ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

文字の大きさ
上 下
41 / 265
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第40話  “アーミー”の恐ろしさを思い知っちゃう、ぽっちゃり

しおりを挟む

 全方位からわらわらと出てきた巨大蜘蛛たち。
 数えてないけど、いま表に出てきてる蜘蛛だけで数十体はいる。
 そしてまだまだ森の中にいるであろう蜘蛛も含めると、全部で相当な個体数になるだろう。

「あわわわ……! ど、どうしようコロネお姉ちゃん! 完全に囲まれちゃったよぉ!」
「うぐぐ、だ、大丈夫だよナターリャちゃん!」

 わたしはナターリャちゃんを安心させるように言う。

 たしかに、このアーミータラテクトはわたしが戦ってきた魔物の中で最多の個体数だ。
 見た目もキモいし、軽く絶望してしまってもおかしくないかもしれない。
 だけど、こういう包囲戦や魔物の群れに襲われた際の対応は理解してあるのだ。

「バリア魔法発動!」

 そう唱えると、わたしとナターリャちゃんの周囲にドーム状の光の膜が現れる。
 念のため、普段よりもっと魔力を込めてバリアの強度を上げておく。

「コ、コロネお姉ちゃん、これは……」
「わたしのバリア魔法だよ。これがあれば蜘蛛からの攻撃は防げるから心配いらないよ」
「す、すごい! バリアをこんなに広範囲に展開できるなんて……やっぱりコロネお姉ちゃんの魔力は特別なんだぁ」
「ふっふっふ、しかもそれだけじゃないんだよ。こうして、バリアの内側から攻撃することもできるんだ。――サンダーボルト!」

 サンダーボルトは、バリアをすり抜けて外側に密集している蜘蛛に命中した。
 その蜘蛛はピクピクと長い八本脚を痙攣させつつ、倒れる。

 ブラックウルフの群れと戦った時もこうしてバリアを張りつつ、安全圏から魔法で倒していくという戦法を取ることで快勝したのだ。
 まさしく魔物の群れに対する必勝法である。

「そ、そんなこともできるの!? ……ナターリャも試してみていい?」
「うん、多分大丈夫かな?」

 このバリアを貫通させての魔法攻撃はわたししか試したことがないけど、恐らく仲間の魔法でも大丈夫なはず。
 少し曖昧さを残すわたしの返答だったけど、ナターリャちゃんは意気揚々と弓を出現させ、矢を魔法で製造する。

疾風弓しっぷうきゅう・破壊の矢!」
「ギシャァッ!?」

 ナターリャちゃんが発射した矢は、バリアをすり抜けて一体の蜘蛛の頭に刺さり、少しだけ頭部を破壊した。

 おお、やっぱりわたしのバリアは仲間の魔法でも通すことができるみたいだ。
 だけど、ナターリャちゃんがった蜘蛛は、頭に刺さった矢で致命傷を負った気配はない。
 むしろ、ギシャギシャと叫んで怒ってるっぽい。
 矢の一撃で魔物を倒すのは難しいって言ってたけど、どうやらそれは本当みたいだ。

「うぅ、やっぱりわたしの矢じゃ威力が足りないみたい……。ごめんなさい、コロネお姉ちゃん……」
「全然気にしないでいいよ! これくらいの魔物なら余裕で倒せるから!」

 わたしはサンダーボルトを撃って、ナターリャちゃんの矢が刺さった蜘蛛にトドメを刺す。
 念のため普段より強めの魔力を込めておいたので、蜘蛛は一発で倒すことができた。

 うーん、だけどこの蜘蛛たちには別の魔法を使った方がいいのかなぁ。
 サンダーボルトでもいいんだけど、地味に効き目が悪いっぽいのがネックだ。
 多分、一番効果がありそうなのは斬撃系の攻撃だと思うんだよね。
 あの蜘蛛のブヨブヨのお腹とかめっちゃ斬りやすそうだし、斬撃ならわたしも風魔法で代用できる。

 ただ、問題は倒した後だ。
 あんな巨大蜘蛛のお腹を風魔法で切断なんてしたら、体液がぶちまかれて気持ち悪いことこの上ない。

 ……ちょっと魔力の燃費は悪いけど、これまで通り電撃魔法で倒すのが無難か。
 朝からさんざんご飯を食べまくって魔力カロリーはバッチリ補給されているから、少しくらい無駄使いしても問題ないだろう。

「それじゃ、ちまちまサンダーボルト撃ってても面倒くさいんで、一気に片付けちゃいますか!」
「一気に片付けるって?」
「ふふふ、まあ見ててよナターリャちゃん。わたしの魔法の真髄を披露してあげようじゃない」

 バリアの外側にうじゃうじゃと湧いているアーミータラテクトを見る。
 わたしのサンダーボルトで仲間がやられたことに怒り心頭らしい。

 全方位から続々と極太の糸が放たれたり、バリアを食い破ろうと持ち前の鋭利な牙で切り裂こうとしている。
 しかし、わたしのバリアはびくともしない。
 襲ってきた糸はナイロンが水を弾くように跳ね返し、蜘蛛の牙や爪での物理攻撃はそもそも効いていない。

 わたしのバリアを破るという無駄な努力をしている無数のアーミータラテクトに同情しつつ、わたしは体中に魔力を巡らせる。
 それらから漏れ出た一部の魔力が、バチバチとわたしの体に火花を散らした。

「コ、コロネお姉ちゃん、漏れ出てる魔力量がすさまじいんだけど……まさか大魔法を撃つつもり!?」
「そうだよ。動くと危ないから、じっとしててね」
「わ、わかった!」

 ナターリャちゃんはビシッと直立して固まった。
 律儀に言うことを聞いてくれる子で助かるよ。
 まあわたしの方でもナターリャちゃんには絶対に被弾しないよう細心の注意を払っているけど、万が一ってこともあるからね。

「……いい感じに魔力も溜まってきた。ふははは、食らうがいいアーミータラテクトたちよ! わたし初の範囲攻撃魔法――スパークリングボルトッ!!」

 大魔法を発動した瞬間、辺り一帯に青白いスパークがほとばしった。
 



しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

処理中です...