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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第20話  他にも素材をお披露目しちゃう、ぽっちゃり

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「他にもまだ魔物を狩っていたのか」

 わたしが追加の素材買取を申し出ると、レスターさんは眉間にしわを寄せる。
 ムキムキだから威圧感がすごいよ。

「コロネさん、他の魔物というのは……」
「オークなんだけどね。サラ、オークの素材も出してくれる?」
「ぷるん!」

 サラはぐにゅう~とへこむと、小さな体から巨大な石の塊みたいな物を取り出した。
 クレアさんが片付けてくれた綺麗なテーブルの上に、ゴトリと重量感のある物が置かれる。

 え、なにこれ。
 オークの体にこんな岩石みたいな部分あったっけ。

「ほう、ファングオークの棍棒こんぼうか。重量物であるがゆえ、アイテム袋かアイテムボックスのスキルがなければ持ち帰ることが難しい素材だ。そのまま武器として流用することもできるから、そこそこの値で売れるぞ」

 レスターさんが感心したように言う。

 どうやらサラはオークの武器まで回収してくれていたようだ。
 見るからに重そうな武器だけど、レスターさんみたいに筋肉モリモリの冒険者だったら扱えるのかな。

 サラは三十本くらいの棍棒こんぼうを出すと、ようやく落ち着いた。
 全てのオークの素材を吐き出し終えたようだ。

「ウルフとオークの素材はこれで全部かな。それじゃあ、買取を」
「ぷるん!」

 わたしが素材買取をお願いしようとすると、サラがぽよんと跳ねて止める。
 どうかしたのかな?

 わたしが不思議に思っていると、サラはこれまでの素材よりも圧倒的に迫力がある素材を出した。
 オークの棍棒の何倍もの大きさ、太さ。
 サラがその素材をテーブルの真ん中に吐き出しきった瞬間、周囲からどよめきが起こる。

「これは――ギガントボアの牙か!?」

 レスターさんが今日一番の驚きの顔を見せた。

 ああ、ギガントボアといえばあの美味しいお肉の魔物だね。
 あの舌にガツンとくるワイルドな骨付き肉は忘れられないよ。

 ギガントボアはお肉が激ウマだった記憶しかないけど、この牙はそんなに凄い素材なの?

「ギ、ギガントボアは危険度の高い魔物の一体です。通常であれば十名以上の冒険者がパーティーを組んで挑むような難敵なのですが、まさかこれもお一人で……?」
「うん。一人で倒したけど」
「……俺たちはとんでもない冒険者を招いてしまったのかもしれんな」

 クレアさんとレスターさんが信じられないものを見るような目でわたしを見ている。
 居心地が悪くなるのでやめていただきたい。

「ようやく気づいたのかギルマス。コロネがヤベェ奴だってことをよ」
「コロネ殿は規格外だからな」

 デリックとレイラがうんうんと頷きあっている。
 いや、何そんなにしみじみとわたしを紹介してるのかな。
 しかもデリックに至ってはヤベェ奴認定されてるんだけど、それは褒めてるんだよね?

「……まあいい。コロネの扱いについては後ほどギルド内で会議を開くことにしよう。そこのスライム、残りの素材を出してくれ」
「ぷるぷる!」

 サラはぷるぷると左右に震えた。
 もうないよ! と言っているようだ。
 サラは話すことができないので、代わりにわたしが答えてあげる。

「もうこれだけだってさ」
「なんだと?」

 わたしの返答に、レスターさんとクレアさんは不思議そうな顔をする。
 何も変なことは言っていないと思うんだけど。

「素材として一番メジャーな、魔物の肉はないのか? ウチのギルドでは生肉の買取もできるぞ」
「あ、肉はわたしが全部食べるんで」
「……でも、ギガントボアを倒されたならかなりの量のお肉があるのではないでしょうか? 食べきれない分は当ギルドで買取という形でも――」
「わたしが全部食べるんで」
「……ウルフ肉とオーク肉もあったはずだが、そっちであれば――」
「全部食べるんで」  

 頑として譲らないわたしの態度に、レスターさんは呆れたような顔で、クレアさんはひきつった笑顔を浮かべる。

 はっきり言って、わたしは手持ちの肉を売る気は全くない。
 ギガントボアの肉はあんなに美味しかったんだから、お金のために売るなんて勿体なさすぎる!
 それにウルフ肉とオーク肉に至ってはまだ実食すらしてないんだから売るわけないでしょ。
 あー、なんかお肉のこと考えてたらお腹減ってきたな。
 これ終わったらどっか食べに行くか。

「……まあ、素材を売るか売らないかは冒険者の自由だ。コロネが肉は売らないと言うならそれで構わない。さて、クレア」
「はい」
「この量の素材を一人で全て鑑定していては日が暮れてしまう。暇をしてる他の職員も叩き起こして、すぐにここへ連れてこい!」
「わ、分かりました!」

 レスターさんに命じられて、クレアさんは駆け足でこの部屋を後にする。
 その後すぐ慌てた様子のギルド職員が何人もやって来て、ギルド総出の鑑定祭りとなってしまった。

 レスターさんに怒鳴られながら、いきなり素材鑑定という激務に駆り出されたギルド職員さんたち……わたしを恨まないでね。




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