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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第48話 擬態を暴いちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む赤いマギの実をもぎった瞬間、わたしは業火の炎に呑み込まれた。
視界が紅の炎に染められる。
なるほど。
これがわいちゃんが言っていた謎の魔法攻撃というやつか。
「コロネお姉ちゃぁああああん!!」
「ご、ご主人んんんっ!!」
地上からナターリャちゃんとわいちゃんの叫びが聞こえる。
わたしはボディバリアの魔法があるので特にダメージは受けていない。
このバリアはかなり性能がいいので、炎はもちろん、炎から伝わる熱なども遮断しているようだ。
バリア内はとても快適なので別にこのままでも問題はないんだけど、ずっとこの状態だとナターリャちゃんたちが卒倒してしまうかもしれないのでこの炎を何とかするか。
魔力を体の周囲に展開させる。
「炎を鎮火するといったらやっぱ水だよね~……ってことで、ウォータードーム!」
わたしは自分の体を包む炎のさらに外側からドーム状の水魔法を展開し、炎全体を包み込む。
全ての空間を水で埋めつくされて逃げ場を失った炎は、一瞬にしてジュワワッ! と消えてしまった。
そして水魔法を華々しくパァン! と弾けさせ、中からわたしがジャンプして地上に降り立つ。
「すちゃっ! と。いやぁいきなり炎に包まれてビックリしたよ。あははは~」
炎を鎮火して降ってきたわたしを見て、ナターリャちゃんとわいちゃんが抱きついてくる。
「コ、コロネお姉ちゃぁああん! ナターリャ、コロネお姉ちゃん死んじゃったかと思ったよぉ!」
「ご主人ー! わいはご主人が丸焼きにされてもうたと思うてましたぁあああ!」
「あはは、ごめんね。わたしはこの通り無事だから安心してよ」
「コロネお姉ちゃん~~!」
「ご主人~~!」
泣きながら抱きついてくるナターリャちゃんとわいちゃんをなだめる。
そんなに心配させてしまうとは、仕方ない状況だったとはいえ少し申し訳なくなるね。
落ち着くまでしばらくなだめてから、わたしは戦果報告をする。
「あ、そうだ。わたしマギの実をもぎってきたんだよ。ほら、見てこれ」
わたしは手に握っていたマギの実を見せた。
「うわぁ、真っ白な果物だね」
「ちょっと美味そうでんな」
ナターリャちゃんとわいちゃんはマギの実を興味深そうに見ているけど、わたしは頭をかしげる。
「あれ、マギの実の色が変わってる……?」
わたしの手の中にあったマギの実は、真っ白になっていた。
これをもぎった時は赤いマギの実だったはずだ。
いつの間に色が変わったんだろう?
そして、もう一つ気づいたことがある。
「……そう言えば、あれだけの炎があったってのにマギの実の木には一切燃え移っていないね」
さっきわたしを呑み込んだ炎の塊。
その時わたしはマギの実の木の枝にいたので、間違いなく炎は周辺の幹や枝、葉っぱなどにも燃え移っているはずだ。
それなのにまるで何事もなかったかのように無傷とは……まさかとは思ったけど、さっきの魔法攻撃はもしかして……。
「試しに調べてみるか。鑑定!」
―――――――――――――――――――
名称:マッドブラッディツリー
《魔の大森林》に生息する魔物。
―――――――――――――――――――
わたしがマギの実の木に鑑定を発動すると、魔物の名前が表示された。
マッドブラッディツリー!?
やっぱり、この木自体が一種の魔物だったのか!?
まさか樹木型の魔物がいるなんて……。
いや、ここは《魔の大森林》というくらいなんだから、こういった樹木型の魔物がいてもおかしくはないか。
ファンタジー作品だと、人面樹みたいなモンスターも出てきたりすることもあるもんね。
とりあえずわたしは、ナターリャちゃんとわいちゃんの周りにバリア魔法を展開する。
「コロネお姉ちゃん? どうかしたの?」
「鑑定で調べてみたんだけど、どうやらこの木はマッドブラッディツリーっていう魔物みたいだよ。さっきの炎の魔法攻撃は、この木がやったみたい」
「な、なんやて!? この木が魔物なんか!?」
わいちゃんがすごく驚いている。
同じ魔物なんだったらこういうタイプの魔物がいるのも知らないの? とも思ったけど、そう言えばわいちゃんは《魔の大森林》に生息する魔物じゃないんだった。
それにまだ生まれて間もないって言ってたから、知識が少ないのも無理はないか。
ま、だけどこの木が魔物だと判明したなら対処はできる。
「わいちゃん、ちょっとこのマギの実持ってて」
「え、り、了解や!」
「コロネお姉ちゃん、どうするの?」
「この木が魔物だってわかったから、ちょっと切り倒してみるよ」
森林伐採をするのは気が引けるけど、これは本当の木ではなく樹木に扮した魔物だ。
もしかしたらこのマッドブラッディツリーは本当の木に擬態しているだけかもしれないしね。
わたしは右手をマッドブラッディツリーに突き出し、風の魔力を集中させる。
「魔力多めの――ウインドカッター!」
巨木を切り倒すには生半可な切断では足りないので、結構な魔力を注いで大規模のウインドカッターを発動させる。
ウインドカッターは一直線にマッドブラッディツリーの根本を切り裂き、ズババァアアン! と巨木を完全に切断した。
すると、どこからともなく断末魔の叫びが響きわたる。
「ジュモモモモモモモォォオオオオオオオオ!!!」
巨木の幹がどんどん歪んでいき、人面樹のような化け物の顔が現れた。
やっぱり、こいつは樹木に擬態していただけだったんだね!
「やっと本性を現したな、マッドブラッディツリー!」
根本から切断されたマッドブラッディツリーは、おどろおどろしい叫びをあげながら、わたしたちを睨みつけた。
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