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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第51話 マギの実を手に入れちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「ジュッ、ジュッモモモオオオオ……!」
わたしの破壊エネルギーを凝縮した新魔法キャノンボールによって、マッドブラッディツリーの魔石がある場所に風穴があいた。
すると、マッドブラッディツリー顔がだんだんと崩れはじめ、枝や根っこから力が抜けていく。
「コロネお姉ちゃん! マッドブラッディツリーから魔素のエネルギーがなくなっていくよ!」
ナターリャちゃんが興奮した様子でわたしに腕をつかむ。
魔素のエネルギーがなくなったということは――
「やった! マッドブラッディツリーを倒せたよ!」
「すごいよコロネお姉ちゃん! あんな強い魔物を倒しちゃうなんて!」
「わ、わいも信じられへんわ……。ご主人ってバケモノ級の実力があったんやな……!」
いやぁ、一時はどうなるかと思ったけど、無事に倒せて良かったよ。
ナターリャちゃんも言っていたけど、たしかにこのマッドブラッディツリーは強かった。
まあ今回はマギの実を傷つけないように戦うっていう縛りつきの戦闘だったから若干わたしたちが不利ではあったけど、それを差し引いてもマッドブラッディツリーは強敵だったよ。
樹木型の魔物だからといって侮っちゃダメだね。
「さぁて、それじゃあマギの実をもぎっちゃおうか」
「あ、そう言えばナターリャたちはマギの実を採りにきたんだったね」
「あはは、そうだよナターリャちゃん。でもさすがにこんな大量のマギの実をもぎるのは大変だから、ここはサラに……って、ん?」
ゴゴゴゴゴ……と、謎の異音が聞こえる。
何だろうと不思議に思っていると、目の前のマッドブラッディツリーが、ぐぐぐっとこちらに傾いてきていた。
よく見ると、巨木を支えていた根っこがその重さに耐えきれずブチブチと千切れていく。
そうなると当然――
「え、ちょちょちょ――!」
「わわわわわ! コロネお姉ちゃんおっきな木が倒れてくるよぉ!」
「このままやと下敷きなってまうでぇ!!」
「み、みんな! 走って逃げろぉおおおおお!!」
わたしとナターリャちゃん、わいちゃんは各々ダッシュでこの場から離脱する。
わたしたちの後ろには、マッドブラッディツリーの巨木が上から覆い被さるように迫ってくる。
そして、ズシィィイイイイイン……! と、マッドブラッディツリーの体が地面に倒れた。
わたしたちは何とか、巨木の下敷きになる前に走りきれたようだ。
「あ、危なかった~……まさかこっち側に倒れてくるなんて」
「ナ、ナターリャもびっくりしたよぉ……」
「ぜぇ、ぜぇ……わ、わいもたまげたで……」
わいちゃんも、息をきらしながらも何とか生還している。
小さな体で頑張って走りきって偉いね。
最後の最後で倒した巨木が倒れてくるというハプニングは起きたけど、これで完全にマッドブラッディツリーを打ち倒した。
あとはマッドブラッディツリーにたくさん実ってるマギの実を収穫するだけだ。
ここから先は相棒の出番だろう。
「サラ、出てきて!」
「ぷるーん!」
わたしのジャージの隙間から、するん、とスライムが出てくる。
サラはスライムボディをぽよよんと跳ねさせ、地面に着地した。
「な、なんや!? いきなりスライムが現れよったで!?」
「ぷるん?」
突然現れたサラに、わいちゃんはびっくりしている。
対してサラも、だれ? というようにわいちゃんを眺めていた。
「この子はわいちゃんだよ。ドラゴンの赤ちゃんみたいで、いま一緒に行動してるの。仲良くしてあげてね」
「ぷるーん!」
「それで、こっちのスライムはサラ! わたしのパートナーなんだ!」
「パ、パートナーっちゅうんは、従魔っちゅう意味やろか?」
「うん。そうだよ!」
「せ、せやったんか。サラはん、よろしゅうお願いします」
「ぷるん!」
サラはスライムボディを伸ばしてわいちゃんのちっちゃい手をちょちょんと握る。
小さな魔物同士、仲良くできたみたい。
どっちもマスコットみたいで見てるととても和むね。
「それじゃあサラ! このマッドブラッディツリーを吸収して解体してくれるかな? マギの実はクエスト依頼で納品しないといけないから、特に慎重に解体してね」
「ぷるーん!」
サラはぽよんぽよんとジャンプして伐採されたマッドブラッディツリーの元まで行くと、一気に巨大化して樹木全体を呑み込んだ。
「な、なんやぁ!? 今度はでっかくなりよったぁ!?」
わいちゃんは飛び跳ねて巨大化したサラに驚いている。
ナターリャちゃんもそうだったけど、やっぱりあんな小さなサラがこんなに大きくなるとびっくりするよね。
隣にいるナターリャちゃんは二回目だから慣れたのか、すごーい! とはしゃいでいる。
そこで、わたしはマッドブラッディツリー戦でふと気になったことがあるので聞いてみた。
「そう言えば、ナターリャちゃんって魔素が見えるならもしかしてこの木が魔物だって気づいてた?」
「ううん。ナターリャは魔素のエネルギーが視えるだけだから、魔物かどうかはわからないの。魔石の位置も、魔素のエネルギーが集まってる場所を視て、何となく推測してるだけだから……」
「そうだったんだね」
「この木を見た時からすごい魔素のエネルギーがあることは視えてたんだけど、マギの実は魔食だって聞いてたからマギの実を生やしてる木もすごい魔素のエネルギーがあるものなのかと思って……。ナターリャがもっと早くこの木が魔物だって気づければ良かったんだけど……」
「いやいや! このマッドブラッディツリーを倒せたのはナターリャちゃんのおかげだよ! ナターリャちゃんが魔石の位置を割り出してくれなかったら、もっと長期戦になってただろうし!」
「えへへ、お役に立てたなら良かったよぉ」
ナターリャちゃんは照れ笑いして可愛い。
可愛いので、無意識に頭をなでなでしていた。
もじもじしながらも嫌がることはなく、ナターリャちゃんは受け入れてくれている。
やっぱり、魔石を持つ魔物に対してはナターリャちゃんの力はかなり有効みたいだね。
今日はかなりナターリャちゃんに助けられたよ。
「……ん? あれって……」
「コロネお姉ちゃん?」
ナターリャちゃんをなでなでしていると、地面に落ちている赤色のマギの実を見つけた。
ちょっとナターリャちゃんから離れて、落ちていたマギの実を拾い上げる。
まだ色がついているから、多分いまマッドブラッディツリーが倒れた拍子にちぎれて落ちたマギの実なのかな。
マギの実……マギの実か……。
わたしはもう一度マギの実に鑑定を発動してみる。
―――――――――――――――――――
名称:マギの実
代表的な魔食の一つ。魔素の含有量は魔食の中でも比較的高い。生で食べるといまいちだが、香料が強い食材と合わせればかなり食べやすくなる。
ただし、真っ白に変色したマギの実はマッドブラッディツリーが魔法発動に使用した後のものであるため、全ての魔素を吸い取られている。
それゆえ、このような白いマギの実は魔食としての価値はなくなり、一般的な食材としての価値もほぼない。
―――――――――――――――――――
生ではいまいちと表示されているけど、一体どんな味がするのか興味がある。
わたしはクリーンの魔法をかけてマギの実をキレイにしてから、恐る恐るがぶりとかじってみた。
もぐもぐと食べてみると。
「………………うん。いまいちだね」
食感はリンゴに近いけど……味は微妙だ。
なんか甘くないリンゴを水でびちゃびちゃに浸して食べてるみたいな感じ。
吐き出すほど不味くはないけど全く美味しくはない。
まさにいまいちと言わざるを得ないね。
アーミータラテクトの体液よりは格段にマシだろうけど、やっぱり魔食に分類される食材の味は微妙みたいだ。
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