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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第31話 クックドゥードゥルドゥへ突入しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「ふぅ~、色んな屋台を食べて回ったけど、どれも美味しかったね~」
「ぷるーん!」
料理の余韻に浸りながら歩いているわたしに、サラが同意してくれる。
クックドゥードゥルドゥに向けて出発したわたしたちだったけど、案の定その道中で魅力的な屋台を多数発見した。
フライドチキンにドラゴン串、さらにサンドイッチやスコーンといったお菓子までジャンル問わず幅広い料理をいただいたよ。
どれもこれもぜ~んぶ美味しくて、各店舗の在庫を全て完食してしまった。
一通り食べまくって思ったのは、屋台料理はパンチのある肉系のお店が多いということ。
なんか男性向けに作られたガッツリ飯って感じ。
やっぱり冒険者とか男が多いから、その人たち向けにガッツリした料理を提供してるお店が多いのかもね。
おかげでわたしの大好物ばかりだったよ。
それよりも不思議なのは……。
「わたしがあんまりお腹いっぱいにならないってことなんだよね。結構な量を食べたし、前ならもう満腹になってたような気がするんだけど」
わたしの食欲、ひいては胃袋の問題だ。
今もお腹は特に何も感じない。
満腹でもなければ、空腹でもない。
別にご飯を食べなくてもいいけど、食べようと思えば全然美味しくいただけるくらいだ。
うーん、これもわたしの固有スキルである『暴食の魔王』が関係しているのかな。
まあ満腹感がないならまだわたしの胃袋は全然余裕ってことだろう。
たくさん美味しい料理を食べられるに越したことはないので、わたしはそれで納得しておく。
「あれ、ここは……」
わたしの胃袋事情を考えていると、ふと巨大なお店を発見した。
木造建築で、何となく野性味のある外観をしている。
ここが冒険者ギルドだと言われたら信じてしまうくらいには物々しい。
だけど、掲げられた大きな看板には、斜体で『クックドゥードゥルドゥ』と書かれていた。
「ああっ! ここがクックドゥードゥルドゥか! やったよサラ、見つけたよ!」
「ぷるん!」
「サラはまだご飯食べられそう? お腹いっぱいじゃない?」
「ぷるぷるん!」
サラは、全然平気だよ! と言うようにえっへんと胸を張った。
まあスライムだから胸とかないんだけど、わたしがそのように見えたのでそういう風に捉えておく。
サラもまだまだ食べられるみたいなので、早速このお店に突入しよう。
わたしは両開きになっている、店の扉を開けた。
すると、すかさず元気なウエイトレスさんが飛び出してきた。
「いらっしゃいませニャ~! クックドゥードゥルドゥへようこそニャ!」
「えっ!」
その女性の頭には猫耳が、お尻からは猫のしっぽがついていた。
一瞬そういうコスプレなのかと思ったけど、頭の猫耳もお尻のしっぽもフリフリピョコピョコと動いている。
もしかしてこの耳としっぼ、本物……!?
まさか猫の獣人みたいな感じなのか!?
「ニャニャ? お客さん、変な顔で固まってどうしたニャ?」
「あ、いや、ごめんなさい。猫の人を見たのは初めてで……」
「お客さんは獣人に会うのは初めてなのかニャ! お客さんの初獣人が私で良かったニャ~!」
ウエイトレスさんは、ぴょんぴょん跳ねて嬉しそうにしている。
さすがは獣人。
仕草まで猫っぽいよ。
絶対に日本では出会うことができない獣人に感動を覚えていると、ウエイトレスさんは笑顔で案内をしてくれる。
「ささっ、それではお席にご案内しますニャ。お客さんはお一人様ニャ?」
「そうです。あ、スライムの従魔もいるんですけど、一緒に入っても大丈夫ですか?」
「小型の従魔なら問題ないニャ! ただ、もしその従魔がトラブルを起こした場合は主人であるお客さんの責任になってしまうので、それは注意ニャ」
「わかりました。一緒に入れて良かったね、サラ」
「ぷるーん!」
「ニャフフ、可愛らしいスライムちゃんニャ」
はしゃいでいるサラを、ウエイトレスさんは微笑ましそうに眺める。
サラの可愛さが伝わってわたしも嬉しい。
「それではこちらのカウンターのお席へどうぞニャ!」
「ありがとうございます!」
わたしが案内されたのは、カウンターの角の席だった。
サラをテーブルの上に置き、椅子に座る。
隅っこだから周りに気を使う必要がなくていいね。
「それとこちらメニューですニャ! ご注文がお決まりになったら呼んで欲しいニャ! ではでは、ごゆっくりニャ~」
ウエイトレスさんはメニュー表を渡してくれると、足早に次のお客さんの接客に行ってしまった。
店全体を見てみても結構お客さんが入っている。
今は昼頃だから混んでるのかもしれないね。
あと、全体的にお客さんは冒険者が多そうだ。
テーブル席に座っている冒険者たちは、多分同じパーティメンバーなんだろうね。
ケバブ屋のおじさんもたまに冒険者同士でトラブルが起こるとか言ってたくらいだし、クックドゥードゥルドゥは冒険者に人気のお店みたいだ。
わたしが店の中を確認していると、通りかかったおじさんが足を止めた。
「……あれ、もしかして昨日の嬢ちゃんか?」
「え? あ、屋台のおじさん!」
声をかけてきたのは、昨日レイラに奢ってもらった屋台の店主のおじさんだった。
「おじさんはどうしてここに?」
「どうしても何も、俺はこの店の料理人だからな。たまに昨日のような屋台を出したりした時はそっちで焼き鳥を作ったりするが」
言われてみれば、おじさんはエプロンを着ていた。
ここのお店の従業員であるのは見れば分かることだったよ。
だったら、昨日のあの屋台はクックドゥードゥルドゥの出張店みたいな感じなのかな。
「それに、焼き鳥を食うならこの店で食った方がいいぞ。メニュー数も多くて料金も安い。屋台は場所代がかかるから店内で食べるよりも少し割高になってんのさ」
「そうなんだね」
「んじゃ、俺は厨房に戻るが……嬢ちゃん、今日は金はあるんだよな?」
「昨日の焼き鳥を食べた後に、ガッポリ稼いできたから心配いらないよ!」
「はは、そいつは良かった! んじゃ、俺は厨房に戻るが……あまり俺たちを忙しくさせないでくれよ?」
「それはこのお店の味しだいだね。あんまり美味しくなかったら、暇になるかも?」
「なにぃ? そんなこと言われちゃ料理人として黙っちゃいられねぇな」
わたしとおじさんはニヤリと笑いあった後、がはははと笑いあう。
何だか通じ合えた気がして嬉しい。
それだけ言うと、おじさんは厨房へ戻っていった。
わたしはウエイトレスさんが置いてくれたメニューを手に取る。
さぁーて、こっちも美味しい焼き鳥食べまくるぞー!!
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