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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第22話 宿を取っちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むレスターさんに教えられた通りに道を進んでいくと、大きな建物に到着した。
ここがレスターさんがオススメしていた、ご飯が美味しいという宿屋か。
外観はシンプルだけど、大きいので部屋数は多そうだ。
あとは空き部屋があることを祈ろう。
扉を開けて中に入ると、わたしと同年代くらいの女の子があたふたしながら出迎えてくれた。
「い、いらっしゃいませ! 私、受付を担当しております、ルカと申します! 今回は、しゅ、宿泊をご希望でしょうか?」
「あ、はい。宿泊で」
「か、かしこまりました。当店のご利用は初めてでしょうか?」
「初めてです」
「あ、ありがとうございます。宿泊のみでしたら……えーと、なんだっけ……す、すみません! 少々お待ちください!」
店員さん、もといルカさんは、慌てた様子で戸棚の方を確認しに行く。
もしかして新人さんなのかな。
うんうん、分かるよ。
最初は覚えることが多くて大変だよね。
わたしも実家のお弁当屋さんで初めてレジを担当した時は、上手く接客できないこともあったし。
かつての自分を思い出していると、ルカさんは戸棚から大きなファイルを手に取った。
「あ、マニュアルあった! 来店時の挨拶……はできたし、新規のお客様の確認……もできたから、次の料金は、これか! えっと、宿泊のみですと銀貨四枚、朝・夕の食事付きですと金貨一枚となりますが、いかがいたしましょうか?」
「食事付きでお願いします」
「かしこまりました。何泊されますか?」
「うーん、とりあえず三泊くらいで」
「承りました! とりあえず三泊くらい、と」
マニュアルをガン見しながら、わたしの宿泊日数を書きつけていくルカさん。
何とも微笑ましく姿だ。
ただ、わたしが言った“とりあえず三泊くらい”をそのまま書き付けなくてもいいんじゃないかな。
普通に“三泊”だけ書き付ければいいと思うんだけどね。
なにはともあれ、無事チェックインできたようで何よりだ。
「それでは、こちらにお名前のご記入と、金貨三枚のお支払いをお願いいたします!」
「はーい」
わたしは用意された名簿のような用紙に名前を書いた。
代金は金貨三枚か。
アイテムボックスから通貨が詰まった麻袋を取り出そうかと思ったけど、麻袋を出して、金貨を取り出して、また麻袋をしまうという三手順を行うのは面倒くさい。
このアイテムボックスのスキルも神さまがくれたものだから、きっとハイテク仕様になってるよね?
というわけで、わたしは麻袋ではなく、金貨三枚の取り出しをイメージしてアイテムボックスを発動させる。
すると、わたしの手に金貨三枚が出現した!
やった!
やっぱり一度アイテムボックスに収納した物は、好きな分だけ取り出すことができるみたいだ。
「それじゃあ、お代金はこれで」
「はい。金貨三枚ちょうどいただきます!」
ルカさんは金貨を受け取るとレジにしまい、一本の鍵を差し出した。
「コロネさんのお部屋は三〇八号室になります。こちらが鍵です」
「ありがとう」
お礼を言って鍵を受け取ると、ルカさんが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「あの、何だかぐだぐだしちゃってすみません。私、このお仕事始めたばかりで慣れていなくて……」
「あはは、最初の内は仕方ないよ。わたしもちょっとだけ接客経験あるからルカさんの大変さも分かるし」
「あ、ありがとうございますコロネさん! 私、これからも頑張ってお仕事覚えます! あ、それと私のことはルカって呼んで下さい!」
「そう? それじゃあルカって呼ばせて貰うよ。わたしと年も近そうだしね」
「私、このまえ十六才になったばかりです」
「あ、それなら本当にわたしと同い年じゃん!」
「本当ですか!? えへへ、何だか嬉しいです。ここに泊まられるお客様は冒険者の方や行商人の方が多いので、最近あまり同年代の人と接する機会がなくて」
ルカは嬉しそうに笑顔を向けてくれた。
「やっぱり宿に泊まるのは大人が多いんだね。まあ一応わたしも冒険者なんだけど」
「え、コロネさん冒険者なんですか!?」
「そうだよ。ほら、これがわたしの従魔のサラ」
「ぷるん!」
「わあ、まるまるしてて可愛いスライムですね! 触ってもいいですか!?」
足元にいたサラを抱っこして見せてあげると、ルカはなでなでして可愛がってくれる。
そんなに喜んでくれるとわたしも嬉しいよ。
「あ、今さらなんだけどサラも同じ部屋で一緒に泊まっても大丈夫かな? 別料金とかかかったりする?」
わたしの質問にサラはビクッと反応した。
そして、手元の分厚いマニュアルをすごいスピードでバラバラめくっていく。
「え!? えっと、スライム同伴のお客様の場合、マニュアルには………………載ってない!? ご、ごめんなさい! すぐに確認してきますぅ!」
ルカは、お母さ~ん! と叫びながら奥へ走っていった。
うん。
どこの世界でも一生懸命に働く人は美しいね。
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