ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第35話  初めてのパーティを結成しちゃう、ぽっちゃり

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「コロネお姉ちゃんと一緒にパーティ……?」 
「うん。ナターリャちゃんが良かったらどうかな? あ、わたしは〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者じゃないから安心してね」

 ナターリャちゃんが不安がらないように、〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の関係者ではないことも伝えておく。
 あんな奴らと同類だと思われたくないからね。

「一緒にパーティを組んでくれるのは嬉しいけど……でも、いいの? ナターリャ、あんまり戦えないかも……」
「大丈夫だよ! さっきも言ったけど、わたしそれなりに強いから、ナターリャちゃんくらいだったら守れるよ」
「うーん、でも……」

 何だかまだ迷っている感じだ。
 わたしに遠慮しているのか、もしかしたら〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉のせいで軽い人間不信に陥っているのかもしれない。
 もしも迷いの原因が後者だったら大変だ。
 ここはもう一押ひとおししてみよう。

「ナターリャちゃんは、エルフの森から修行に来たって言ってたよね? それなら、一回くらいまともにクエストを達成してみる経験は必要なんじゃないかな。とりあえずわたしとは今日一日の限定パーティってことで、お試しで組んでみない?」

 ナターリャちゃんを諭すように提案する。
 こんなアドバイスをしときながら、わたしは冒険者歴二日目のぺーぺーだけどね。
 ちなみにクエストを受けた経験もない。
 だけどそれを言っちゃあ言葉に重みがなくなるので、一旦わたしの冒険者としての経歴は伏せておく。

 ナターリャちゃんはぎゅっと小さな拳を握り、意を決するようにわたしを見つめる。

「そ、それなら、お願いします! ナターリャと一緒に、パーティを組んでください!」
「決まりだね! 今日一日よろしく!」

 ナターリャちゃんが了承してくれて、わたしもテンションが上がる。

 当初の予定では今日は一日ご飯を食べまくるつもりだったんだけどね。
 間違ってもクエストを受けて冒険者の仕事をする気は一ミリもなかった。
 だけど、旅は道連れ世は情けとも言う。
 困っている時はお互い様だし、見捨てることはできない。

「コロネお姉ちゃん! それじゃあ早速、冒険者ギルドに行こうよ!」
「あ、ちょっと待って。この焼き鳥食べちゃわないと」

 ナターリャちゃんはテーブルの上に置かれた二つの焼き鳥の山に気づいて、あっ、と固まった。
 わたし用に大量注文しておいた焼き鳥たちは、まだほぼ手付かずの状態で残っている。

「すぐに食べきるからちょっと待っててね。あ、ナターリャちゃんも好きなだけ食べていいよ!」
「えっ、う、うん」
「サラも一緒に食べようね~」
「ぷるーん!」

 サラはびよ~んとスライムボディを伸ばし、次々と焼き鳥の串をつかんで食べ始める。
 ナターリャちゃんは、ガツガツバクバクと焼き鳥を頬張るわたしとサラを見ていた。

「す、すごい食欲だね……」

 その言葉がわたしとサラのどちらに向けられたものなのかは、あえて聞かないでおいた。



 〇  〇  〇



 たらふく焼き鳥を食べて満足したわたしは、ナターリャちゃんと一緒に昨日訪れた冒険者ギルドへと来ていた。
 大きなギルドの看板を二人で眺める。

「ここがわたしが行ってる冒険者ギルドだよ」
「うわぁ。ここにも別の冒険者ギルドがあったんだぁ!」
「ぷるーん!」

 ナターリャちゃんは、看板を見上げながら声をあげる。
 ちなみにサラは、ナターリャちゃんが抱えてくれていた。

「じゃあ、入ろうか」
「うん!」

 扉を開けて中へ入ると、すぐにギルドの受付嬢さんと目があった。
 その人はわたしの姿を見た瞬間に席を立って、シュババババ! と物凄いスピードで駆け寄ってくる。

「コロネさーん! お待ちしておりましたよ! 今日も来てくださったんですね!」
「う、うん。ちょっとクエストでも受けようかと思って。それよりも、受付嬢が自分の持ち場を離れていいの?」
「コロネさんの対応をするのが私の務めですので、問題ありません」

 ギルドの受付嬢――クレアさんはニコリと笑う。

「わたしの対応って大げさだなぁ。別にクレアさんはわたし専用の受付嬢ってわけでもないでしょ?」
「いえ、昨日コロネさんがお帰りになられた後に開かれたギルド会議で、正式に私がコロネさん専任の受付嬢として抜擢されました。ギルマスからの命令なので、逆らえません」
「……え、それ本当? なんでわたしだけそんな待遇になってるの?」
「それはやっぱり、コロネさんがこのギルドにとって重要な存在だからではないでしょうか。昨日はギルマスも久しぶりに機嫌が良かったですし。きっとコロネさんと出会えたからですよ」
「いやいや、昨日はわたしの素材買取でギルドが儲かったからなんじゃないの?」
「あはは、それもあるかもしれませんね。まあ、私がコロネさん専任の受付嬢と言っても、あくまで一時的な職務です。ほら、相変わらず私たちは暇をもて余してますから」

 そう言われて、わたしはギルドの中をざっと見てみる。
 うん、昨日と同じくらい……いや、もしかすると昨日以上に冒険者が少ない。
 本当にガラッガラだ。
 ギルドのだだっ広い空間に対して、冒険者はほんの数人しかいない。
 その内の半分くらいは酔いつぶれて寝てるだけだし。
 ここは冒険者ギルドのはずなのに、まるで全然儲かっていない酒場のような状態になっている。
 ……これは受付嬢としちゃかなり暇だろうね。

「それよりもコロネさん。そちらの方は……」
「ああ、この子はパーティメンバーのナターリャちゃんだよ」

 クレアさんに意識を向けられたナターリャちゃんは、緊張しながら挨拶をする。

「こ、こんにちは! ナターリャって言います! コロネお姉ちゃんとパーティを組ませてもらいました!」
「ふふふ、冒険者ギルドへようこそ、ナターリャさん。私は受付嬢のクレアです」

 ナターリャちゃんに自己紹介を済ませると、クレアさんはすすすっとわたしににじりよって来る。

「コロネさん、昨日は誰ともパーティを組んでないと仰っていませんでした? ギルマスに嘘をくと後々めんどくさいですよ?」
「いや、ナターリャちゃんとはさっき出会ったんだよ。〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者たちに騙されて困っていたから、わたしが一時的にパーティを組んであげることにしたんだ」
「そうだったんですか……。それはお気の毒でしたね、ナターリャさん……」
「ううん! 〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者さんとの出来事は悲しかったけど、そのおかげでコロネお姉ちゃんと出会えたから!」
「ナ、ナターリャちゃん!」

 なんて素敵な心を持っている子なんだ!
 こんな幼気いたいけな笑顔を見せられたら、わたしの中の庇護欲ひごよくが刺激されて可愛がりたくなっちゃう!

 クレアさんも、ナターリャちゃんがショックを受けていないことが分かって安心したように笑顔を浮かべる。

「それなら良かったです。それはそうと、コロネさんはクエストをご所望なんですよね?」
「そうだね。なんか、手頃なクエストとかあるかなーって」

 そう言うと、クレアさんは興奮したようにわたしの両手を胸の前で握った。

「あります! コロネさんにとっておきのクエストが! いや、これはもはやコロネさんのために用意されたクエストと言っても過言ではありません!」

 ……なんだか嫌な予感がする。
 わたし、手頃なクエストって言ったんだけど、ちゃんと聞こえていたよね?
 変なクエストとか持ってこないよね?

 そんな疑問を確認するもなく、わたしとナターリャちゃんはギルドの受付まで引っ張られていった。



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