく。

「ひぇ~、やっぱり大きな庭だな~」

 庭は手入れがされていないから雑草がボーボーに生えているけど、これはキレイに草むしりでもすればキレイな庭に仕上がるだろう。
 すると、隣を歩いていたナターリャちゃんを何かを発見したのか、庭の一部に指をさした。

「あ! あそこに何かあるよコロネお姉ちゃん!」
「ん? なにあれ」

 ナターリャちゃんが指した先にあったのは、何かの突起物みたいなもの。
 その回りには円を描くようにぐるりと石膏のような素材で囲われている。
 多分元は真っ白できれいなオブジェクトだったんだろうけど、今は草やツタに侵食されていて土汚れなども目立つ。
 わたしたちが不思議がっていることを察したのか、オリビアが説明をしてくれる。

「ああ、あれは魔力を通して動く噴水ですね。しばらく使用しておりませんが、恐らくまだ使えると思います。それに、向こうには小さな池もありますよ。今は水は抜いていますけど、お屋敷に住むのに慣れてこられましたら何かお魚でも飼育されても良いかもしれませんね」

 庭に噴水やら池やらがあるだなんて、さすがはお屋敷だね。

 思えば、日本でも超富裕層の家には和風の大きな池があって、その池には美しい鯉が何匹も泳いでるシーンをドラマとかで見たことがある。
 そこでお金持ちのお爺さんが鯉のエサやりをしながら今後の事業の展望について思案したりするんだよね。
 わたしもお屋敷を手に入れたことだし、鯉でも飼って真似してみようかな。
 豪華な庭の池に泳ぐ鯉にエサやりをするぽっちゃり……うん、似合わなさすぎるからやめとこう。
 でも噴水は眺めてるとキレイだから落ち着いたら稼働させてみようかな。

「こちらがお屋敷の中になります。どうぞお入りください!」

 オリビアが丁寧に説明しながら、懐から鍵を取り出して屋敷の扉を開けた。
 豪華な扉が開かれ、玄関に足を踏み入れた瞬間、わたしたちはその豪邸っぷりに度肝を抜かれた。

「や、やばぁっ!? 玄関だけで余裕で寝れるくらい広いし、奥の大広間はまるで高級ホテルみたいになってるじゃん!?」
「うわぁーー! すっごい広ーい! 一階だけで追いかけっこできちゃうね!」
「こ、これはごっつい家でんなぁ! ドラゴンの里のおさの邸宅にも負けずとも劣らん、とんでもない豪華さや!」
「ぷるーーん!!」

 恐らくオリビア以外の全員が初めて体験したであろう本物のお屋敷のインパクトに、わたしたちは感嘆の声をあげる。
 やっぱり目を引くのはその広さだね。
 ナターリャちゃんも言っていたけど、本当に追いかけっこができるくらいの広さがある。
 まあ、まだ誰も住んでいないので家具なんかが置いてないから実際に住んだ時よりもやや広く感じているのはあるだろうけど、それを差し引いてもとんでもない豪邸だ。

 素人目でも床や壁なんかは上質な物を使っているっていうのが分かる。
 それに二階へと続く大きな階段や、向こうにはオシャレな螺旋階段なんかも設計されていた。
 そして上を見上げてみると、天井にはデカデカとシャンデリアが備えつけられている。
 うわぁ……本物のシャンデリア初めて見たよ。
 光はないから豪奢な感じはしないけど、それでもとても迫力が感じられるインテリアだね……。

「ふふふ、皆さんにも好評なようで嬉しいです! お部屋は大小合わせて二十以上ございますので、皆さんでお好きな部屋を使ってください」
「はいはーい! ナターリャ、このお屋敷探検したい! 一緒に探検しよ、コロネお姉ちゃん!」
「探検……探検かぁ」

 こう見えても、わたしは十六歳のぽっちゃりだ。
 世間から見たらまだまだ子供とはいえ、さすがに最低限の分別くらいつく年頃。
 ナターリャちゃんは探検しようとはしゃいでいるけど――

「こんな豪華絢爛なトンデモお屋敷を見せられたら――探検するしかないよねぇ!!」
「やったー! 探検、探検~!」
「探検するんでっかご主人! こんだけ広かったらわいらも思いっきり動き回れまんな、サラはん!」
「ぷるるーん!」

 わたしの探検開始の号令とともに、他の皆がにわかに騒ぎだす。
 やっぱこんな豪邸に訪れたなら、一度は探検しとかないと後悔するからね!
 そもそも、このお家はもうわたしたちのモノなんだから、好きなだけ探検しても文句は言われないはずだ。

「皆さんこのお屋敷を探検する気なのですね! ならば私も負けていられません! 皆さんの探検についていけるよう、全力でお部屋の解説をさせていただきます!」

 オリビアはガッツポーズをして己を鼓舞している。
 どうやらオリビアもノリノリのようだ。
 こうも全力で物件の解説をされると熱血の不動産営業マンみたいになっているよ。
 でも、それくらいやる気がみなぎっていた方が探検は楽しいよね!

「それじゃあ、探検開始だー!!」
「「「おおーーー!!」」」

 掛け声と同時に、わたしたちは大はしゃぎで屋敷の中を走り出していった。



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