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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第23話 ドラゴンステーキに大興奮しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「ふぅ。何だかんだサラも一緒に泊まれて良かったね」
「ぷるん!」
ルカにサラ同伴で泊まれるか確認してもらったけど、なんとか無事に泊まることができた。
従魔同伴は入室拒否とか言われなくて良かったよ。
その後、指定された部屋に行ってみたけど中はシンプルながら清潔感があったね。
わたしは特に荷物もないから部屋に入った後はしばらくサラと遊んでいた。
そしたら、ルカさんが夕食の準備ができたと知らせにきてくれたのだ。
そしてわたしは一階の食堂へと下りていき、今はサラと一緒にテーブルについている。
チラホラと他のお客さんも見えるけど、ルカが言っていた通りおじさんが多い。
パッと見、若いお客さんはわたしだけだ。
だけど、ぶっちゃけ客層などどうでもよかった。
それよりも今一番に重要なのは――
「どんなご飯が出てくるのか楽しみだね、サラ!」
「ぷるん!」
「美味しそうなご飯だったら、少しサラにも分けてあげるからね」
「ぷるーん!」
サラがぽよんぽよんと跳ねて喜んでいる。
わたしだけ食べてサラは見てるだけなんて可哀想だからね。
ご飯っていうのは、誰かと一緒に食べると美味しさが倍増するのだ。
ただ、一口目はわたしがいただいちゃうけど、サラは寛大だからそんなことで怒ったりしないだろう。
ワクワクしながら料理の到着を待っていると、厨房からルカが出てきた。
「コロネさん、お待たせしましたぁ! こちらが本日の夕食になります!」
出された料理を見た瞬間、わたしに衝撃が走る。
肉とソースの芳ばしい香り。
じゅうじゅうと焼ける食材のコーラス。
そして、豪快な石のお皿。
「こ、これは――!」
「ウチの宿自慢、石焼きドラゴンステーキでーす!」
い、いい、石焼きドラゴンステーキィイイイイ!!?
熱々の石のお皿に乗るのは、大迫力のこんがりステーキ!
ステーキ屋さんにある1ポンドステーキをもう一回り大きくしたくらいのデカさだ。
肉の表面にはガリッガリに削られたガーリックと粗挽き胡椒がふんだんに散りばめられている!
たまらねぇ!!
「こちらがソースになります。お好みでステーキにおかけください!」
ルカがカップに入ったソースを置いた。
香りからして、デミグラスソースに近そうだ。
これで途中で味変ができるから、ドラゴンステーキを二度楽しめるね!
「そしてそして~――こちらがライスになりますぅ!」
「ライスっ!?」
ルカは平皿に盛られたライスを置いた。
その予想外の代物に、わたしは仰天する。
「この街にご飯なんてあったんだ……! てっきり洋風の食べ物しかないかと思ってたけど」
「最近、ヤマト国の行商人の方がベルオウンに来ているみたいで、それで入手できたんです。向こうの国では、おかずと一緒にこのライスを食べるみたいなので、ドラゴンステーキにも合うかなと思って」
「合う合う! 絶対合うよ! 合わなきゃ世界が間違ってるよ!!」
「そ、そんなにですか……!」
ご飯へのわたしの賛辞にルカは感動しているようだ。
日本人として、ご飯の美味しさは身に染みて理解しているからね。
特にぽっちゃりであるわたしは人一倍理解しているといっても過言ではないだろう。
それに、ヤマト国という気になるワードも出てきた。
名前からしてめちゃくちゃ日本と似ていそうな国だね。
よし、ヤマト国にはいつか絶対行くことにしよう。
てかヤマト国の行商人が来ているとかいってたから、まずはその行商人とやらを捕まえよう。
「それでは、ごゆっくりどうぞ~」
「ありがとうルカ」
ヤマト国に関してもっと根掘り葉掘り聞きたいところだけど、目の前にドラゴンステーキを出されちゃ後回しにせざるを得ない。
今はこの異世界名物のステーキに全神経を集中だ。
「ドラゴンステーキ……いただきますっ!!」
わたしは鼻息を荒くしながら、手元のナイフとフォークを握る。
まずはドラゴンステーキの左端にフォークを刺し、ナイフで厚めに切っていく。
ギリギリと肉の繊維を切る感触をナイフ越しに感じながら、ステーキを切り落とした。
ステーキの内部がご開帳!
「おおお、中は綺麗なサーモンピンク! ミディアムな焼き加減が素晴らしい!」
フォークに刺さったドラコンステーキを口に運ぶ。
ぐはぁあああああああああああああああああっ!!!
ドラゴンステーキを噛んだ瞬間、わたしは一撃でやられてしまった。
それくらいの衝撃!
美味さ!
現在進行形で、脳内にはヤバめの快楽物質が放出されまくっている。
「ぅぅう……ううぅぅぅ美味すぎるぅうううう!!」
ギガントボアの骨付き肉の時もそうだったけど、この世界の肉の美味しさは異次元だ。
意識とびかけるくらいだよ。
だけど、わたしはまだこのドラゴンステーキの片鱗を味わったに過ぎない。
次はアレと一緒に食べさせて貰おうじゃないか。
わたしは同じようにステーキを切り、大口を開けて食べる。
そしてすかさずライス!
平皿をつかみ、フォークでガツガツとかきこむ!
「もぐもぐもぐもぐ――ごくん! …………ぷはぁ! ああ、美味い!」
ドラゴンステーキとご飯のコンボが美味すぎて息をするのを忘れていたよ。
あぶないあぶない。
それにしてもやっぱりステーキにはライスだね。
このマリアージュに勝るものなんて他にないんじゃなかろうか。
今はそう確信してしまうくらい、ドラゴンステーキ&ライスの威力にやられてしまった。
「それじゃあ最後は……コイツを試させてもらおうじゃないか」
わたしはカップに入ったソースを手に取る。
まずは香りを楽しもう。
むむむ、芳醇で濃厚なデミグラスの香り!
「こんなソース、ステーキにかけたら美味しくなるに決まってるじゃん……!」
一体どれだけステーキが化けてしまうのか恐ろしさを感じながら、ステーキの上でカップを傾ける。
カップからどろりとソースが肉の上に流れ、ステーキ全体をデミグラスに染め上げていく。
石焼きだから、下についたソースはじゅうじゅうと焼けて芳ばしい香りが漂う。
「それでは、いざ……」
ドラゴンステーキを切り、ナイフをヘラ代わりにして追加でたっぷりとソースをつける。
ソースでドロドロになったステーキ肉を、頬張る。
瞬間、わたしの口内に肉とソースの嵐が吹き荒れた!
「あああああああああ! クッソ美味いっ!!」
予想以上の美味しさに、思わずキレ気味に叫んじゃっちゃったよ。
やっぱりステーキにソースは相性抜群だね。
めっちゃくちゃ美味いわ。
止まんねぇやこれ。
「こうしちゃいられない! すぐにご飯もかきこまないと!」
わたしはソースべちゃつけステーキをフォークに刺し、ライスの上でバウンドさせる。
そのおかげでライスがソースの赤茶色に染まった。
見映えは悪くなるが、ステーキと一緒に出されたライスは肉汁とソースでぐちゃぐちゃに汚して食べるのが至高。
なぜならこれが一番美味い。
異論は認めないぜ。
「ああ~、ステーキにライスはたまらんくらい美味い!!」
ステーキを口にし、平皿を持って一気にライスをかきこむ!
はあ、幸せ。
これぞ肉を食べる喜び。
全身がステーキとライスの美味しさに酔いしれている。
ドラゴンステーキは最高だ……!
「ぷるん?」
「ハッ、ごめん! ドラゴンステーキのあまりの衝撃にサラのことを忘れてた。ほら、サラも食べてみる?」
「ぷるん!」
ハッと意識が戻ったわたしは、ステーキを切ってサラに差し出す。
どこが口か分からないからスライムボディに押し当ててみると、じゅわじゅわと食べて消化されていった。
「どう、美味しい?」
「ぷるん!」
「だよねだよね! ソースをべっとりつけるともっと美味しいよ! ほら、食べてみて!」
「ぷるーん! ぷるーん!」
ソースべたべたステーキをサラに食べさせると、ジャンプしながら喜びを表してくれる。
ステーキとソースの相乗効果はハンパないからね。
この美味しさはスライムにも共通みたいだ。
そうしてサラに食べさせてあげつつ、わたしも食べていると、あっという間にドラゴンステーキをたいらげてしまった。
こんだけじゃ全然足りないんだけど!
生殺しもいいところだ!
そう思っていると、タイミングよくルカがやってきた。
「少し手が空いたので休憩もらってきちゃいましたぁ。コロネさん、ドラゴンステーキはいかがで――」
「ルカっ! このドラゴンステーキっておかわりできる!? あとご飯も!!」
「え? え、えっと食事はこちらだけとなっているので、おかわりはできないです。追加料金をいただければ、新しくお料理を作ることはできますけど……」
「それじゃお願い! とりあえずこれを二〇人前ほど!」
「二〇人前!? あ、あの、一人前で銀貨五枚のお値段なので、二〇人前も頼むと金貨十枚もかかってしまいますが……」
わたしはアイテムボックスから麻袋を取り出して、テーブルにドンッと置く。
「お金なら安心してよ。こう見えてもわたし、結構お金持ってるから」
サラが解体してくれた魔物の素材が予想以上の高値で売れたから、わたしは懐に余裕があるのだ。
明らかにわたしみたいな十六歳が持っていい額じゃなさそうだけど、お金は使わなければ意味がない。
大金を手にしたなら、それで美味しい料理を食べまくるのみ。
この大金、今ドラゴンステーキに使わなくてどこで使うというのか!!
「か、かしこまりました! お母さんに言ってきますぅ!」
大金を目にしたルカは慌てて厨房の方へ駆け出していった。
休憩を取ったばかりのルカを再び仕事へ駆り出してしまったと気づいたのは、一通りドラゴンステーキを完食した後のことだった。
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