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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第30話  魔道具の可能性を考えちゃう、ぽっちゃり

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 店にあるホットドッグを買い占め、それもサラと分け合ってペロリとたいらげたわたし。
 そんなわたしに、ホットドッグ屋さんのお兄さんは信じられないものを見るような目をしている。

「お、お客さん、本当に全部完食したんですか……?」
「はい! どのホットドッグもすっごく美味しかったです!」
「ぷるーん!」
「ははは……スゴい胃袋をお持ちなんですね。僕の作ったホットドッグをそんなに褒めていただけて嬉しいです。貯金を切り崩して、こいつを買った甲斐がありました」

 お兄さんは笑いながら、ショーケースをポンポンと叩いた。

 思い返せば、このホットドッグはどれもぜんぜん冷めてなくて、むしろ出来立てのように熱かった。
 ホットドッグが美味しすぎて気づかなかったけど、秘密はこのショーケースにあったのかな。

「もしかして、このショーケースって保温機能があるんですか?」
「はい。これは炎の魔石を加工して作った魔道具の一種なんですよ。それなりに値が張る代物なんですけど、やっぱりホットドッグは熱々の具で食べるのが一番ですからね。頑張って買っちゃいました」

 なるほど、魔石か。
 これも異世界モノで定番の素材だよね。
 この魔石から作った魔道具というものがあれば、保温機能つきのショーケースみたいな物も作れちゃうんだ。

「ちなみに、他にも料理で使えそうな魔道具ってあるんですか?」
「そうですね。炎の魔石を使った商品だったら、魔力のみで温められる鍋やフライパンがありましたね。あ、あと風の魔石を使ったものだと、一瞬で千切りができる包丁なんかも売ってましたよ。どれも料理人には人気みたいです」
「へぇ! 色々と便利な道具があるんですね!」

 魔石を応用したらそんな便利な調理器具が作れるのか。
 一瞬で千切りにできる包丁とか最高じゃん。
 キャベツの千切りは包丁でやると危険な上に時間と労力がかかるからね。
 わたしはよくピーラーで千切りキャベツを作ってたけど、魔石の力を使えばもっと簡単に料理ができるんだね。

 もしかすると魔石と素材さえ揃っていれば、組み合わせ次第で様々な調理器具が作れるんじゃ?
 それなら日本にある電化製品なんかも、魔道具として再現することもできるかもしれないね。

 魔石を用いたハイテク調理器具について考えていると、わたしはふと疑問が浮かんだので手元のサラに聞いてみる。

「ねぇサラ。昨日ギルドで魔物の素材を買い取ってもらう時に色々な素材を解体して出してくれたと思うんだけど、その中に魔石ってあった?」
「ぷるぷる」

 サラはスライムボディを左右に振る。
 つまり、わたしが倒した魔物は魔石を持ってなかったってことか。
 魔石は全ての魔物が持っているわけじゃないのかな?
 もし魔石があるならどんな感じなのか見てみたかったんだけど、仕方ないね。

「お客さん、今日はお買い上げありがとうございました。本日分は全部売り切れてしまったので、かなり早いですが店じまいしようと思います」
「あ、そうなんですね。何かごめんなさい」
「いえいえ、とんでもない! 良ければまた食べにいらして下さい!」

 お兄さんは爽やかな笑顔で応えてくれる。
 そう言ってもらえるとわたしも気が楽になるよ。
 屋台系の料理は量が少ないからぽっちゃりは何個も食べないと満足できないからね。
 だからわたしはまだまだ他の屋台も回るつもりだよ。

 だけどその前に、ケバブ屋のおじさんから聞きそびれたあのお店の場所を確認しておこう。

「そう言えば、この街にあるクックドゥードゥルドゥっていう美味しいお店があるって聞いたんですけど、どこでやってるか分かりますか?」
「ああ、クックドゥードゥルドゥですか? たしか……」

 お兄さんは、わたしの真後ろの空を指差した。
 そちらへ振り向くと、一本の塔のようなものが見える。

「あそこに鐘がある塔が見えるでしょう? あの塔の周辺に店舗があったはずです。すごく大きな看板で『クックドゥードゥルドゥ』と書かれているので、一目見ればすぐに分かると思います」

 あの塔を目印にして進んでいけばいいんだね。
 ここから見た感じ、塔までの距離はそこまで遠くなさそう?
 これならクックドゥードゥルドゥに向かいつつ、道中で発見した屋台や料理を食べ歩いても到着できそうかな。

「ありがとうございます! それじゃ行ってみます!」
「はは、食欲旺盛ですね。クックドゥードゥルドゥは焼き鳥も絶品ですが、サイドメニューやお酒も美味しいのでよければ食べてみてください」

 わたしは未成年だからお酒は飲めないけどね。
 でも、もしかするとこの世界ではお酒を飲める年齢は日本とは違うのかな?
 だけどわたしはお酒にはあんまり興味がないので、普通に料理を楽しむことにしようっと。
 焼き鳥以外のサイドメニュー……一体どんなのがあるのか楽しみだ!

 わたしはお礼を言って、サラを抱えながらクックドゥードゥルドゥへ向けて歩き出していった。




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