21 / 257
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第20話 他にも素材をお披露目しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「他にもまだ魔物を狩っていたのか」
わたしが追加の素材買取を申し出ると、レスターさんは眉間にしわを寄せる。
ムキムキだから威圧感がすごいよ。
「コロネさん、他の魔物というのは……」
「オークなんだけどね。サラ、オークの素材も出してくれる?」
「ぷるん!」
サラはぐにゅう~と凹むと、小さな体から巨大な石の塊みたいな物を取り出した。
クレアさんが片付けてくれた綺麗なテーブルの上に、ゴトリと重量感のある物が置かれる。
え、なにこれ。
オークの体にこんな岩石みたいな部分あったっけ。
「ほう、ファングオークの棍棒か。重量物であるがゆえ、アイテム袋かアイテムボックスのスキルがなければ持ち帰ることが難しい素材だ。そのまま武器として流用することもできるから、そこそこの値で売れるぞ」
レスターさんが感心したように言う。
どうやらサラはオークの武器まで回収してくれていたようだ。
見るからに重そうな武器だけど、レスターさんみたいに筋肉モリモリの冒険者だったら扱えるのかな。
サラは三十本くらいの棍棒を出すと、ようやく落ち着いた。
全てのオークの素材を吐き出し終えたようだ。
「ウルフとオークの素材はこれで全部かな。それじゃあ、買取を」
「ぷるん!」
わたしが素材買取をお願いしようとすると、サラがぽよんと跳ねて止める。
どうかしたのかな?
わたしが不思議に思っていると、サラはこれまでの素材よりも圧倒的に迫力がある素材を出した。
オークの棍棒の何倍もの大きさ、太さ。
サラがその素材をテーブルの真ん中に吐き出しきった瞬間、周囲からどよめきが起こる。
「これは――ギガントボアの牙か!?」
レスターさんが今日一番の驚きの顔を見せた。
ああ、ギガントボアといえばあの美味しいお肉の魔物だね。
あの舌にガツンとくるワイルドな骨付き肉は忘れられないよ。
ギガントボアはお肉が激ウマだった記憶しかないけど、この牙はそんなに凄い素材なの?
「ギ、ギガントボアは危険度の高い魔物の一体です。通常であれば十名以上の冒険者がパーティーを組んで挑むような難敵なのですが、まさかこれもお一人で……?」
「うん。一人で倒したけど」
「……俺たちはとんでもない冒険者を招いてしまったのかもしれんな」
クレアさんとレスターさんが信じられないものを見るような目でわたしを見ている。
居心地が悪くなるのでやめていただきたい。
「ようやく気づいたのかギルマス。コロネがヤベェ奴だってことをよ」
「コロネ殿は規格外だからな」
デリックとレイラがうんうんと頷きあっている。
いや、何そんなにしみじみとわたしを紹介してるのかな。
しかもデリックに至ってはヤベェ奴認定されてるんだけど、それは褒めてるんだよね?
「……まあいい。コロネの扱いについては後ほどギルド内で会議を開くことにしよう。そこのスライム、残りの素材を出してくれ」
「ぷるぷる!」
サラはぷるぷると左右に震えた。
もうないよ! と言っているようだ。
サラは話すことができないので、代わりにわたしが答えてあげる。
「もうこれだけだってさ」
「なんだと?」
わたしの返答に、レスターさんとクレアさんは不思議そうな顔をする。
何も変なことは言っていないと思うんだけど。
「素材として一番メジャーな、魔物の肉はないのか? ウチのギルドでは生肉の買取もできるぞ」
「あ、肉はわたしが全部食べるんで」
「……でも、ギガントボアを倒されたならかなりの量のお肉があるのではないでしょうか? 食べきれない分は当ギルドで買取という形でも――」
「わたしが全部食べるんで」
「……ウルフ肉とオーク肉もあったはずだが、そっちであれば――」
「全部食べるんで」
頑として譲らないわたしの態度に、レスターさんは呆れたような顔で、クレアさんはひきつった笑顔を浮かべる。
はっきり言って、わたしは手持ちの肉を売る気は全くない。
ギガントボアの肉はあんなに美味しかったんだから、お金のために売るなんて勿体なさすぎる!
それにウルフ肉とオーク肉に至ってはまだ実食すらしてないんだから売るわけないでしょ。
あー、なんかお肉のこと考えてたらお腹減ってきたな。
これ終わったらどっか食べに行くか。
「……まあ、素材を売るか売らないかは冒険者の自由だ。コロネが肉は売らないと言うならそれで構わない。さて、クレア」
「はい」
「この量の素材を一人で全て鑑定していては日が暮れてしまう。暇をしてる他の職員も叩き起こして、すぐにここへ連れてこい!」
「わ、分かりました!」
レスターさんに命じられて、クレアさんは駆け足でこの部屋を後にする。
その後すぐ慌てた様子のギルド職員が何人もやって来て、ギルド総出の鑑定祭りとなってしまった。
レスターさんに怒鳴られながら、いきなり素材鑑定という激務に駆り出されたギルド職員さんたち……わたしを恨まないでね。
529
お気に入りに追加
1,204
あなたにおすすめの小説
その聖女は身分を捨てた
メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
陰キャラモブ(?)男子は異世界に行ったら最強でした
日向
ファンタジー
これは現代社会に埋もれ、普通の高校生男子をしていた少年が、異世界に行って親友二人とゆかいな仲間たちと共に無双する話。
俺最強!と思っていたら、それよりも更に上がいた現実に打ちのめされるおバカで可哀想な勇者さん達の話もちょくちょく入れます。
※初投稿なので拙い文章ではありますが温かい目で見守って下さい。面白いと思って頂いたら幸いです。
誤字や脱字などがありましたら、遠慮なく感想欄で指摘して下さい。
よろしくお願いします。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる