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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第19話 素材買取で驚かれちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む〈獅獣の剛斧〉の冒険者たちとの騒動が落ち着いた後、レイラとデリックが戻ってきた。
「……コロネ殿、これは何の騒ぎなんだ?」
「まあちょっと色々あってね」
「おい、あの倒れてるのって〈獅獣の剛斧〉の冒険者じゃねぇか! まさか、コロネがやったのか……?」
デリックは驚いた顔をした後、わたしに疑惑の目を向ける。
レイラも、まさかコイツ……、というような視線をわたしに向けてくる。
わたしは何も答えない。
そしてこういう時は、その話題から話をそらすことが大事だ。
てなわけで、クレアさんに話しかける。
「そうだ。クレアさん、わたしも魔物の素材を買い取って貰いたいんですけど」
「素材の買い取りですね。小さい物でしたらこの場でお取引きできますが」
「いや、多分たくさんあると思うので」
「そうでしたか。それでは別室にご案内させていただきますので、こちらへどうぞ」
クレアさんは、笑顔でギルドの端にある部屋へと進めてくれる。
大量の素材取引は別室でするみたいだ。
さっきまでレイラたちが買い取りを行っていた場所に連れていかれるらしい。
まあここの受付じゃ狭くて対応しきれないからね。
「ほう、コロネが素材を持ち帰ってきたのか。それは興味深いな。どれ、俺も参加させて貰おう」
「え、レスターさんも来るんですか?」
「なんだ。不満か?」
「いや、まあいいですけど」
レスターさんも参加することになると、デリックとレイラも名乗りをあげる。
「それじゃ、俺たちも見学するか」
「そうだな。コロネ殿がどのような素材を持っているのか興味がある」
いや、二人はわたしの素材知ってるでしょ。
あのウルフとオークだよ。
わたしが倒した時やサラが素材回収していた時も一緒にいたよね。
まあ、どうせ来ないでいいよって言ってもついてきそうだから何も言うまい。
そうして、皆はぞろぞろと別室へ歩きだしていく。
なんでそんなにわたしの持ってる素材を見たいのか不思議だ。
別に見ても面白いモノじゃないと思うけど。
レア素材なんて多分持ってないから期待しないでよ。
わたしは呆れつつ、受付のテーブルで大人しく待っていたサラを呼ぶ。
「サラー、こっちおいでー」
「ぷるん!」
呼び掛けを聞いたサラが、ぴょんぴょん跳ねて一直線にわたしの元へ駆け寄ってくる。
わたしは、ピョーンとジャンプしたサラをキャッチして、なでなでしてあげた。
「ぷるーん」
今回の素材買い取りに当たっては、サラの協力が必要不可欠だ。
なぜなら、わたしが倒した魔物は全てサラの中に吸収されているからね。
だからサラにも来て貰わないと、魔物の素材を取り出すことができないのだ。
「コロネさーん、こっちですよー!」
「今行くよー」
ギルドの奥から、クレアさんの呼び声が聞こえる。
その声に引っ張られるように、サラを抱えながら別室へと向かった。
◯ ○ ○
別室につくと、皆が勢揃いしていた。
レスターさん、クレアさん、デリック、レイラ、そしてわたしとサラ。
五人の人間と一体の従魔が中に入ってもまだまだ余裕なくらい部屋が広い。
さすがは、大型の素材を取引する場所なだけはあるね。
「遅いぞコロネ。ほら、早く素材を出してみろ」
レスターさんがわたしを急かす。
そんなに慌てないでよ。
わたし素材の取引なんて初めてなんだから。
「えっと、ここのテーブルに出せばいいの?」
「はい! 重量物でも問題なく乗せられるので、遠慮なくお願いします!」
部屋の真ん中にある大きなテーブルに行く。
わたしの隣にはクレアさんとデリック、レイラ。
そしてテーブルを挟んだ真向かいに腕を組む仁王立ちのレスターさんがいる。
相変わらず顔が怖い。
わらわらとわたしの周囲に集まってきた人たちはひとまず無視して、抱っこしていたサラをテーブルに置く。
「サラ。わたしが森で倒した魔物の素材が欲しいんだけど、ここに出せるかな?」
「ぷるん!」
サラは、出せるよ! と言うようにぽよんと跳ねた。
種族名が『解体スライム』であるサラは、魔物の解体に特化したスキルを持っている魔物だ。
サラのスキル欄にも『簡易解体』っていうのがあったし、ギガントボアのお肉にしても綺麗な骨付き肉を何本も提供してくれた。
つまり、このような素材を売る時は、まさしくサラがその真価を発揮する場なのだ!
サラはぷるぷるぷると震えると、スライムボディから大量の黒い毛皮を吐き出した。
何十枚もの毛皮がぶわっと宙に舞う。
「わあ! スライムから素材が!?」
「ほう。これは空間系のスキルか? このようなスライムは見たことがないな」
サラが素材を吐き出すのは予想外だったようで、クレアさんがビックリして声をあげる。
レスターさんはさすがに落ち着いているけど、興味深そうにサラを凝視していた。
まあ、普通はこれから売る素材をスライムから放出する冒険者なんていないもんね。
「……そういや、コロネを《魔の大森林》から連行する時に、あのスライムが倒した魔物を食いまくってたな。随分と旺盛なスライムもいるもんだと思っていたが、まさか素材を保存できるようになってたとはよ……」
「コロネ殿を馬車内で尋問した際も、お嬢様がサラ殿を気に入って撫でられていた。その時、たしかコロネ殿が解体スライムという種族だと話していたな」
「二人とも、連行とか尋問とかもう隠すつもりなくなったんだね」
デリックとレイラの発言に、わたしは冷静に突っ込む。
オリビアたちをオークとウルフの群れから救出した際に、貴族権限で半強制的に馬車に乗せられたことは忘れていない。
まあその後オリビアからちゃんとした謝罪と説明を受けたから怒ってはいないけど、貴族の恐ろしさの片鱗を垣間見た気がするよ。
「えっと、これは《魔の大森林》で遭遇したウルフの素材なんだけど、買い取って貰えるのかな?」
「あっ、は、はい! 確認いたします!」
驚いて呆気に取られていたクレアさんは意識を取り戻すと、ルーペのような器具を取り出してウルフ毛皮をチェックする。
多分、傷のつき具合とかを見てるんだろうね。
「これはブラックウルフの毛皮ですね。しかし、この毛皮は……」
ルーペ越しに、クレアさんが目を見開く。
「どうしたの? もしかして、ブラックウルフの毛皮は買い取って貰えなかったり?」
「い、いえ、そうではありません。ただ、あまりに毛皮が綺麗なので驚いてしまって」
「普通はもっと傷《いた》んでるものなの?」
「はい。冒険者の方はできるだけ即死させるよう心がけて討伐されますが、それでも多くの場合、武器や魔法で与えた傷跡が多少なりとも残ってしまうものです。ですが、この毛皮にはそのような攻撃による傷みが全く見られません!」
なるほど。
確かに毛皮が傷んでいたら素材としての値は下がるだろうから、冒険者は攻撃回数を抑えるために即死を狙うものなのか。
それでも、攻撃を与えた部分の毛皮が傷んでしまうもんね。
その点、わたしはサンダーボルトという電撃魔法で倒している。
一撃で倒せるのはもちろん、さらに電撃だから毛皮が傷みにくいんだ。
剣で斬ったり、魔法で燃やしたりするわけじゃないからね。
「それに解体も完璧です。毛皮の価値が下がらないよう、丁寧に剥ぎ取られています。私もそれなりに長く素材鑑定を行ってきましたが、これほどの逸品を見たのは久しぶりです!」
解体はサラのおかげだけど、やっぱり解体スライムというだけあってかなり上手いようだ。
さすがだよサラ!
ありがとう!
「それにしてもこの毛皮は、かなりの枚数ですね。……コロネさん、一体どれだけの数のブラックウルフを倒されたんですか?」
「え、どうだったかな。ざっと百体くらい?」
「百体!?」
クレアさんが驚いてルーペを落としそうになっている。
百体ってそんなにすごいことなのかな。
数だけみたら多いかもしれないけど、わたしのバリア魔法と電撃魔法があれば安全圏から簡単に倒すことができる。
まあこの方法を編み出す途中だったギガントボア&ゴブリン戦ではヤバい場面もあったけどね。
皆の反応がピンときていないわたしに、レスターさんは低い声で問いかける。
「コロネは何人組のパーティーをまとめあげているんだ?」
「いや、わたし一人ですけど」
「……なんだと?」
レスターさんがギロリとわたしを睨む。
え、なんで急に怒ってんの?
今回は何もしてないよね?
困っているわたしを見て、隣にいたデリックとレイラが擁護してくれる。
「ギルマス、コロネが言ってるのは全部本当のことだぜ」
「コロネ殿がウルフとオークの群れを一人で倒したのは間違いない事実だ。私たちはこの目で確認している」
デリックとレイラの証言により、レスターさんの威圧が少し緩んだ。
だけど、今度はもっと難しそうな顔をしている。
「ウルフだけでなく、オークもだと? 仮にこの数の魔物を全て一人で倒したのだとしたら、Aランク冒険者を上回る実力だぞ……!」
「ぷるん!」
わたしの話で盛り上がっている皆に、サラがアピールするようにジャンプした。
何かと思ったけど、そう言えばまだウルフの素材しか渡していない。
わたしが倒した魔物は他にもあるから、ついでに全部買取してもらおう。
「あのー、ウルフだけじゃなくて他の魔物の素材もあるんで、そっちも買い取ってもらっていいですか?」
「ま、まだあるんですね……。それでは、テーブルの上を整理しますので少しお待ちください」
クレアさんは苦笑しながら、サラが出した大量のウルフの毛皮と牙を丁寧に端に寄せていく
なんでちょっと引いた感じになってるのかな?
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