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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第38話  巨大蜘蛛に鳥肌が立っちゃう、ぽっちゃり

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 灰色の体表、ブヨブヨのお腹、細長い八本の脚。
 八つの赤い目はわたしを捉えていた。
 そして最も特徴的である白い糸は、蜘蛛くものお腹の先っちょからわたしの右足に巻きついている。

 わたしは森から現れた蜘蛛の魔物を見て、体に悪寒が走った。

「ひぃいいいいい、なんじゃあの蜘蛛キモチワル! 《魔の大森林》には虫系の魔物もいるの!?」

 虫系は……発狂するほど拒否反応があるわけじゃないけど、不意に現れたら声を上げてしまうくらいには遠慮したい存在だ。

 さらに最悪なことにこの蜘蛛、めっちゃデカイ。
 普通に軽自動車くらいのサイズがある。
 ハエトリグモみたいなミニサイズの蜘蛛ならまだ可愛げもあるかもしれないけど、こんなでっかい蜘蛛は救いようがない。
 控えめに言ってキモすぎる。

「ギシシャアア!」

 わたしが嫌悪感に襲われているのを、怯えていると認識したのか、自分の方が強いということをアピールするように蜘蛛は脚をバタつかせた。
 すると次の瞬間、ぐんっ! とわたしの足に巻きついた糸が引っ張られる。 

「うわぁ!?」

 足を取られたわたしはバランスを崩して、尻餅をついた。
 そのまま、ずざざざざ、とすごい勢いで引きずられてしまう。
 その糸を操る巨大蜘蛛は、牙をキンキンと鳴らしてわしゃわしゃと動き回っていた。
 どうやらこの蜘蛛はわたしをエサとして認識したようだ。

「コロネお姉ちゃん! 待ってて、いま助けるから!」
「大丈夫! これくらいなら何とかなるよ!」

 蜘蛛に向けて弓をとうとするナターリャちゃんに待ったをかける。

 見た目はキモいけど、これくらいの魔物ならどうにでもなる。
 多分、というか絶対にこの蜘蛛よりギガントボアの方が強いだろうからね。
 わたしの電撃魔法を食らわせればきっと一撃だろう。
 それにどうせ魔力を使うなら、ナターリャちゃんよりもわたしの方が効率がいい。
 固有スキルである『暴食の魔王サタン・カロリー』のおかげで魔力の変換効率は最大化されているし、何より減った魔力は食事で簡単に補充できるからね。

 てなわけで、わたしは地面に引きずられながら右手に魔力を込める。

「食らえ巨大蜘蛛! サンダーボルト!!」
「ギシシャアア!!」

 わたしの手から放たれた電撃が蜘蛛の頭に直撃する。
 少し強すぎかなとも思ったけど、電撃発生時に込めた魔力量はギガントボアと同程度のものにしておいた。
 これだけの威力があればオークやウルフであっても一撃のはずだ。

「ギシャ……ァ……」

 わたしの予想通り、蜘蛛は肉体を痙攣させた後、倒れてしまった。
 蜘蛛が動かなくなったのを見て、ナターリャちゃんが駆け寄ってきてくれる。

「コロネお姉ちゃん! 大丈夫!?」
「うん、なんとかね。あの大きさの蜘蛛はちょっと鳥肌が立ったけど……」

 まさか虫系の魔物がいるとは思わなかった。
 魔物といったら、昨日出会ったギガントボアやウルフみたいな、いかにもな野生動物ばかり想像していたよ。

 でも、よく考えればここは《魔の大森林》。
 森というフィールドなんだから、動物よりもむしろ虫たちの方が栄えているのかもしれない。
 夏の森とか数多の虫によって大帝国が築かれているからね。
 そんな虫たちが、特にムカデとか幼虫とかゴキさんとかがこの蜘蛛みたいに巨大化して魔物になっていたらちょっと戦っていける自信がない。
 絶対逃げる。

「さっきはいきなり攻撃されて焦ったけど、無事に倒せて良かったよ。これからはもう少し不意打ちとかについても対策しないと――」
「コ、コロネお姉ちゃん、あれ……!」

 ナターリャちゃんがわたしの背後に指をさす。
 何だろうと思って振り返ってみると、さっき倒したはずの蜘蛛がガクガクと震えながら立ち上がっていた。

 あの蜘蛛、なんでまだ生きてんの!?!?
 


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