62 / 247
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第61話 富裕層のスケールを目の当たりにしちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む大きな門を押し開け、屋敷の庭に入る。
門から屋敷の入り口までは舗装された道が敷かれていたので、そこを大所帯で歩いていく。
「ひぇ~、やっぱり大きな庭だな~」
庭は手入れがされていないから雑草がボーボーに生えているけど、これはキレイに草むしりでもすればキレイな庭に仕上がるだろう。
すると、隣を歩いていたナターリャちゃんを何かを発見したのか、庭の一部に指をさした。
「あ! あそこに何かあるよコロネお姉ちゃん!」
「ん? なにあれ」
ナターリャちゃんが指した先にあったのは、何かの突起物みたいなもの。
その回りには円を描くようにぐるりと石膏のような素材で囲われている。
多分元は真っ白できれいなオブジェクトだったんだろうけど、今は草やツタに侵食されていて土汚れなども目立つ。
わたしたちが不思議がっていることを察したのか、オリビアが説明をしてくれる。
「ああ、あれは魔力を通して動く噴水ですね。しばらく使用しておりませんが、恐らくまだ使えると思います。それに、向こうには小さな池もありますよ。今は水は抜いていますけど、お屋敷に住むのに慣れてこられましたら何かお魚でも飼育されても良いかもしれませんね」
庭に噴水やら池やらがあるだなんて、さすがはお屋敷だね。
思えば、日本でも超富裕層の家には和風の大きな池があって、その池には美しい鯉が何匹も泳いでるシーンをドラマとかで見たことがある。
そこでお金持ちのお爺さんが鯉のエサやりをしながら今後の事業の展望について思案したりするんだよね。
わたしもお屋敷を手に入れたことだし、鯉でも飼って真似してみようかな。
豪華な庭の池に泳ぐ鯉にエサやりをするぽっちゃり……うん、似合わなさすぎるからやめとこう。
でも噴水は眺めてるとキレイだから落ち着いたら稼働させてみようかな。
「こちらがお屋敷の中になります。どうぞお入りください!」
オリビアが丁寧に説明しながら、懐から鍵を取り出して屋敷の扉を開けた。
豪華な扉が開かれ、玄関に足を踏み入れた瞬間、わたしたちはその豪邸っぷりに度肝を抜かれた。
「や、やばぁっ!? 玄関だけで余裕で寝れるくらい広いし、奥の大広間はまるで高級ホテルみたいになってるじゃん!?」
「うわぁーー! すっごい広ーい! 一階だけで追いかけっこできちゃうね!」
「こ、これはごっつい家でんなぁ! ドラゴンの里の長の邸宅にも負けずとも劣らん、とんでもない豪華さや!」
「ぷるーーん!!」
恐らくオリビア以外の全員が初めて体験したであろう本物のお屋敷のインパクトに、わたしたちは感嘆の声をあげる。
やっぱり目を引くのはその広さだね。
ナターリャちゃんも言っていたけど、本当に追いかけっこができるくらいの広さがある。
まあ、まだ誰も住んでいないので家具なんかが置いてないから実際に住んだ時よりもやや広く感じているのはあるだろうけど、それを差し引いてもとんでもない豪邸だ。
素人目でも床や壁なんかは上質な物を使っているっていうのが分かる。
それに二階へと続く大きな階段や、向こうにはオシャレな螺旋階段なんかも設計されていた。
そして上を見上げてみると、天井にはデカデカとシャンデリアが備えつけられている。
うわぁ……本物のシャンデリア初めて見たよ。
光はないから豪奢な感じはしないけど、それでもとても迫力が感じられるインテリアだね……。
「ふふふ、皆さんにも好評なようで嬉しいです! お部屋は大小合わせて二十以上ございますので、皆さんでお好きな部屋を使ってください」
「はいはーい! ナターリャ、このお屋敷探検したい! 一緒に探検しよ、コロネお姉ちゃん!」
「探検……探検かぁ」
こう見えても、わたしは十六歳のぽっちゃりだ。
世間から見たらまだまだ子供とはいえ、さすがに最低限の分別くらいつく年頃。
ナターリャちゃんは探検しようとはしゃいでいるけど――
「こんな豪華絢爛なトンデモお屋敷を見せられたら――探検するしかないよねぇ!!」
「やったー! 探検、探検~!」
「探検するんでっかご主人! こんだけ広かったらわいらも思いっきり動き回れまんな、サラはん!」
「ぷるるーん!」
わたしの探検開始の号令とともに、他の皆がにわかに騒ぎだす。
やっぱこんな豪邸に訪れたなら、一度は探検しとかないと後悔するからね!
そもそも、このお家はもうわたしたちのモノなんだから、好きなだけ探検しても文句は言われないはずだ。
「皆さんこのお屋敷を探検する気なのですね! ならば私も負けていられません! 皆さんの探検についていけるよう、全力でお部屋の解説をさせていただきます!」
オリビアはガッツポーズをして己を鼓舞している。
どうやらオリビアもノリノリのようだ。
こうも全力で物件の解説をされると熱血の不動産営業マンみたいになっているよ。
でも、それくらいやる気がみなぎっていた方が探検は楽しいよね!
「それじゃあ、探検開始だー!!」
「「「おおーーー!!」」」
掛け声と同時に、わたしたちは大はしゃぎで屋敷の中を走り出していった。
414
お気に入りに追加
1,219
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
10/1追記
※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。
また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?
来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。
パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」――
よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる