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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第47話  マギの実をもぎっちゃう、ぽっちゃり

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「ぷはぁ~、食べた食べたぁ~。ごちそうさんです!」

 ギガントボアのお肉を何本かたいらげた後、わいちゃんは、満足そうに息をはいた。
 自分のまんまるなお腹をポンポンと叩いている。
 だけど元から丸っこいもふもふボディなのであんまり体型の変化はわからないね。

「すごい食べっぷりだったね。お腹いっぱいになった?」
「こんなにお腹いっぱいになったんは初めてや! ほんまおおきに!!」
「わいちゃん、元気になって良かったね!」
「ナターリャはんもおおきに!」

 わたしとナターリャちゃんに感謝を述べるもふもふドラゴンこと、わいちゃん。
 まるまるしていて可愛らしい。
 ただ、その見た目とは裏腹に、口調はコテコテの関西弁だ。

 わいちゃんの可愛い外見とおっさんみたいな口調のギャップにはまだ慣れないね……。

 そんなことを考えていると、ふとマギの実のことを思い出した。
 わいちゃんと出会ったから忘れていたけど、わたしたちはマギの実を探索している途中だったのだ。
 いい機会なので、わいちゃんにも知ってるか聞いてみよう。

「そうだ。わいちゃんって、マギの実って知ってる? こんな感じの果実なんだけど」

 わたしはマギの実のイラストが描かれたクエスト用紙をわいちゃんに見せる。
 わいちゃんは、なんや? と言いながらクエスト用紙を受け止った。
 そしてマギの実のイラストを見た瞬間、おったまげたように声をあげる。

「ああああ! この果物は、アイツやないかい!」
「え、わいちゃんマギの実を知ってるの!?」
「忘れもせんで! なんせ、わいが足にケガを負ったんは他ならんこの果物のせいやからな!」

 え、そんな危険な目にあったの?
 やっぱりマギの実を木からもぎってくるだけの簡単なお仕事ではなかったのか……!

「それってどういうこと? このマギの実って襲ってきたりするの?」
「いやぁ、それがようわかりませんねん……。わいがお腹が減ってこの果実を取ろうと思たら、どこからともなく魔法が放たれて……」
「その時の魔法を食らったから、さっき足をケガしていたんだ」
「せや……。やからちょっとこの実はトラウマなってますねん……」
「そうなんだね……」
「わいちゃん、かわいそう……」

 悲痛な面持ちを浮かべるわいちゃんに、わたしとナターリャちゃんも同情してしまう。
 可愛らしいもふもふボディだけど、かなり過酷な生活を送ってきたようだ。
 だけど、わたしたちはマギの実を探している。
 なのでわいちゃんには気の毒かもしれないけど、少しお願いしてみよう。

「実はわたしたちはこのマギの実を探してるんだけど、わいちゃんが見たっていう場所まで連れていってくれないかな?」
「え、ご主人らはあの実が目当てやったんか? またあの場所に行くのはちょっと怖いけど……ええで! わいがマギの実とやらの場所まで案内させてもらいます!」
「ほんと!? ありがとう!」
「で、でも、本当にいいのかな……?」
「大丈夫や! こう見えてもわいだってドラゴンの端くれ! これくらいのことでへこたれてなんかおられへん! やから心配には及びまへんでナターリャはん!」

 わいちゃんは、ちょこんと胸を張って宣言する。
 もふもふで可愛らしい仕草だけど、中身はかなり男気あふれる性格をしているようだ。

「ほな皆さん、わいについて来てくださいな! マギの実とやらがあったのは、こっちでっせ!」

 わたしたちはわいちゃんの案内の元、マギの実が生えているエリアまで行くことになった。



 〇  〇  〇



 あれから五分ほど歩いたところで、ピタリとわいちゃんが立ち止まった。

「到着したで、ご主人たち。あれがマギの実でっせ!」

 わいちゃんは小さな手を伸ばした。
 その手の先を見ると、二十メートルほど先に一本の大きな木が生えていた。
 その木は青々と葉っぱを繁らせていて、枝には無数のカラフルな果実が実っている。

「あれがマギの実か……!」
「クエスト用紙に描かれてるイラストともかなり似てるよ、コロネお姉ちゃん!」

 クエスト用紙を握りながら、ナターリャちゃんが報告してくれる。
 それならあれがマギの実で間違いないだろう。

「でも、意外と普通の果物みたいだね」

 形も大きさもリンゴによく似ている。
 一つ違う点があるとしたら、マギの実は一個一個の果実の色が異なるというところだろうか。
 赤いマギの実もあれば、青いマギの実や緑のマギの実、よく見ると黒いマギの実なんかもみのっている。
 ……あの黒いマギの実は腐ってない?

 それぞれが別の色をしているため、マギの実の木はとてもカラフルに見える。

「ご主人、油断は禁物でっせ。わいもあの実を取ろうとしたら謎の魔法攻撃を受けたさかい……!」
「そうだね。気をつけて近づいてみよう」
「ナターリャ、いつでも戦えるよう準備しておくね!」

 ナターリャちゃんも弓を携帯して、戦闘態勢はバッチリみたいだ。
 いつどこから魔物が襲ってくるかわからないからね。

 わたしが先頭になって、草木をかきわけてマギの実がる巨木まで行く。
 そうして目の前まできてみたけど、間近で見るとやっぱりかなり大きいね。
 普通の木の十本分くらいの太さと存在感がある。

 でも、かなり近づいたけど今のところ魔物が襲ってきたりする様子はない。

「それじゃあ、わたしが適当に一個マギの実をもぎってくるよ。ナターリャちゃんは、わいちゃんとここで待ってて」
「わ、わかったよ!」
「ご主人、気ぃつけてな!」

 ナターリャちゃんとわいちゃんのエールを受けながら、わたしは大きなマギの実の木を見上げる。
 マギの実は枝にたくさん実ってるんだけど、地上から手が届く距離じゃない。
 だからマギの実をもぎるには木登りをする必要があるね。
 ふむ。
 そんじゃ、手頃なマギの実でももぎりますか。

「とうっ!」

 わたしは身体強化を発動し、マギの実の木に飛び上がり、太い幹を蹴って大きなジャンプする。
 これぞ恐らく世界初のぽっちゃり壁キック!
 わたしは華麗な壁キックでマギの実の枝に着地した。

「お、おおお……よし、わたしが乗ってもギリギリセーフ」

 わたしの体重面が少し心配だったけど、枝もかなり太かったのでわずかにミシミシっとたわんだだけで済んだ。
 枝ごとボッキリ折れなくて良かったよ。

「さーてと、マギの実はどれにしようかな~」

 周りには色とりどりのマギの実がっている。
 わたしは注意深く枝の上を移動すると、わたしの頭上にぶらさがっているマギの実が見えた。
 キレイな赤色で、形も丸いので本当にリンゴみたいだ。

「美味しそうだし、これにしよっかな。そりゃ!」

 わたしはブチッと赤いマギの実をもぎった。
 手の中のマギの実を見てみると、つやつやとしていて思ったより美味しそう。

 ――――ブォッ!

「ん? ブォッ?」

 なんだろう今の音。
 まるで、ライターで火をつけた時のような音だった。
 わたしが謎の異音を感じ取った瞬間――

 ――ボォォォオオオオオゴゴゴゴオオオオ!!

 突如とつじょどこからともなく巨大な炎が吹き出し、わたしの体を業火で包み込んだ。



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