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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第44話 バリア魔法を強化しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むさっきのアーミータラテクトとの戦いでわたしは一つの教訓を得た。
それはずばり、魔物は不意打ちをしてくることもあるってことだ。
思い返せば、最初に現れたアーミータラテクトは不意打ちでわたしの足に糸をまきつけてきたからね。
あの時、糸はわたしの右足に絡みついてしまった。
幸いにもただの獲物を絡めとるための糸だったから大事には至らなかったものの、仮にあの糸に毒や酸などの属性があったら大変なことになっていたかもしれない。
「というわけで、バリア魔法の改良を進めたいと思います!」
「う、うん……?」
突然のわたしの宣言に、ナターリャちゃんは困惑しているようだ。
「さっきアーミータラテクトの群れと戦った時にわたしのバリアを展開したでしょ?」
「あのとっても強いバリア!? ガード能力もとっても高いのに、しかも内側から魔法攻撃もできる最強のバリアだよね!」
「そう。わたしも今まであのバリアは最強だと思っていたよ。だけど、そんなことはなかった。なんせ、初撃のアーミータラテクトの糸攻撃はもろに食らってしまったからね」
「あ、そういえばコロネお姉ちゃん、糸で足を取られてひきずられてたね……」
あの時はみっともない姿を見せてしまった。
ジャージのお尻の部分が破れてなくて良かったよ。
「つまり、わたしのバリアは発動してしまえば最強なんだけど、発動前に攻撃されちゃうとどうにもならないってのが弱点なんだ」
「た、たしかにそうかも」
「そこで、バリア魔法の改良版を考案するわけです! 次に魔物から不意打ちを食らっても対処できるようにね」
「でも、そんなことできるの?」
ナターリャちゃんは素直に聞いてくるが、わたしはすでに一つの答えにたどり着いている。
あとは、それを実現できるか試すだけだ。
「一発で言うなら、要は常に周囲にバリアを展開してればいいんだよ。だけど、さっきみたいな巨大なドーム状のバリアを展開し続けるのは魔力消費がかかりすぎてしまう」
「それじゃあどうするの?」
「それはね、バリアをドーム状じゃなくて、わたしの体に沿うように展開すればいいんだよ! こんな風にね!」
言わば、超薄型のバリアを体全体にまとわせるような感じだ。
そのイメージで、バリアを発動してみる。
すると、わたしの体のラインに沿うように光の膜が現れた。
だけど、なんか半透明の光みたいなのがちょっと視界不良だな。
バリアの色を透明になるようイメージすると、淡い光がすぅっと消えていく。
よし、成功だ!
「ほら、できたよナターリャちゃん! 名付けてボディバリアの完成だ!」
「ボ、ボディバリア!?」
ナターリャちゃんは驚きに体を震わせている。
「……なんにも見えないけど、本当にバリアは張られてるの?」
「うん。しっかり魔力が流れてるのを感じるから、張れてると思うよ。嘘だと思うなら、軽くパンチでもしてみてよ」
「パ、パンチ? うーん、そ、それじゃあ」
ナターリャちゃんは控えめに小さな拳を振り上げるとわたしのお腹をパンチした。
「えいっ!」
ナターリャちゃんの拳は、わたしのお腹にヒットする直前で透明の膜に遮られる。
「やった、成功だ! 衝撃とかもきてないし、痛みもない!」
「す、すごいねこのバリア! ミスリルみたいにカチカチなのかと思ってたけど、なんだか水面に遮られてるみたいな、不思議な感じ」
ナターリャちゃんはわたしのバリアを興味深そうに触っている。
バリアはナターリャちゃんの手が触れるたび、水面に手のひらを浮かばせるように波紋のようなものが出て内部への侵入を遮っている。
今回はナターリャちゃんが怪我をしないように、ソフトモードのバリアを展開しておいて正解だったね。
「それじゃ、ナターリャちゃんにもボディバリアをかけてあげるね」
「え、ナターリャにもかけられるの?」
「多分できると思うよ。ちょっとじっとしててね」
わたしは無防備に立つナターリャちゃんに向けて、ボディバリアを発動する。
すると、ナターリャちゃんの小柄な体を沿うように透明のバリアが展開された。
「オッケー。できたよ」
「ええ、もう!? 本当にできたの?!」
「うん。ほら」
不審な目を向けるナターリャちゃんのおでこに、デコピンをしてみる。
すると、わたしの中指はおでこに到達する前にバリアで防がれた。
「ほ、本当にナターリャにバリアが発動してる……」
「だから言ったでしょ? このボディバリアがあれば、魔物から不意打ちを食らっても怪我をしなくなるよ!」
しいてデメリットを挙げるなら、このバリアを発動している最中はわたしの魔力が垂れ流しになってしまうということだ。
だけど発動してみた感じ、それほど大量に魔力を消費するってわけでもない。
別に二十四時間ノンストップでボディバリアを発動させていたとしても、さほど魔力は減らないだろう。
これなら、わたしとナターリャちゃんの二人にバリアを施しても問題なさそうだ。
サラは基本的にわたしのジャージの中にいるから、わたしのボディバリアで賄えるしね。
「だけど、バリアがあるからって油断はしちゃダメだよ? できるだけ魔物からの攻撃は食らわない方がいいからね」
「わかった! ナターリャ、油断しないよ!」
ナターリャちゃんは元気に返事をしてくれる。
本当に素直でいい子だなぁ。
わたしがナターリャちゃんを微笑ましく思っていると、ナターリャちゃんはわたしにぐいっと近づいてきた。
「さっきの電気の大魔法の時もそうだったけど、コロネお姉ちゃんって天才魔法使いなんだね! ナターリャ、びっくりしちゃった!」
「そうかな? なんとなくイメージでやってるだけだけど」
「ううん! イメージだけじゃこんなに柔軟に魔法の仕組みを変えたりできないよ! 簡単にできるのは、コロネお姉ちゃんが天才だからだよ!」
ナターリャちゃんはキラキラと尊敬の眼差しでわたしを見つめてくる。
そんなに手放しで褒められるとなんだかむず痒くなっちゃうね。
「ま、まあ、それはさておき、これで改良版のバリアも完成した! それじゃあ早速、マギの実の探索を再開しようか!」
「うん! ナターリャ、頑張ってマギの実探すよ!」
「ぷるーん!」
わたしの掛け声に、ジャージの中にいたサラも答えてくれる。
防御面の心配事も解決したし、ここからは本格的にマギの実をもぎりに行きますか!
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