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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第52話  新たな従魔を仲間にしちゃう、ぽっちゃり

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「よーし、マギの実もゲットできたし、そろそろ撤退しようか」
「これでクエスト達成だぁ!」
「ぷるーん!」

 サラがマッドブラッディツリーを呑み込んで、わたしの元に帰ってくる。

 クエスト依頼ではマギの実百個の納品だったけど、ざっとマッドブラッディツリーを見た感じ、余裕で百個以上マギの実はゲットできている。
 余った分はギルドのクレアさんが喜んで買い取ってくれるだろう。

 クエスト達成に喜ぶナターリャちゃんと帰る準備をしていると、ふと足元でおどおどしているわいちゃんを見つけた。

「わいちゃんはこれからどうする? 《魔の大森林》の入口までなら着いていくこともできるけど――」
「ご、ご主人!」

 わいちゃんが、意を決したような表情でわたしの名前を呼んだ。

「ん? どうしたの?」
「も、もしよかったらなんやが、その……わ、わいもご主人の従魔にしてもらえへんやろか!!」

 予想外のお願いに、わたしは目を丸くしてしまう。

「え、わいちゃんをわたしの従魔に?」
「せ、せや! わいは今はまだ弱いけど、いつかドラゴンとしてきっとご主人のお役に立ってみせますさかい! ……や、やっぱりあかんやろか……?」

 わいちゃんは不安げな目でわたしをチラチラと見る。

 正直言って、わいちゃんが仲間になるなんてことは全く考えていなかった。
 だけど、わいちゃんと一緒にいて楽しかったのは事実だ。
 愛くるしい見た目とは裏腹におっさんみたいな関西弁を喋るもふもふドラゴンなんて見たことないし……。
 わいちゃんとはほんの一時いっとき行動を共にしただけだけど、わたしもいざわいちゃんとお別れするとなったら寂しく思ってしまう。

 だからわたしは、最高の笑顔でわいちゃんを迎え入れることにした。

「ううん! ダメじゃないよ! わいちゃんがいいなら、わたしと従魔契約を結ぼう!」
「え、ええんか!? やったー!!」

 パタパタと跳ねて喜んでいる。
 だけどまだ成長しきっていないからか、飛ぶことはできないみたいだ。

『フラッフィードラゴンがテイム可能になりました。テイムしますか? Yes / No』

 お、いきなりウインドウ画面が出てきた。
 これはサラと従魔契約をした時にも出てきたやつだね。
 わたしはもちろん、『Yes』をタッチする。

『テイムに成功しました。任意の名前をつけて下さい』

 画面が切り替わり、名前をつけるよう促される。

「名前か、そうだなぁ」

 サラの時は一から名前を考えたけど、わいちゃんはどうしよう。
 てか、わいちゃんにはもう『わいちゃん』っていう名前で呼んでしまっている。
 わたしの中ではかなりわいちゃんの名前が浸透しきってしまっているから……無理に新しい名前に変更する必要もないかな?

「名前はこれまで通り、わいちゃんでいっか!」

 わたしが名前を決定すると、わたしとわいちゃんの間に淡い光があふれる。
 どうやら、これで従魔契約が成立したようだ。
 その光が収まると、一つのステータス画面が表示された。

 ―――――――――――――――――――
【名前】 わいちゃん

【種族】 フラッフィードラゴン

【危険度】 E

【レベル】 1

【スキル】 炎のブレス
 ―――――――――――――――――――

 おお、これがわいちゃんのステータスか!
 ううん……やっぱり、弱いね。
 まあ生まれたてならこれくらいでも仕方ないか。
 成長性に関しては今後に期待するとしよう。

 わたしと従魔契約が完了したわいちゃんは、もふもふボディで仁王立ちして宣言する。

「わいはご主人の従魔のわいちゃんや! これからもどうぞよろしゅう、ご主人!」
「あはは、よろしくねわいちゃん」
「ぷるーん! ぷるーん!」
「おお、サラはんもよろしゅう!」

 サラもわいちゃんの隣で一緒に喜んでいる。
 ぷるぷるともふもふのちっちゃな魔物同士がたわむれている姿はとても可愛い。

 新たな仲間の加入を喜んでいると、ナターリャちゃんが控えめに近づいてきた。

「わいちゃん、コロネお姉ちゃんの従魔になったの?」
「うん、そうだよ!」
「そ、そうなんだ……」

 ナターリャちゃんも笑顔で応えてくれるけど、どこか表情にくもりがあるような気がする。
 どうしたのかな。
 わたしが声をかける前に、ナターリャちゃんは首をかしげた。

「……あれ?」

 ナターリャちゃんは、さっきマッドブラッディツリーがいた森の奥をじっと見つめている。

「ナターリャちゃん、どうかしたの?」
「うーん、なにかわからないけど、森の奥から嫌な感じがして……。淀んだ魔素のエネルギーみたいな……」
「え、なにそれ。もしかしてまた厄介な魔物が近くにいたり……?」

 アーミータラテクトからのマッドブラッディツリーの連戦で、わたしの精神はもうくたくただ。
 魔力カロリー的にはまだ戦っても問題はないけど、今日はもう十分に働いたのでこれ以上魔物と戦う気はない。

「面倒な事態になる前にさっさとこの場から撤退しよう!」
「うん! わいちゃんはナターリャが抱っこしてあげるね!」
「ええんでっかナターリャはん! 助かりますわ!」

 サラを体にまとわせたわたしは、わいちゃんを抱っこしたナターリャちゃんと一緒に、足早にこの場から離脱して帰路についた。



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