51 / 247
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第50話 必勝法を思いついちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「な、なにが起こったの!?」
マッドブラッディツリーの叫びによって現れた、何体もの魔物たち。
その魔物は種類はバラバラで、オークやゴブリン、そしてさっきわたしと戦ったアーミータラテクトもちらほらと散見される。
そんな突如現れた多くの魔物たちは、引き寄せられるようにわたしたちの元に集まってくる。
まさか、この魔物たちはマッドブラッディツリーが集めたの?
この人面樹め、まだそんな隠し技を持っていたとは。
とはいえ、集まってしまったものは仕方がない。
襲ってくるなら迎え撃つしかないね。
「コロネお姉ちゃん! あれ!」
わたしが引き寄せられてきた魔物らに向けて魔法を撃とうかと思った瞬間、ナターリャちゃんがマッドブラッディツリーの方へ指をさす。
何事かと見てみると、集まってきた魔物たちはわたしの方ではなく、どうやらマッドブラッディツリーの方へ引き寄せられているようだった。
一体どういうことなのかと様子をうかがっていると、地面から触手のような根っこがボコボコとうねり出てくる。
それらの根っこは蛇のようにオークやゴブリンらを絡めとり、ギチギチと魔物の体を締めつけていく。
「ジュッジュッジュッッモモモオオオオオ!!」
その直後、マッドブラッディツリーの根っこに絡め取られた魔物たちが、急激に痩せ細っていく。
あれだけ大きな肉体を有していたオークでさえも、瞬く間にミイラのように干からびていく。
「あれはまさか……魔物を吸収してるの!?」
「ひぃぃいいいいい!! オークのミイラやぁああああああ!!」
足元でガタガタ震えているわいちゃんは放っておいて、わたしは目の前の光景を眺める。
よく考えれば、マッドブラッディツリーという魔物の名前には違和感があるよね。
マッドとツリーはわかるけど、今のところブラッディの要素が見当たらなかった。
ブラッディと言えば日本語で『血』という意味だけど、この魔物には血の要素は特に思いつかなかったからね。
「コ、コロネお姉ちゃん! あの木の上――」
「新しいマギの実が生えてきた……!?」
魔物をミイラにして血などを吸い取ったマッドブラッディツリーの枝が光りだし、そこから新たなマギの実がむくむくと成長していく。
根っこの吸収攻撃と、今のマギの実の生育で理解したよ。
つまりこのマッドブラッディツリーは、他の魔物をああして根で絡めて血やら肉体やらを吸い取って、そこから得た養分でマギの実を実らせているんだ。
もしかすると実らせる養分に魔物の血を使っているから、マギの実には魔素が含まれていてるのかもしれないね。
「今思えば、このマッドブラッディツリーの周辺だけ不自然なスペースがあるよね。木も生えてないし、よく見ると地面がボコボコしてる」
さらにこのマギの実を探しにいく道中、全く魔物に遭遇しなかったのも不思議だったけど、それも合点がいった。
あくまで推測の域は出ないけど、多分ここら周辺の魔物の大半はすでにこのマッドブラッディツリーの養分にされてしまったのだろう。
それならこの一帯に魔物が出没しない理由も納得できるし、マッドブラッディツリーが大量のマギの実を実らせているのも説明がつく。
つまりここら一帯は、マッドブラッディツリーの縄張りということだ。
「ジュッッモモモオオオオオ!!」
魔物を吸収して魔力を回復したマッドブラッディツリーは、地面を割って触手のようにしなる巨大な根っこで攻撃してくる。
わたしたちもさっきのオークよろしく血肉を吸い取って魔力の補給源にする魂胆か。
しかし、そのような根っこもわたしの展開するバリアは貫けない。
「ご、ご主人! 周りが根っこでぐるぐる巻きにされとりますがなぁー!!」
「バリアで守られてるから大丈夫だよ。……だけど、これじゃ身動きが取れないね」
バリアの周りを大蛇のように巻きつき、ドスドスと貫通してこようと無数の根っこが攻撃してくる。
なのでわたしは、ナターリャちゃんとわいちゃんの位置を確認しつつ、全方位に風魔法を撃ち放つ。
ズバババババババババ!! と、周囲に這っていた根っこが細切れになる。
根っこを切り刻んで妨げられていた視界が晴れると、そこには雄叫びをあげて激昂しているマッドブラッディツリーが現れた。
「ジュッッモモモモモモモオオオオオ!!」
マッドブラッディツリーが大きく揺れ、新しく実らせた緑色のマギの実をドサドサと落下させる。
次の瞬間、特大のウインドカッターが何発も連続でわたしたちに襲いかかる。
念のためバリア魔法にさらに魔力を流して強度をあげたので、巨大ウインドカッターの魔法攻撃も無力化できた。
だけどわたしたちのバリアの周りは、地割れのようにウインドカッターで切りつけられているので、威力はかなり高そうだ。
わたしもウインドカッターを発動してマッドブラッディツリーを伐採するけど、やはり回復魔法を使われてすぐに切断面を修復される。
「風魔法を使えば根っこでも幹でも切り刻めるけど……これじゃキリがないよね。何より回復魔法が厄介すぎる」
このまま戦ってマッドブラッディツリーの魔力を減らしていっても、またオークなどの周辺の魔物を引き寄せて根っこで魔力ドレインされたら意味がない。
同じ魔法を使える魔物で言うとさっき戦ったジェネラルタラテクトがいるけど、多分このマッドブラッディツリーの方が何倍も強いだろう。
なにせマッドブラッディツリーは使える魔法属性が複数あるからね。
ジェネラルタラテクトに関してはナターリャちゃんのファインプレーで簡単に倒すことができたけど…………ん?
「魔法を扱う魔物――――魔石!」
そう言えばあの時ナターリャちゃんは、魔法を使う魔物には魔石があるって言ってたよね。
そして、その魔石を破壊すれば魔物は即死するとも――
わたしは傍にいるナターリャちゃんにたずねる。
「ナターリャちゃん! マッドブラッディツリーの魔石の場所がどこにあるかわかる!?」
「う、うん! 魔素の流れからみて……多分、あそこだよ!」
ナターリャちゃんが指差したのは、幹の上部、ちょうど幹から枝葉が派生していく部分だった。
その部分は大きな枝と葉っぱで隠されていて、あまりよく見えない。
もしかして弱点だからあまり見えないように隠しているのかな。
だけど、場所が分かればこっちのもんだよ。
「あとは魔法で魔石を破壊すればいいんだけど……今回はちょっと趣向を変えてみるか」
普通に風魔法を撃ち込んで魔石を一刀両断してもいいんだけど、もしかすると再生魔法で生き返るかもしれないからね。
万に一つも復活の可能性がないようにするなら、魔石そのものを一瞬で消し飛ばすのが一番だ。
なのでわたしは、破壊をイメージして魔力を練り上げた。
わたしの体から、黒い魔力が漏れ出てくる。
「魔力を圧縮して濃度を上げて――発動! キャノンボール!!」
破壊のエネルギーを蓄えた魔力の砲弾は一直線にマッドブラッディツリーに突き進んでいき、魔石があるポイントに風穴を開けた。
475
お気に入りに追加
1,219
あなたにおすすめの小説
婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?
江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】
ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる!
※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。
カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過!
※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪
※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
10/1追記
※本作品が中途半端な状態で完結表記になっているのは、本編自体が完結しているためです。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。
また、日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
呪いのせいで太ったら離婚宣告されました!どうしましょう!
ルーシャオ
恋愛
若きグレーゼ侯爵ベレンガリオが半年間の遠征から帰ると、愛するグレーゼ侯爵夫人ジョヴァンナがまるまると太って出迎え、あまりの出来事にベレンガリオは「お前とは離婚する」と言い放ちました。
しかし、ジョヴァンナが太ったのはあくまでベレンガリオへ向けられた『呪い』を代わりに受けた影響であり、決して不摂生ではない……と弁解しようとしますが、ベレンガリオは呪いを信じていません。それもそのはず、おとぎ話に出てくるような魔法や呪いは、とっくの昔に失われてしまっているからです。
仕方なく、ジョヴァンナは痩せようとしますが——。
愛している妻がいつの間にか二倍の体重になる程太ったための離婚の危機、グレーゼ侯爵家はどうなってしまうのか。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる