ぽっちゃり無双 ~まんまる女子、『暴食』のチートスキルで最強&飯テロ異世界生活を満喫しちゃう!~

空戯K

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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第26話  ケバブを爆食いしちゃう、ぽっちゃり

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 ルカの宿から出発したわたしは、適当に周辺を散策していた。 

「ここら辺、何だか冒険者っぽい装いの人が多いね。やっぱり近くに冒険者ギルドがあるからかな」
 
 ここまでの道中、大きな武器をかついだ冒険者や魔法使いっぽい格好をした女性も何人かすれ違った。
 きっとあの人たちは冒険者で、これから仕事をしに行くのだろう。
 冒険者ギルドもすぐ近くにあるし、クエストでもこなすのかな。
 いやはや、仕事熱心で頭が下がるよ。
 冒険者二日目にして早々に仕事を放棄しているわたしとは大違いだね。

 働きに出る冒険者たちに心の中でエールを送っていると、足元でサラがぽよんと跳ねた。

「ぷるん!」
「どうしたのサラ? ……ん、この匂いは」

 かすかな料理の匂いを感じ、バッと素早く前方を確認する。
 一直線に続く通りの奥に、何かの屋台らしき物が見えた。

「あれがルカが言ってた屋台か! 本当に冒険者ギルドの近くにあったんだ! 早速食べに行こう!」
「ぷるん!」

 ルカの情報通りにお店があったことに喜び、ダッシュで駆けつけた。
 身体強化されているわたしはビューン! と走り、街行く人々をたくみに避けながらすぐに屋台へたどり着いた。

「到着!」
「おわぁ! な、なんだ!?」

 突如とつじょ猛ダッシュで現れたわたしに、屋台のおじさんは腰を抜かしている。
 そう言えば、昨日レイラに奢ってもらった焼き鳥屋のおじさんもわたしが来たときにビックリしてたよね。
 やっぱりぽっちゃりが爆走してきたら怖いものなのかな?
 
「ら、らっしゃい、お嬢ちゃんは……お客さんか?」
「もちろんだよ! それよりも、その料理は――」

 わたしは、おじさんの隣にある料理に目を奪われる。

 ゆっくりと回転する、丸太のような巨大肉。
 おじさんの手元には細長い専用ナイフがある。
 お肉は全面がいい感じに焼けていて、香ばしい匂いが立ち込めていた。

「ああ、こいつは火炎牛かえんうしのケバブだ」
「ケバブ!!」

 テンションが上がる名前に、体が反応する。
 ケバブといえば日本でも都会の方では屋台があったりするよね。
 なんか陽気な外国人が店主のイメージ。
 だけどわたしの近所にはそんなお店はなかったから、ケバブは食べたことがない。

 というわけで。

「おじさん、ケバブください!」
「あいよ! 一人前でいいかな?」
「とりあえず一人前で!」
「銀貨一枚になるぜ」

 わたしは銀貨を持っていなかったので、代わりに金貨を一枚差し出した。
 するとおじさんがお釣りとして銀貨九枚を返してくれる。
 どうやら銀貨十枚で金貨一枚と同額らしい。
 さっきルカにお金の価値を聞いた時は金貨より上の通貨しか教えられてなかったので、ここで銀貨の価値を知れて良かったよ。

「まいどあり! それじゃ今から作るからちょっと待っててくれ」

 おじさんは細長いナイフを手に取ると、美味しそうな巨大肉の表面をギコギコと切っていく。
 切られた肉はバラバラと下のトレイに落ちていった。
 ケバブといえば、この肉を削ぎ落とすパフォーマンスも込みで楽しい料理だ。

 わたしはサラにも見えるように抱っこしてあげる。

「うわぁ~、すごいねサラ! あれがケバブだよ!」
「ぷるーん!」

 サラも震えて楽しんでいるようだ。

 肉をギコギコし終えると、次はトルティーヤのような薄い丸型のパンの上に、切り落とした肉を乗せた。
 そして、その上に薄切りの玉ねぎとトマトを添えていく。

「ソースは甘めと辛めどっちがいいかな?」
「え、そうだなぁ……じゃあ辛めで!」
「あいよ!」

 おじさんは赤いソースをかけてくれた。
 匂いからして、色んな香辛料が含まれていそうだ。

 そして最後に丸いパン生地で乗っけた具を巻いていき、専用の包装紙に差し込んだ。
 これで完成かな。

「どうぞ、これがウチ自慢のケバブだ!」
「ありがとうございます!」

 お礼を言って受け取り、まずはケバブを鑑賞する。
 包装紙の先端からは、パン生地で巻かれたお肉と野菜とソースがこんにちはしている。
 口元に近づけてみると……うーん! お肉とソースのいい香り!

 これは早速食べてみなければ!

「それじゃあ、いただきます!」

 バクリとケバブの先端をかじる。

 うんっっっっっま!!

 粗く切られたお肉とスパイシーなソースが絡み、鼻の奥から吹き抜ける。
 かなり大味だけどそれが最高だ。
 途中で挟まれる玉ねぎのシャキシャキ感と、トマトのみずみずしさもクセになるね!

 あー、これ止まらんやつや。

 わたしがバクバクとケバブの味に酔いしれていると、おじさんが笑いだした。

「ははは、お嬢ちゃんは美味うまそうに食べてくれるな。料理人としちゃ嬉しいもんだ」
「だってホントに美味しいもん!」
「そう言ってもらえるとやりがいがあるな。俺はいつもここで店を出してるから、また気が向いたら食べに来て――」
「おかわり!」

 ケバブをもっぎゅもっぎゅと食べてたら、もう無くなってしまった。
 だけどまだまだ食べたりないので、すぐにおかわりを要求する。

 おじさんはポカンとした表情でわたしを見ていた。

「えっと、お嬢ちゃん。おかわりってのは……」
「このケバブとっても美味しかったので、もっと食べさせてください! この大きさだったらかなり食べられそうなので、とりあえず三十個くらいお願いします!」
「さ、三十個!?」
「あ、でも今回は辛めのソースだったから、次は甘めのソースバージョンも食べてみたいな。よし、それなら辛めソースと甘めソースのケバブ、それぞれ三十個でお願いします!」
「そ、それはつまり、全部で六十個注文するってことかい? そうなると金貨六枚になるが……」
「はい、金貨六枚!」

 アイテムボックスから召喚した六枚の金貨をレジのテーブルに並べる。
 今のわたしなら、金貨六枚くらい何ともない。

「このケバブすごく美味しいから、サラにも分けてあげるね!」
「ぷるーん!」

 サラは、わーい! という感じでびよんびよん伸びた。
 喜んでくれているようで何よりだ。

「……こりゃとんでもないお客さんを引き当てちまったかな」

 屋台のおじさんは笑いながらそう呟くと、気合いを入れるようにハチマキを絞めてケバブ作りに取りかかった。
 わたしとサラは、目の前で出来上がっていくケバブをワクワクしながら見つめていた。



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